第21話 光闇あるところに鬼あり

●エルフィリア帝国・城下町(同日・午後)


  ゾルダム、剣を振り下ろす

  モリス、それを銃で受け止める

  重い一撃、衝撃が走る


ゾルダム「貴様らネクロマンサーは、命を命だと思っていない!気まぐれに殺し、死体を弄ぶ……、死体で殺した者たちをもまた、傀儡にする。外道で、卑劣で、下等な種族だ!」


  繰り出されるゾルダムの連撃

  モリス、ただ耐えている


ゾルダム「あの時も、何人殺した、何人傀儡にした、何人悲しませた……!貴様らのような、心を持たぬ生き物には分からんだろうなぁ!友も、仲間も……、愛する者も持たぬ貴様らにはぁ!」


  モリス、ハッと目を見開く


  〔回想〕

  ・手紙を読んで涙を流すモリス

  ・銃撃戦、何人も撃ち抜くモリス


  モリス、発砲する

  それを全て剣で弾くゾルダム

  再び斬りかかり―


ゾルダム「俺は忘れない!マリナの心臓を抜き捨てたこと、死体をバラバラに切り刻まれたこと!これからも、永遠に忘れない!貴様らという種族を根絶やしにするまで、俺は剣を握り続ける!マリアの死が……、あの約束が、俺が剣を握るたった一つの理由だ!」


  ゾルダム、剣を振り下ろす

  それを受け止める銃、砕ける

  剣、モリスの首元寸前で止まる

  モリス、溜息、その場に胡坐をかく


ゾルダム「何だ、諦めたか……?」


モリス「……As you said, I killed many. My wife died while I went off the war. 」


ゾルダム「貴様……、人語も話せんのか」


モリス「暴力、ダメ、知ってる。でも、殺さない、モリスが死ぬ。それ言いにキタ」


ゾルダム「ネクロマンサーが、命を語るとは……」


モリス「ネクロマンサー、違う。I’m human, 人間」


ゾルダム「人間……?なぜ、人間が……」


  〔回想〕

  ・屋根を走る綾人

  ・気まずそうに、ゾルダムから目を逸らす


ゾルダムM「轟綾人……、やつと同じ……」


モリス「ワタシの妻、死んだ。気持ち、分かる。でも、トワたちの気持ちも、分かる。生きるため、殺す。If I stop fightng, it means my dying. They do their best everyday and everyday, Towa and Ryuto. 」


ゾルダム「ならば、人間の貴様が、何故ネクロマンサ―に与する。現に、先の襲撃で確実に仲間は死に、アンナもあの状態だ。貴様の言葉に、説得力などない」


  アンナ、微かに上体を起こして―


アンナ「私は、大丈夫、ですから……。公私混同、しないでください……」


ゾルダム「俺の結論も決意も変わらない……。命を弄ぶネクロマンサー、そしてそれに与する者は、例えどの種族であったとしても根絶やしにする。いずれにせよ、人間など既に滅んだ種族……。愛する妻の元へ逝けること、光栄に思え」


モリス「Oh, it sounds great too…….」


  その時、バイスが何かに気付き指をさす


バイス「ねぇ、お姉ちゃん、あれ……」


  屋根に寝そべるヘイス、その方を見る

  肉片の山、モゾモゾと蠢く

  ヘイス、体を起こし、怪訝な顔


ヘイス「なんだ……?」


  ゾルダムとモリスも気づき、目を向ける

  瞬間、中から手が、足が、顔が出てくる

  三体の鬼人、一同の前に現れる

  すでに死んでいるが、その姿に見覚えあり


フォルシャ「あれは、私が倒した赤鬼……」


ゾルダム「青鬼、ツォンセ……」


ヘイス「ノグセン、死んでやがったのか」


  ヨロヨロ、肉片の山を下りてくる三体

  直後、肉体が弾け飛ぶ


ゾルダム「なんだ……?」


  弾けた肉片、宙を舞う

  その一つ一つがくっつき、塊になる

  ゴクリ、息をのむゾルダム

  徐々に、その塊は人の形になる

  そして現れたのは、新たな二体の鬼

  光鬼・ビッヒと、闇鬼・アードム

  死体であることに変わりはない

  二体からは生気を感じない

  しかし一同、驚愕を隠せない


モリス「New demon……. 」


ヘイス「何だあれ、あんなの見たことねぇぞ……!」


バイス「合体、しましたよね……?」


ヘイス「どうなってんだ、あーしたちの体……」


  アードム、指をさす

  その先にはモリス

  モリス、立ち上がり身構える

  しかし直後―


モリス「What!? I can’t see anything! 」


  狼狽するモリス

  その肩を、一線の光線が貫く

  倒れるモリス、肩を押さえ悶える

  剣を構えるモリス

  剣を握る手、力が入る


ゾルダムM「生気はない……。だが、敵意は十分」


  ビッヒ、ゾルダムに手をかざす

  瞬間、ゾルダムを光の輪が囲う

  鋭く光り、まるで刃のよう

  ゾルダム目掛け、徐々に縮んでいく

  ゾルダム、それをしゃがんで避ける

  地面を蹴り飛び出す

  光線を避け、アードムを一太刀

  しかし剣はスルリと抜ける、まるで空振り

  同時に、姿を消す二体の鬼人

  辺りを見回すゾルダム


ヘイス「後ろだ!」


  ヘイスの声、振り返るゾルダム

  こちらにさされた指から光線

  剣で弾き、飛び出すゾルダム

  アードムに一太刀

  しかし、またスルリと抜けてしまう

  直後、ゾルダムを囲う光の輪


ゾルダムM「まずい、避けられん……!」


  容赦なく縮む光の輪

  ゾルダムの首にめり込もうとする

  その瞬間―


ゾルダム「……!」


  粉々に砕ける光の輪

  それを砕いたのはバイスだ


ゾルダム「貴様……」


バイス「お姉ちゃんの命令です。あなたを助けたわけではありません」


ゾルダム「そうか」


ヘイス「てめぇに死なれちゃ困るからなぁ」


ゾルダム「なに?」


  ヘイス、屋根から降りてバイスの元へ


ヘイス「得体の知れない鬼、厄介だ……。てめぇ一人じゃ死ぬ。あーしらが一匹ずつ相手しても、多分死ぬ」


ゾルダム「ならば、三対一か?」


  ヘイス、口角をニヤリと上げて―


ヘイス「いや、二体二だ」


ゾルダム「なに?」


ヘイス「バイス」


  ヘイス、バイスの両肩にそっと手を置く

  バイス、それ受けて頬を赤らめ―


バイス「うん。お姉ちゃんなら、いいよ……」


ヘイス「バラバラになるのだけは勘弁な……」


  気だるげに溢すヘイス

  直後、バイスの唇を奪う


ゾルダム「なにを……?」


フォルシャ「大胆だねぇ……」


  瞬間、ヘイスとバイスの体が弾け飛ぶ

  肉片が混ざり、合わさり、塊へ

  徐々に人の形へと変貌する

  そして現れたのは、一体の鬼人

  灰鬼・ヘーゼ


ゾルダム「まさか……!」


ヘーゼ「出来たね、お姉ちゃん!ちっ、バラバラになりやがった……」


  言葉を失い瞠目するゾルダム


ヘーゼ「おい、惚けてんなや」


ゾルダム「あ、あぁ……」


ヘーゼ「別に、あいつらができたんだ。あーしらが出来たっておかしいこたぁねぇ。えへへ、お姉ちゃんと一つになった!やめろ」


ゾルダム「これで、二体二」


ヘーゼ「あーしらの力が合わさってんだ、倍増しだぜ」


ゾルダム「行くぞ、ヘイス、バイス」


ヘーゼ「いや、今のあーしらは、灰鬼・ヘーゼだ」


ゾルダム「そうか。行くぞ、ヘーゼ」


  剣を構えるゾルダム

  戦闘態勢のヘーゼ


ヘーゼ「これが終わったら、また改めて殺し合いだかんなっ!」


ゾルダム「あぁ、望むところだっ!」

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