第2話 牢獄談義
●エルフィリア城・地下牢(同日・午後)
ガチャンと、鍵の閉まる重く甲高い音
暗く湿った地下
点在する蝋燭が、僅かな光源
牢屋の中には、汚いベッドが一つだけ
石が剥き出しで、座り心地は悪い
綾人、気だるげに壁に凭れ―
綾人「結局、またここか……」
男性「またって言ったか?にいちゃん、結構やらかしてんだなぁ。こんなところも慣れっこか?」
壁の向こう、声のみの存在に目を向け―
綾人「……誰だ、お前」
男性「おいおい、年長者に向かって口の利き方がなってないんじゃねぇか?俺ぁもう、ここに勤めて30年にもなるベテランだぜ?」
綾人「威張ることじゃないだろ」
男性「んで、何やらかしたんだ?」
綾人「……リーリアって人に、不敬をはたらいた罰だってさ」
男性「おぉ、そりゃ重罪だなぁ」
綾人「そんなにか?」
男性「あぁ、こうして牢に入れてもらえただけまだいい。その場で打ち首、なんて話も聞いたことあるからなぁ」
綾人「でも、あいつは俺の恋人で……!」
綾人M「いや、違ったんだろうな。あの目も、鼻も、口も、全部凛々亜だった。けど、凛々亜はあんな風に俺を睨んだりしない。そんなこと、一度もなかった……。あれは、凛々亜と瓜二つの別人だ。だったら、あれは一体誰なんだ……?」
男性「はっ、一国の王妃を恋人たぁ、デカく出たもんだ。おめぇさんは、世界の絶景にも勝る面を持ってんだろうなぁ。ま、こっからじゃ見えねぇけどwww」
綾人「こっちの話しだ。そう言うお前は、何をしたんだよ?」
男性「んな大したことはしてねぇよ。ちっと妖精潰して遊んでただけだ。それがこんなに長いお勤めになるたぁ、あいつらも頭硬いよなぁ。あんなん、殺してもいくらでも生まれるってのに。んで、おめぇさんは何をしたんだ?」
綾人「いや、さっき言っただろ。リーリアって人の―」
男性「ちげぇよ。おめぇさんさっき、“また”って言ったよな?」
◆街(半年前・午後)《回想》
綾人、道を歩いている
その時、正面から走ってくる一人の男
すれ違いざまに、大きく肩をぶつける
綾人「何だよ……」
足元、小型のナイフ
拾う綾人
刀身には、鮮血がついている
右側には、男が出てきた建物
小さな幼稚園だ
その半開きの入り口から、中に入る
点々と、地面に血痕
徐々に、息が詰まる
そして、建物の中を覗く綾人
中には、血まみれの子供と先生
誰一人、ピクリとも動かない
その光のない、濁った瞳が綾人を見つめる
ハッと、短く息をのむ綾人
ナイフ、甲高い音を立てて地面に落ちる
逃げ出す綾人、その後ろ姿
●同・地下牢(同日・午後)
綾人「翌日、俺の元に警察がやってきた」
男性「何も、してなかったんだな……」
綾人「あぁ、俺は無実だ……」
男性「どうして、何もしてないって言わなかったんだ?」
綾人「言ったよ。でも、俺の話しなんて何も聞いてくれなくて……。こんなことになるんだったら、力づくでも聞いてもらうんだったな……」
男性「そりゃ、災難だったな……。まぁ、けーさつ?とかよーちえん?ってのはよく分かんねぇけどwww」
綾人「……なぁ、ここはどこなんだ?」
男性「あ?」
綾人「人間はいないのか?どうして、言葉が通じるんだ?」
男性「それは―」
その時、コツコツと足音
男性「これから、詳しい話が聞けるんじゃねぇか?」
綾人「え?」
顔を上げる綾人
牢の前に、二人の兵士が綾人を見下ろす
兵士「陛下がお呼びだ、来い」
牢が開かれ、連れ出される綾人
男性の牢の前を通った時―
男性「皇帝直々の呼び出しとは、ツイてるなぁ。強く生きろよ」
しかし、綾人は無言で歩く
男性の顔は見えないまま
男性「悪くねぇツラだなぁ」
●同・玉座の間(同日・夕方)
扉が開き、入ってくる綾人
玉座の間中央で跪く
正面には、玉座に腰かける青年
マダグレン・エルフィリア、微笑む
隣には、リーリアの姿
キリッと、綾人を睨む
綾人、彼女をチラと見る
気まずそうにすぐ目を逸らす
マダグレン「やぁやぁ、君が僕の妻に不敬をはたらいた罪人か」
綾人「お前は……」
マダグレン「僕はマダグレン・エルフィリア。この国の皇帝だ」
綾人「皇帝……、そうか。で、王 陛下直々に俺を呼び出して、何の用だ?」
マダグレン、顎に手を置く
綾人を見つめる興味深そうな眼
マダグレン「ふむ、やはりそうか……」
綾人「え?」
マダグレン「君には、このエルフィリア帝国の命運を握る戦い……、そのために剣を握ってもらおう」
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