ASMR #6 放課後、幼馴染とバグった関係

 階段で少し話してからというもの、それ以降、会話はない。

 それは、部屋に入った今でも続いている。


 会話がないのには理由がある。

 ただ、それが幼馴染には不気味に映るようで――




「何で無言なの、ね。言いたいことは分かる。でも」


「うんうん、分かるよ」

「あんたの言う通り、ドアを閉められたあとも無言だったら、めっちゃ気になるよね。『怒ってるのかな?』って勘ぐっちゃうよね」


「そこまでは言ってない? まあいいや」

「私も頭では理解してるの。ただね、無言なのには理由があるの。少しだけ、私の話に付き合ってくれる?」


「怖がらせちゃってごめんね。別に、怒ってないから」


「絶対怒ってるやつ? 決めつけは良くないと思うよ」


「だから、怒ってない!」


「いや、今は怒っちゃったけど、本当に怒ってないからね。本当よ?」


「どれだけ説明しても理解してくれなさそうだから、続けるわね」

「一つ質問してもいいかしら」


「身構える必要ないわ。純粋に疑問を聞くだけ。いい?」


「じゃあ質問」

「私、何かしちゃった?」


「違う! 二つの意味で。私は怒ってないし、質問の答えとしても違う!」


「あんた、今朝、黙って帰ったでしょ。私が『何か』をしちゃったから、なのかなって」


「気遣いありがとう。起こさないようにって気遣ってくれたのは、ほんとうにありがとう」



「もし、私を気遣って、本当のことを言わなかったんだとしたら、遠慮せず、正直に教えて」



「……分かった。信じる。ことは分かるから」

「だけど……前に、私は幼馴染だからあんたのことはお見通し。そんな話をしたのは覚えてる?」


「なら良かったわ。じゃあ次の問題。私がこれから言おうとしていることは?」


「分かってるじゃない。白状しなさい」

「あなたが帰った理由。建前じゃなくて、本音を」


「そうよね。私も同じ気持ちだったから。よく分かるわ」


「そうよ? 私もおんなじこと思ってたの」

「(一晩、同じベッドで寝たのに、平然としてたらおかしいじゃない)」


「ごめんなさい。声が小さかったわね。『まだ夕方だけど、一緒に寝よ』って言ったのよ」


 もちろん嘘だ。


 どう接して良いのか分かっていない。

 寝不足も相まって、頭が疲れてきた。


 寝たら、頭を使わなくて良いから楽かもしれない、と思っての発言。

 彼は何やら不服そうだ




「約束と違う? そんなこと言ったら――」


「おっ、初めて私の誘いに乗ったわね。珍しい、大人しく従うとは。そんなに私に遣り込められる気満々なの?」


「聞いてみたけど、答えなんてどうでもよくて」


 続けて耳元で

「いっしょに寝ない?」


「ほら、ベッド入ろうよ」


 私の頭には、寝ることしかない。


「隣あいてるよ」


「私の隣、安心するんでしょ」


「ほーら、入って」


「私は先に寝るからね。おやすみ」



 全然来ないなぁ、なんて思いながら目を瞑る。

 すぐに寝れそうだ。


 なんか大胆なことを言ったり、やったりした気がするが気の所為だ。

 それより、ようやく寝れる。


 授業眠かったなぁ、と心の中で呟いた。

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