第13話 抗う心と絡まる糸

 過去の記憶は戻ってはいなかったが、通じ合う心を否定できずルイソンとアルベルトは磁石のように引き寄せられ抱き合った。


「この温もりを覚えている気がする・・」

「俺もこの匂いを忘れていたなんて・・ 俺は心底お前を愛していたんだと思う」

「僕もだよ・・」

 月光の下、静かに互いの心音と呼吸を確かめ合う。

「だけど、許されなかった」

「そうだね」

「同じ過ちを犯せない・・ お前は名高いパウル卿当主、そして俺には代々ライカンの長であるガルソン家の血が流れている」

 アルベルトを抱き締めるルイソンの腕に力が入ると、ギュッと目を閉じアルベルトを肌で感じる。

 ルイソンの胸に埋めていた顔を上げたアルベルトの寂し気な瞳にルイソンが映ると、アルベルトはスッと目を閉じ艶やかな唇をルイソンに差し出した。

 

 決して許されない愛 

 仲間への裏切り

 過去の過ち

 

 これらの全てを持ってしてもルイソンの心は、美しいアルベルトを前に抗えなくなると、そっと自身の唇を重ねた。


 柔らかく、ふっくらとした感覚

 何度も味わった接吻


 ルイソンとアルベルトはスイッチが入ったように何度もキスを繰り返し、お互いの気持ちを確かめ合うと、少し緩くなった口元から舌を絡み合わせるまでに時間を要さなかった。  

 そして、アルベルトがそっとルイソンの股間に手を伸ばしていく。

「僕には反応するんだ・・ 嬉しい」

 ルイソンの耳元で心地よく呟くアルノルドの可愛い言葉に、ルイソンの全ての細胞が解放の息吹に踊り出すと、身体中が火照り出しルイソンの目が金色に光る。


「アルベルト・・ 俺、我慢できない・・ ハァハァ・・ お前を抱きたい」

「僕も同じだよ。君で僕を満たして欲しい」

 アルベルトの言葉に義侠心で縛りつけられていた長としてのルイソンは消え去り、一匹の雄がアルベルトの服を優しく脱がし始める。

 開けた白い胸元を愛撫するとアルベルトが背骨を反らせ、甘い吐息が森林に木霊する。

「君のザラザラとした舌の感触・・ 身体が覚えている気がする・・ アっ」

 アルベルトの小さく桃色の乳首にルイソンが舌を転がせ、時折吸い上げていると、アルベルトは念力で自身の全ての衣を剥ぎ取り、ルイソンの前で全裸になった。

 すると、ルイソンは自分のジャケットをアルベルトに羽織らせ軽く抱え上げると、近くの芝生に優しく横たわらせる。

「寒くないか? ってお前等ヴァンパイアは暑さ寒さを感じないんだったな・・」

 ルイソンの首に腕を回し身を委ねるアルベルトの面持ちからは、パウル卿当主である肩書は消え、ただ目の前に居る雄を欲する妖艶な姿に変貌していた。


「この会話何故か懐かしい・・ 普通なら感じないけど、でも今は早く君ので熱くなりたい」

「そんなに俺を煽って大丈夫か? 狼だぞ」

「君は優しいよ・・ だから大丈夫。さぁ早く・・」

 アルベルトは、硬く反り立ったルイソンの肉棒に柔らかな手を添えると、指先で突端をくるくると撫でる。

 ルイソンの全筋肉が高揚すると脈動が鼓膜に煩く、アルベルトの首筋に長い舌を這わしていく。

「久し振りだから、ちゃんと慣らさないと・・」

「あっ、はぁ・・ 流石狼だね・・ アっ、舌使いが上手・・ アッ」

「アルベルト、綺麗だ・・ 綺麗だよ・・」

 ルイソンはアルベルトの全てを自分のモノにするように、身体中にマーキングをしていく。

「お前のここもビンビンだな・・ こんなに汁を出して・・」

「はぁ、ああっ、そんなに吸ったら・・ 果てちゃうよ・・」

 アルベルトは、快感からルイソンの頭を掴むと、目の色を赤に変え身体を仰け反る。

 喘ぐアルベルトの中央で、艶やかに反り立った器官を、ルイソンは犬歯で傷つけないように気を付けながら、上手に舌先と口内で上から下へと愛撫していく。

「はぁはぁ・・ ダメだよ・・ あっっ・・ 君のが欲しい・・ 早く」

 芝生を右手で強く掴むと身体を大きくくねらせながら、ルイソンの頭の動きを左手で制しようとする。

 アルベルトの必死の抵抗にもルイソンの動きは留まることなく、アルベルトの蕾を開き始める。


「もう、君の硬くて大きいのを僕に挿れて・・ お願い」

 よがるアルベルトの肉壺にルイソンは自身の中指をゆっくり挿入すると、指の関節をアルベルトの中で優しく動かしてみる。


「あああっ、同時はダメだよ・・ イカせたいの・・?」

 声を震わせるアルベルトに問われたルイソンは、アルベルトの陽根を咥え込んだままでコクリと頷き、彼の筒中にあるルイソンの太い指を官能部位に何度も押し当てた。

「あああっっ、んっんんっっ、アッアアア」

 高らかな声を上げ白い肌をピンク色に染めた美しいアルベルトの姿が月光下に浮かび上がると、ルイソンはその妖艶さに酔いしれ、頭を上下により一層激しく動かす。

 アルベルトの竿が我慢の限界を超えるように一段と硬くなると、ついに血管が波打ち突起から勢いよく温かい液体がルイソンの喉元に噴射される。

「イックっ・・あっ、・・はぁっっ・・ んんんっっ、 イクっイクっっ・・・」

 アルベルトは顔を芝生に擦りつけ歯を食いしばると、美しい顔にシワが刻まれたが、それも一瞬で、呼吸を荒くしながらも細胞の一つ一つが絶頂感に満たされる。


「君は・・ ずるいよ・・ はぁはぁ・・ 久し振りで思わず瞬間移動しちゃいそうになった」

 アルベルトを上目遣いで見つめるルイソンは、舌でペロリと口周りを舐めると、残りを親指で拭う。

「久々にお前を味わいたかった」

 上半身を少し浮かせルイソンに語り掛けていたアルベルトは、顔を真っ赤にさせると頭を地面に戻し両手で顔を覆う。

「僕だって味わいたいよ・・」

 ポロリと溢した声がルイソンの耳に届くや、いつの間にかアルベルトが自身の腹上に覆いかぶさっており、上からルイソンに艶めかしい眼差しをおくる。

「おいおい。俺はいいって。多分直ぐに出ちまうし・・」

 ルイソンの腹に長い爪を優しく這わせると、アルベルトはフフンと微笑んだ。そして、身体を徐々にルイソンの下方へと移動させて行く。

「参ったな・・」

 ルイソンは観念したように地面に頭を下すと、手の甲を額に置き満天の星空を眺めた。

「うっ、んんっ・・」

 アルベルトも牙がルイソンの男根に当たらぬよう、器用にそれ等を引っ込めると、愛おしそうにルイソンの中央に聳え立つ頂を根元から突起へと愛撫し、陰嚢を弄ぶるように右手でマッサージを施しながら、時折エラ部位と頂点を吸い上げる。


「んンっ」

 アルベルトはルイソンの息遣いが早くなると、彼のシンボル全てを小さな口で咥え込むんだ。そして、時々自分の顔に纏わりつく髪を耳に掛けながら上下に動く速度を速めていく。


「アル・・ベルト・・ うっ、もういいだろう? お前に挿れさせてくれ」

 先程とは立場が逆転したアルベルトは、お返しにとばかりにルイソンの敏感な部位を責めていく。

「おいっ、ダメだって・・ はぁ・・ お前も飲みたいのか・・? 参ったな・・ んんっっ、そんな小さい口に・・ んっんっ・・ 出せないよ・・」

 ルイソンはアルベルトのサラサラな前髪をすくい上げ、自分の急所を美味しそうに口に含むアルベルトを見つめた。

「アル・・ベルト・・ エロすぎる。はぁはぁ、もうダメだ。イっちまっていいんだな。んっ・・っっっ・・出るぞ・・ はぁ」


 ルイソンは優しく触れていたアルベルトの髪を掴みそうになったため、慌てて手を離すと変わりに大地を叩いた。

 ルイソンの目が満月のように金色に輝き犬歯が顔を出すと、遠吠えをしそうになるのを必死で堪える。すると、身体中を駆け巡る波が一気にアルベルトの口中でうねりを上げた。


「んっ、はぁはぁ・・ アルベルト・・ サンキュ・・ 最高だよ」

 アルベルトは最後の一滴までルイソンの精液を吸い上げ、はにかみながら口周りを手の甲で上品に拭うと、ルイソンに騎乗してキスをした。

 互いの口内に残ったヴァンパイアとライカンの体液が、唾液と混じり合い匂いを確かめていると、再び身体が熱を帯びて行く。

「君の、もうこんなに大きくなってる・・ 挿れちゃっていいよね?」

「でももう少し慣らしたほうが・・ おいっ、アルベルト・・きっつ、痛くないか・・ はぁ・・ 大丈夫か?」

「平気・・だよ・・ あっ、この感覚・・ はぁはぁ、気持ち良い・・ あっあっ」

 アルベルトはルイソンの上でバレエを舞うように、綺麗な姿勢を保ちながら自分を前後に揺らし始める。

「はぁはぁ、アルベルト、綺麗だよ・・ はぁはぁ、愛してる・・」

 伸ばしたルイソンの手がアルベルトの細い腰元に届くと、アルベルトの身体を下から上へ揺らす。

「あっ、ルイソン・・ はぁはぁっ、んっ、イイ、凄くイイっ、はぁ・・」


 ルイソンは瞬時にアルベルトの身体を自分の下にすると、彼の熱棒でアルベルトの奥深くを突き上げた。

「っっ、イイっ、そこっ、ああっっ、ルイソン・・ 愛してる」

 アルベルトは手を伸ばしルイソンの頬に触れると、ルイソンはその手にキスをした後、唇を重ね唾液を絡ませる。

「俺も愛してるよ・・ アルベルト・・」

「はぁはぁ・・ あっっ、ルイ・・ソン・・ あっっ、んっ、もう離れない・・」


 ルイソンとアルベルトは、タガが外れたように一晩中お互いを求め、何度も共に絶頂に達した。

 彼等の熱気が周辺に伝わったせいか、生物達は息を潜め、満月の光で明るさを得た森林でありながらも、ひっそりと静まりかえっていた。

 ただ、ルイソンとアルベルトの喘ぎ声だけが星空に吸い込まれ、辺りに響き渡った。

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