第14話 Happy & Peace

●ミョルティ・城(同日・午前)


  綾人とモリス、向かい合って座る

  モリス、怪訝そうに眉を寄せて―


モリス「テンイシャ?なにそれ?」


綾人「えっと……、異世界、another world」


モリス「?」


綾人「……」


  綾人、もどかしそうに唸る

  仕切りなおすように咳払いし―


綾人「ここに来る前、何してた?」


モリス「戦ってたよ、War!」


綾人「戦争……。1940年、戦争……」


  綾人、ハッと思いついて―


綾人「第二次世界大戦……!」


  綾人、モリスをチラと見やり―


綾人M「健尾は現代から過去にとんだ。でもモリスは、過去から現代に来た。それも、かなり前の過去から……」


モリス「アヤト、平気?」


綾人「あ、あぁ、ちょっと驚いて……。どうやってここに来たか、心当たりあるか?」


モリス「?」


綾人「えっと……、Do you remember how did you come here?で、あってるか……?」


モリス「I’m not sure but, it may relate to my looking into a lake……」


綾人M「は、速い……」


モリス「湖、見た、のぞいた」


綾人「湖……!」


モリス「夜、戦ってないとき。近くにあった、湖見たらSuddenly I was here. 」


綾人「同じだ、俺と……」


綾人M「俺はエルフィリアだったけど、モリスはミョルティに飛ばされた……。時代も場所もバラバラだ、どうなってる……?」


  ため息をつく綾人

  それを見て、モリス静かに―


モリス「でも、ここいい」


綾人「?」


モリス「War, that was literally the hell. My fellows were killed. About the same, I killed many. But here, All I do is just stealing. Happy happy, Peace peace!」


  手をピースにして、ちゃらけるモリス

  綾人、「あはは……」と苦笑い


綾人「えっと……、But elf and demon fight. 」


モリス「Yeah, I know. Violence solves absolutely nothing.暴力、ダメ。話す、OK.」


綾人「そうだな、それが出来れば一番なんだけど……」


  〔回想〕

  ・容赦なく襲い掛かってくる鬼人


  綾人、半ば投げやりに―


綾人「この世界って、何なんだろうな……」


モリス「Mirror……」


綾人「え?」


モリス「鏡、湖、I reflected. 」


綾人「鏡の……、鏡面世界……?」


  その時、背後に一人の少女の気配

  トワ、腰に手を当て―


トワ「ちょっと男たち、話してないで準備しなさい。むさ苦しいのよ」


綾人「準備?なんの」


トワ「決まってるじゃない」


  トワ、ニヤリと口角を上げ―


トワ「食料調達よ。人手は多いに越したことないの」


●砂漠(同日・午後)


  一面の砂、砂、砂

  太陽を反射し、熱気を放出する

  身を屈める綾人たち

  その視線の先、亜人

  動物に乗り、前を通り過ぎようとする


綾人「盗むのか……?」


トワ「えぇ。ただで私たちの前は通らせないわよ」


  トワ、動物の足元に手をかざす

  直後、砂がモゾモゾと蠢く

  手が、足が、ズボッと突き出す

  やがてそれらは、ヨロヨロと全容を見せる


綾人M「死体……!これが、ネクロマンサ―の……」


  動物を抑え込む死体の束

  慌てふためく亜人


亜人「な、何だこれぇ!?」


  その時、ザッと足音

  亜人に影が落ちる


モリス「Ayo」


亜人「へ?」


  怯える亜人の視線の先

  モリス、鋭い眼光で睨みながら―


モリス「持って⤴るもの、ぜんぶ⤴出せ」


●ミョルティ・城(同日・夜)


  蝋燭で橙色に照らされた城

  酒を酌み交わすネクロマンサ―たち

  和気藹々とした雰囲気

  綾人、それを横目に外に出る

  一人、外で酒を飲むトワを見て―


綾人「トワ」


トワ「あぁ、轟」


綾人「綾人、がいいかな」


トワ「じゃ、綾人で」


綾人「モリスは?」


  トワ、指をさす、集落の方

  人々に食料を配るモリスとリュート

  盗みの時が嘘の様に、穏やかな表情

  自然と、集落の人々も笑顔になる


トワ「今の彼を見せたら、あの亜人、逆に腰抜かすわね」


綾人「はは、確かに」


  綾人、僅かに逡巡して―


綾人「なぁ、トワ。モリスは―」


トワ「知ってる。この世界の人じゃないんでしょ?」


綾人「知ってたのか」


トワ「アタシたちと全然見た目違うしね。それに最初は、言葉も全く通じなかった。種族が違う、って以上に大きな隔たりを感じたわ」


綾人「不思議だよな……」


トワ「もしかして、アンタもっていうんじゃないでしょうね?」


  綾人、申し訳なさそうに頷く

  それを見て、額に手をやるトワ


トワ「とんだ偶然ね……。彼は未だに、元の世界に戻る方法を探しているわ。アンタも、早く帰れると良いわね」


綾人「……あぁ」


トワ「どうだった?初めての盗みは」


綾人「俺、大したことしてないんだけど……」


トワ「最初はあれでいいのよ。そのうち、しっかりやってもらうんだから」


綾人「流石に、ちょっと気が引けるな……」


トワ「綾人はいい子ね。一体、こことは違う世界でどんな暮らしを送ってきたのやら」


綾人「普通だよ。大学行って、恋人と過ごして……。あ、そう言えば捕まってたな」


  トワ、驚いて咳き込む


綾人「怒涛過ぎて忘れてた」


トワ「酒が勿体ないじゃないの」


綾人「トワは、どんな生活を送ってたんだ?」


  トワ、グラスをコトッと置く

  どこか遠くを見つめながら―


トワ「ネクロマンサーは受け入れない……。それがこの世界の、亜種族の掟よ」

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