第2話

僕は母親であろう人に抱かれたまま、呆然と考え込む。まず、なぜ死んだ前のことを覚えているのかということだ。まあ、これは考えてたって仕方がない。次に、ここはどこかってことだ。自分が思うにここは西洋のどこかってところだ。ここはクーラーが付いていないが、空調もいいため経度が極端なところでもないだろう。分からない。


そして、もう一つわかったことがある。


「ルナ〜。そろそろ御飯の時間よ」

「はい、お母様!」


僕には六歳上の姉がいるということだ。この姉がまた、才色兼備で勉学に優れていることが傍目からでも分かる。そして、容姿もいいと来た。

きれいな薄紫色の髪を長く伸ばしていてスリムな体型だ。

ちなみに、この人は少なくとも僕に負の感情をいだいてはいないでくれた。


「アウル。はい、あ~ん」


僕の姉が甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれている

そして、言われるがままに口を開ける。

これだけでも、嫌われていないと実感する。

そうそう、僕の名前はアウル。

アニラウンド・アウルになった。


こんな日常が一年続いた。僕は死んだことを引きずってしまい、ずっと惰性に毎日を過ごした。

だが、ある日。事件が起きた。


僕もずいぶんと歩けるようになった。まだところどころ危なっかしい所もあるが、これは大きな進歩だ。


「あっ!」


そこで僕はつい調子に乗ってしまい、階段の段差から転げ落ちてしまった。


「あっ、アウル!大丈夫?」

「う、うん。だいじょうぶ」


いててっ、不覚だ。まさか足がもつれてしまうとは


「まってて、今魔法で痛みを和らげてあげる」


魔法。なんとも抽象的なものだ。きっと、いたいのいたいのとんでけー、みたいなものだろう。


「慈愛の地母神よ その一端垣間見せ 傷を癒したもう」

「—ヒール」


直後にその人差し指に翠色のひかりが宿り、その次に痛みが引いたことがわかる。


「えっ?」


なにが起きたかわからなかった。本物の魔法なのか?魔法なのか?


「どう?痛くはない?」

「ぅ、うん」

「そうっ。それはよかった。もう危ないことはだめよ?」


衝撃の事実を知った日から2年が過ぎた——


今、僕は家の庭の芝生に寝転んでいる。そして、その前には木剣で剣の稽古を受けている姉と指南をしている父がいる。

剣。もし、日本とかだったら縁が無いが、ここは異世界だ。だが、当分自分には関係ないな。それはそうと風が気持ちい。

こうやっていると、ついファインのことを思い出してしまう。


「疲れた〜。アウ君、励まして〜」


稽古が終わるやいなや姉がこっちに来た。


「どうしたのルナ姉さん?最近、疲れてるよね」

「最近お父様が厳しいの!」

「それはだなルナ。お前も十歳になるから、スキルの儀にいくからだ」

「スキルの儀·······?」

「ついでだ、今からそれを教えるぞ。アウルも少し難しいと思うが、話半分として聞いててくれ」

「それでそれで、スキルの儀ってなに?」

「まあ、まずスキルからだ。スキルっていうのは一人一つは必ずある。それは千差万別でな生産系だったり戦闘系だったりいっぱいある」

「へぇ〜?」

「次に、儀式だがこれは貴族にとっては通過儀礼なんだ」

「父さんって貴族なの?」

「ああ、まあ木端だけどな。さあ、話を戻すぞ」

「儀式ってのはさっきも言ったように貴族の通過儀礼だ。それは、子供たちの成長を祝うものでもある。あとぉ、そうだなスキルで人生の大半を決められる人がほとんどだな」


一応説明を受けたが、本当にざっくりしたものなんだろう。多分隠されていることもあると思う····


スキルの儀の話を聞き終えて少したったらもう夜だった。僕は風呂に入ろうかな

一般家庭にはないけど、さすがと言っていいだろう。木材でできているがそれもいい味を出している。


「ふぅ~、気持ちいいな」


ちなみに水温は水を火魔法で調節しているらしい

あまり不便を感じないな


「アウ君一緒に入りましょう」


突然姉が一糸まとわぬ姿風呂場に入ってきた


「姉さん!?なんで入ってきたんだ」

「別にいいでしょ。それより勇気づけてよ」

「何に勇気づけるんだ?」

「なんとかの儀だよ!」

「半年後じゃん!」


この前も一緒に寝るなど距離は近かったが、一気にきたな。当然今日も一緒に寝た。長い髪の毛がくすぐったかった。


「ねぇ、起きてる?」


暗闇の中、突然囁き声が耳朶を打った。


「·····起きてるよ。どうしたの」

「あ、起きてた。ぁ、あのなんて言えばいいのかな」

「·······」


きっと不安なのだろう。

さっきから話し方や話すスピードがしょっちゅう変わっている。それは不安な時にでる人のサインだ。


「なにか不安なことでもあるの?」

「·····!。えっとそんな感じ?」

「どんなこと」

「えっと、儀式があるでしょ?それで私どうなっちゃうのかなって」

「そっか······」


父さんが言っていた言葉が引っかかっていたんだろうな。そしたら、僕は何をしたらいいだろうか

少しでも不安を和らげるには


「えっ」


僕はルナ姉さんにハグをした


「僕は、少なくとも人肌は不安を和らげる事が出来ると思う。」


まあ、僕はその感覚を忘れてしまったが


「大丈夫、ルナ姉さん」


「······うん。ありがと、大好きだよ」





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