動物好きの転生者。平穏を目指す

@usayu

第1話

痛い。体中から悲鳴が上がっている。

今はあいつらに殴られ、蹴られたあとの帰路についているところだった。

見た目は、あまりものものしくはないが、制服を脱げば誰しもが忌避するであろう。


「ファイン·······」


ファインというのは僕が飼っている犬のことだ。

あの子と戯れることこそが僕の唯一の楽しみであり、生きる希望だ。

あの子がいるからイジメにあっていたとしても生きていける。


そんな事を考えているうちに電車のホールに着いた。もう少しで電車が来ると思うけど·······


「······来た」


電車の先頭のライトが光っているのが見れた。

もう少しでファインに会えると思うとつい浮き足立ってしまう。


ドンッ!!!


そんなことを考えていると、背中に強い衝撃がした。それによって僕の体は当然電車の前に投げ出されてしまう。

一体何が起きた⁇何も考えられずにホールの方に振り返ってみると、あいつらがいた······。


「ッッッっ!!!!」


あいつらというのは言うまでもなく僕をいじめてきた奴らだ。

呆然と、ただただ奴らのことをみていると····


「うぜぇんだよ、てめぇ」


どすの利いた声で俺を憎むかのように声を発した。憎みたいのは僕の方だっ。


「いつもスカしやがってぇよ。うぜぇ」


うざいっていうだけのことでここまでのことをするだろうか?

やがて、徐々に悲鳴混じりの声が聞こえてきた。

そこで、初めて実感する。


———僕、死ぬんだなぁ


実感したところでもうどうしよううもない。眼前には電車が来ている。


最後に一矢報いてやろうと逆さのぐっとポーズをとろうとして—————





ーーーー



突然目が覚めた。

たしか、僕は電車に轢かれたはず。でも生きている。そうすると、ここは病院?

だめだ、頭が働かない。体も動かない。きっと、今生きててももうすぐ死ぬだろう。なら、思考はやめて楽になったほうがいい·····


「あなたっ!生まれましたよ!」

「ああ、ああっ!この子は俺たちの子供だっ」


うるさいなぁ。こっちは寝るところなのに、それにしても子供が生まれたらしい。緊急治療室の隣って分娩室あるっけ?

やけに声がうるさい。まぁ、僕が死んで新たな命

が無事に産まれたと考えれば気が楽になるってもんだ。


「アン。この子、抱っこしたらどうだ?」

「まあ!、いい考えね。そうしましょう」


どうやら抱っこするらしい。それほど嬉しかったのだろう。

そして、遅れて誰かに持ち上げられる感覚がした


ん?なんで僕の体が浮いている感覚があるのだろうか?—直後


全身に柔らかい感触がした。突然のことでパニックになる。そういえば、まだ目を開けていなくて、周りの状況を確認できていなかったからそれがわかるともしかしたらこの不思議な感触も分かるかもしれない。

そうっと目を開ける。

まず、目にはいったのは手。それも小さな小さな手だ。それから辺りを見て理解することには時間がかからなかった。


(僕、赤ちゃんになってるっっ!!??)


「ぁぅぁぁぁぁあああああっ!!!」






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