第5話 俺、ダイジョブか!?
俺は顔面を真っ青にしながらも遅まきながらも服を着ようと、特訓によって地面にきれいに畳まれている服に近寄っていった。
その時の俺の内心はというと
『ダイジョブか、俺? このまま服を着てイリアちゃんを連れてギルドに戻るとイリアちゃんによって俺が全裸でイリアちゃんのC級の胸をモミモミしていたって暴露されて、そのまま弾劾裁判にかけられて、強制労働まっしぐらなんて事に……』
と悪い事ばかりを考えていた。
俺はノロノロと服を着た。そして以前の俺と同じように、いや前よりもオドオドして卑屈な笑顔を浮かべてイリアちゃんの方を向いた。
イリアちゃんも既に予備であろう服に着替えていたのでちょっとだけホッとした。
「あの〜、イリアちゃん、いやイリアさん。少しお願いがあるのですが……」
俺が下手に出てこう言うとイリアちゃんが【貴方はそれで良いのよ】という感じの笑みを顔に浮かべる。
「何でしょう? カブ先輩、いえ、変態さん?」
クッ! 自業自得とは言え変態と呼ばれるのは刺さるな。しかしここで怒る訳にはいかない。俺は卑屈に笑いながら言う。
「ハハハ、ヤだなぁ、イリアちゃん。変態だなんて。ほら、見てただろう? 俺が変態してゴブリンキングを倒したのを」
俺はそう言ってみたのだが……
「いいえ、私が見たのは何やらお粗末な棒が右に左にブラブラ揺れてるだけでしたわ」
イリアちゃんの非情な宣言を食らってしまった。
クッ、確かに膨張してない俺のジュニアは前世に比べて細く短い…… 前世ならば膨張してなくても長さ18センチ、直径4センチはあったのだが……
今世の俺のジュニアは長さ10センチ、直径2.5センチしかないのだ…… 玉袋も一回り小さいし……
お粗末と言われてもしょうがないが、既に確認している俺は知っている! 膨張時には前世と同じサイズになる事を!!
膨張時の長さ38センチ、直径7センチはこの世界でも最大に近いサイズの筈だ。多分だが……
しかしそんな事を俺は主張する訳にはいかない!
益々イリアちゃんに変態と罵られてしまうからだ。なので俺はこう答えるしかない。
「ハハハ、ごめんネ。お粗末なモノをお見せして」
俺が卑屈な笑顔でそう言うとイリアちゃんは感極まった表情で一瞬だけブルッと震えた。
しまった、この返事でも変態感が出てしまったのか?
「ふ〜、ふ〜、ま、まあ、よろしいですわ。助けに来て逆に助けていただいたのは事実ですから…… でも、それと私の胸を揉んだ事は別問題ですわよっ!! 変態さん!」
あちゃー…… やっぱりそう来るか……
ど、どうする? ここはもう平謝りするか、前世の話をしてしまうか? 胸をモミモミすれば魔力伝達が良くなるんだとか言うか……
よし、3番だな。
「ごっ、誤解だよ、イリアちゃん。俺はイリアちゃんの魔力を補充しただけなんだ。胸に触れたのはその方が魔力を効率よく流せるからなんだ」
しかし、そんな言葉は無意味だった……
「そのような学説は賢者様からも出ておりませんわ! カブ先輩、いいえ変態さん! もしも私がギルドに戻って変態さんのされた所業を訴えればどうなるでしょうね?」
そんな事をされたら俺は終わってしまう。4年経っても五級の俺と2年で三級までになったイリアちゃんとの話でギルドやギルド員たちがどちらの言い分を信じるかは明白だ。
俺はギルドをクビになり、路頭に迷うしかなくなる……
「いや、賢者様は言ってないかも知れないけど、本当なんだ! 信じてくれ、イリアちゃん!」
俺は路頭に迷うのを回避する為に必死でイリアちゃんに頭を下げた。そこで、イリアちゃんが条件を出してきたのだ。
「信じてさしあげてもよろしいのですが…… 条件がありますわ、変態さん。あの変な格好になるのは私の前だけ。そして、私とタッグを組んでいただきますわ。それに伴い私の拠点で生活していただきます」
【この時のイリアの内心】
『とても素晴らしい提案ですわ。これで四六時中カブ先輩を見ていられますもの。それに私の購入した家は小さいながらも12部屋ありますし、留守中に家の管理をお願いしているのもご近所でお子さんを成人まで育てあげた女傑の方が3人…… フフフ、あの方たちならばもしもカブ先輩の変態ぶりをみても笑って何でもない事のように済まされる筈。当初の告白予定とは変わりましたけれどもこれでもうカブ先輩は籠の中の鳥ですわ……』
えっと…… その条件は俺にとってはメリットとデメリットの割合の差が大きいのだが……
メリットは宿代がかからなくなる事ぐらいだが、デメリットとして五級の俺が三級のイリアちゃんとタッグを組むのは
ただでさえ4年もかけて五級になった能無しと思われてる俺が、若く美人でスタイル抜群で二級探索者からもパーティーに入ってくれと頭を下げられてるイリアちゃんと組んだらどうなるか……
うん、夜道を一人で歩けなくなるな……
けれども条件を飲まなければ俺はイリアちゃんによってその前に社会的に葬られてしまう。
「わ、分かったよイリアちゃん。その条件を飲もう。ただ、俺からも一つお願いがあるんだが」
「あら、何でしょうか?」
「俺が【変態ヒーローカブクワガー】である事をイリアちゃん以外の人には絶対に言わないで欲しいんだ。それと今回ゴブリンキングを倒したのはイリアちゃんだという事にして欲しい。討伐報酬もイリアちゃんに全て渡すから」
もしもイリアちゃん以外の人に正体がバレてしまった時にはその時点で俺の人生は終了してしまうだろう。それに五級の俺がゴブリンキングを倒したと言っても誰も信じてはくれないだろう。だから俺はイリアちゃんに頭を下げてそう頼んだ。
「ウフフフ、そんな事ですか。勿論、先ほどの私の条件を飲むのならば誰にも言いません。2人だけの秘密にしますわ。けれども討伐報酬はギルドから私が受取りますが、それはカブ先輩の物ですから私の家に戻ったらカブ先輩にお渡ししますわ」
俺はイリアちゃんの返事を受けて、有難うとお礼を述べた。
そして、俺たちはギルドへと報告に戻る事になったんだ。
その時の俺はギルドに俺の死亡届が出ているとは夢にも思ってなかったよ。
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