第24話 俺の求める君じゃなくても
●エルフィリア城・玉座の間(同日・夕方)
ゾルダム、ビッヒに斬りかかる
屈強な腕、剣を受け止める
ヘーゼ、爪でアードムを切り裂く
しかしすり抜け、地面を砕く
直後、地面から無数の巨大な爪
アードムの脇腹を貫くが、手応えはない
リーリア、上空を舞いアードムに斬りかかる
ヘーゼ「おい、てめぇネクロマンサ―だろ!?とっととこいつにかけてる術を解け!」
トワ「アタシ、何もしてないわよ!」
ヘーゼ「んなわけねぇだろ!てめぇの死体の山から出てきやがったんだぞ!」
トワM「まさか、死体が自我を……?そんな馬鹿な……!」
綾人、モリスに駆け寄り―
綾人「モリス、あの鬼は何だ?」
モリス「……Three demons, combined……. 」
綾人「combine……、融合した……?」
リーリア、冷気でアードムを氷像にする
木端微塵に斬り砕く
直後、どこからともなく光線
避けるリーリア、その方を見る
こちらに指をさすアードム
リーリア「やはり、どれだけ攻撃しても無駄……」
ヘーゼ「おい、死体女!ちったぁ援護しろ!」
トワ「援護って、ここには死体がないから何もできないわ!アタシは戦えないし……」
ヘーゼ「ちっ、使えねぇな」
ヘーゼ、モリスを指さして―
ヘーゼ「その色黒でも殺せよ!」
トワ「ダメに決まってるでしょ!?」
ヘーゼ、地面に両手をつく
そこから、5体の分身が現れる
一斉に、ビッヒに飛び掛かる分身
しかし、その全てに光の輪
胴を真っ二つに斬り殺す
ヘーゼ「ちっ!」
ゾルダム「おい、ヘーゼ!同じ鬼人だろう!こいつらの融合を解く方法、知らないのか!?」
ヘーゼ「知ってたらとっくにやってんだよ!そもそも、こんな力があるなんて……」
ゾルダム「ちっ、使えんやつだ!」
ヘーゼ「お姉ちゃんに暴言吐かないでください、殺しますよ?やめろ、人手が減る」
アンナ「爆ぜろ!」
アンナ、斧から無数の光弾を発射
身を翻し、華麗に避けるビッヒ
飛び出し、アンナに拳を振るう
アンナ、それを斧の柄で受け退く
一歩踏み出し、ガクッと膝をつく
アンナ「ぐっ……、くそっ……!」
ボタボタ、肩から流血
痛みに顔を歪めるアンナ
フォルシャ「アンナ、傷口が開いてる!これ以上動くのは危険だ!」
アンナ「知ったことかぁ!」
斧を構え、飛び出す
アンナ「ワシはまだ、何もしていない!だが、ワシはあやつとは違う!この状況で、剣も持たず何もせぬあやつとはぁ!」
綾人、ハッとする
アンナ「あの時……、剣を握りワシらに言い放ったあの言葉は、嘘だったのか!?」
〔回想〕
・綾人「この戦いで生き残って、凛々亜に会うって誓ったんだ……。そのためなら、どんな鬼だろうがぶっ殺す!」
アンナ「いや、嘘だろうが何だろうが、ワシには関係ない!ただここで斧を置けば、ワシは今のあやつと同列じゃ!そんなの……、ワシが、ワシを許せんのじゃぁ!」
斧を振るうアンナ
傷は徐々に大きく、肩に大きな風穴
そして次の一振り、腕が千切れる
大きな金属音を立てて落ちる斧
そこには、握ったままのアンナの腕
アンナ、膝をつき絶叫
アンナ「ぎっ、ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
フォルシャ「アンナ!」
倒れるアンナ、肩から多量の出血
意識が朦朧とし、目が虚ろになる
その時、アンナの体を光の輪が囲う
アンナM「ここまで、か……」
アンナ「ママ……」
消え入りそうな、微かな声
頬を伝う涙、地面に落ちる
その時、光の輪が粉砕する
目の前に立つ、誰かの足元
マダグレン「選手交代だ、アンナ。悶え苦しむ顔も悪くないけど、僕の城で暴れられて、黙って見ているわけにもいかないからね」
アンナ「マダ、グレン、様……」
アンナ、意識を失う
マダグレン、声を上げて―
マダグレン「下がりたまえ!ついに、僕のとっておきの技を披露する時が来たみたいだ……」
ゾルダム、リーリア、ヘーゼ、下がる
ビッヒとアードム、悠然と構える
マダグレン、剣を抜き―
マダグレン「君たちがどこにいようが関係ない。空間も時間も、何もかもを一刀両断する剣―」
マダグレン、剣を構え―
マダグレン「『次断剣』!」
マダグレン、剣を振り抜く
しかし、何も起こらない
マダグレン、ヘラヘラと頭を掻きながら―
マダグレン「ずっと修行してなかったから、使えなかったや」
トワ「何やってるのよ!」
アードム、光線を放つ
マダグレン、シールドを展開しながら―
マダグレン「せっかく手にいれた力だと思ったのに、残念だなぁ」
ヘーゼ「この役立たずがっ!」
リーリア、ゾルダム、ヘーゼ、戦闘を再開
その光景を見る綾人、眉を顰める
そこに、マダグレンがやってきて―
マダグレン「君は、戦わないのかい?」
〔回想〕
・アンナ「ワシはあやつとは違う!」
綾人M「嘘じゃない、嘘なわけない……。凛々亜を見つけるため……、そのために俺は剣を取り、トワたちに協力した。だけど―」
〔回想〕
・健尾「無理だよ!逃げてばっかりで、助けられてばっかりのお前には!」
・ティナ「健尾……。あぁ、ティンクルのことですね!死にましたよ」
綾人M「俺に、戦えるのか……?この戦場で、俺に出来ることなんてあるのか……?」
綾人、リーリアを見る
果敢に剣を振るリーリア
汗が散り、髪が靡く
目を伏せる綾人
〔回想〕
・リーリア「……綾人。やっと、会えた」
綾人M「本当に、凛々亜なのか……?もしそうなら、どうして剣を振るう、妖精を扱える、立ち向かえる……?俺の知ってる凛々亜じゃない……。もし、凛々亜じゃないなら……」
その時、綾人、微かに顔を上げて―
綾人M「俺は、何もしないのか……?彼女は、これが終わったら話すと言った……。もし、ここで俺が何もせず彼女が死ねば、それも果たせなくなる……」
リーリア、拳を受け吹き飛ぶ
地面に激突、剣が甲高い音を奏でる
綾人「そうじゃ、ないだろ……!」
肩で息をするリーリア
まだ、戦う意思は失っていない
その隣に、綾人が立つ
綾人、リーリアに手を差し伸べて―
綾人「たとえ君が、俺の求める君じゃなくても、俺は君を守る……!」
リーリア「綾人……」
リーリア、微笑み綾人の手を取る
立ち上がり、剣を構える
綾人、アンナの斧を持ち上げる
治癒魔法を受けるアンナを見て―
綾人「借りるぞ……」
??「綾人さ~ん!」
どこからともなく声
妖精・ティナが飛んでくる
ティナ「もう、どこ行ってたんですか!ずっと探してたんですからね!」
綾人「そうか……。ティナ、力を貸してくれ」
ティナ「はい!そのための、契約妖精ですから!」
綾人、目を閉じ、斧に額を合わせる
〔回想〕
・健尾「ドラゴフレア!」
・健尾「因みに、どこにも『ドラゴ』要素はない!」
綾人「健尾……、お前の力も借りるぞ」
綾人、ビッヒとアードムを見据える
斧を高く天にかざし―
綾人「『ドラゴ・ストーム』!」
ティナ「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」
斧に膨大なエネルギーが宿る
巨大な龍の化身、舞い上がり咆哮
リーリア「『万閃華』!」
リーリアの剣、数多の妖精が宿り輝く
綾人「はぁっ!」
リーリア「はぁっ!」
斧と剣、同時に振り下ろす二人
龍と妖精、二体の鬼人に襲い掛かる
体が吹き飛びそうな衝撃、皆身構える
そして訪れる静寂
灰色の煙が視界を埋め尽くす
武器を下ろす綾人とリーリア
しかし、煙の背後に二体の影
そこから光線、リーリアに迫る
綾人M「嘘、だろ……!?」
リーリアM「避けられない……!」
瞬間、目の前に虹の壁が現れる
淀んだ色の虹、天を突き抜ける
ゾルダム「なんだ……?」
ヘーゼ「戻って来られたのですね」
虹が消散
目の前に、赤い巨躯
虹色の装飾、カラリと鳴る
手には大剣・ムジグゼ
二体の鬼人を前に、堂々と構える
ヘーゼ「ツァイホン様……!」
ゾルダム「これが……!」
マダグレン「さっき振りだね」
ツァイホン、凶悪な眼力
ビッヒとアードムをギロリと睨み―
ツァイホン「ふむ……、自我を失っておるな。ならば、もう用はない」
ツァイホン、ムジグゼを構える
ヘーゼ、ギョッとして―
ヘーゼ「え、それはヤバいんじゃ―」
ツァイホン「伏せよ!」
一同、体を低くし伏せる
ツァイホン、ムジグゼを振り抜く
瞬間、けたたましい衝撃と轟音
床を砕き、壁を吹き飛ばす
ビッヒとアードム、なす術なく塵と化す
やがて衝撃が止み、顔を上げる一同
玉座の間、その右半分が何もない
見事に、城下町が望めるほどだ
ヘーゼ「やっちまった……」
マダグレン「これ、損害賠償請求できる……?」
ヨロヨロと立ち上がる綾人
そこに、リーリアが抱き着く
綾人「ちょ、リーリ―」
リーリア、綾人にキスをする
周り、シンと静まり返る
フォルシャ「大胆だねぇ」
綾人「リーリ……、凛々亜……」
リーリア「綾人……」
直後、綾人の肩をガシッと掴む手
振り返る綾人
まさに鬼の形相のマダグレン、迫る
綾人「あ、打ち首……」
マダグレン、手を離し―
マダグレン「しないよ、そんなこと。半壊された上に汚されたんじゃ、堪ったもんじゃない!」
綾人「マダグレン……」
マダグレン「大事な話があるんだろう、貸してあげる。今だけだけど」
綾人「あぁ、助かる」
リーリア「綾人。それにトワ、リュート……、は寝てるか」
トワ、立ち上がりリーリアの元へ
リュート、気を失っている
リーリア「全部話すよ」
綾人、ゴクリと息を飲む
リーリア「50年前……、この世界に転移した私が、どうなったのか」
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