本音 告白する?

 今日もまた玄関前。

 昨日と同じくインターホンを押せずにいる。


 昨日はやらかしてしまった。

 いくら、頭が回っていなかったとしても、あの判断はおかしい。

 どう考えてもおかしい。

 今考えればあれがおかしいのは明白なのに



「(本当に何やってんのよ私……)」


 このことを思い出すたびにため息が出る。


 いくら一緒に寝るような仲だとしても――


「私から誘うなんて……非常事態でもないのに」


 一緒に寝るのは大丈夫だ。

 理由があるならば


 理由がないのに一緒に寝るなんて、付き合ってないとだめだ。


「(付き合えばいけるってことよね)」

「いや、何言ってるの私!?」


 何気なく呟いた一言に驚きを隠せない。


「こんなの、私があいつと付き合いたいみたいじゃない」

「まーあ、あいつがどうしてもって言うなら考えてやるけど」


 本当に誰に言ってるのだろうか。

 最近、独り言が増えた気がする。


「(付き合ったら、どうなるんだろ……? 私自身嫌ではないし――)」


『お試しに付き合うのは?』と言いかけたがやめる。

 ここで言ったら『恋人になりたい。けど、いきなり付き合うのは』ってことで代案を出してる感じがする。

 それは嫌だ。

 というか、提案はここでするもんじゃない。


 提案する勇気なんてないんだけど。



「この一ヶ月で3回も寝てるのよね……」


 事実を口にしただけなのだが、恥ずかしい。


「仕方ないのもあったとはいえ、3回って結構な回数よね……。もう、これ、幼馴染飛び越えて、恋人じゃない!」

「進んでやってるようには見えないけど。あれ以外は」


 昨日のあれは、必要がなかったもの。

 私は誘いはしたけど、強制じゃない。

 つまり、あいつの意思で一緒に寝たってこと。


「今まで散々断ってきておいて、私の誘いに乗ってるんだから――」

「欲望を抑えきれなくなっちゃったのね」


 あいつの前では言わない。

 なんだか『あんたは私のことが好きに決まってるわ』って自意識過剰な感じがするから。


「事実なんでしょうけど。私のことが好きなのは」


 嫌な相手と添い寝するわけがない。

 私だって、嫌じゃないから誘ったりしてるわけだし




「……っ」


 気が付いてしまった。


 あいつは私のことが嫌いじゃない。

 それは事実だろうけど、「嫌いじゃない=好き」は成り立たない。


『好き』って気持ちが抑えられないほどではないのだろう。

 現に、今まで告白されていない。


「思わず告白させたら勝ちね」

「良い雰囲気にもっていって、うっかりしたら、告白しちゃうって感じにする!」


「よし、頑張ろ」


 私はインターホンを押した。

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