本音 合わせる顔

 目覚ましの音が鳴り響いている。

 まだ眠い。二度寝したい気持ちはあるのだが、今日も学校。

 体を起こすほかない。


 横に幼馴染の姿はない。

 昨夜、すぐに寝れていたのだから、私より早く目を覚ましていてもおかしくない。


「(昨日、あいつと……)」


 私から誘っておいてなんだが、自分でも急展開だったなと思う。


「(あいつ、早く寝すぎでしょ)」


 改めて思う。


「(心地よかったって言ったら聞こえは良いけれども)」


「(どんな顔して会えば……)」

「あいつは平然と接してくるんでしょうけど。気にした様子もなく『ありがとう』とか言って、私にだけダメージを与える。ほんとズルいわ」


「考えても仕方ない。行くしかないわね」


 色々と言っていたが、一階に行くしかない。

 いざ、幼馴染と対面



 ◇



 放課後、今日も幼馴染の家の前。


 いつもなら、電話をかけるかインターホンを押すかしているが、今日は何もしていない。

 ただ立ち尽くしているだけ。

 決心がつかないのだ。



 避けられている。それも朝から

 そうでないと説明がつかない。


 今朝のリビングには、一人前の朝食が置かれていただけで、誰もいなかった。

 支度で帰ったにしては早すぎる。


 原因が分からない。だから怖い。

 どうすれば良いのか分からない。


 本人に直接聞くのが一番だと思ったのだが……




 いつまでも玄関前にいるわけにはいかないし、何より暑い。

 することは一つ。電話のみ。


「やっぱり、最初はインターホンのほうが良いよね」


 ひよった私はインターホンを選択した。


「寝てたら、起こすのも申し訳ないし」



「あんだけ寝ても昼寝かしら」


 反応がないと思ったら、ドアが開いた。


「お、おはよう」


 夕方なのに、口から出てきたのは「おはよう」

 どう考えてもおかしいのだが、彼も復唱。


「部屋、行くかしら?」


 彼の『そうしよう』を聞いて家に上がる。



 移動中は無言。

 最近、多い気がする。

 仕方ないのは分かっているが、なんとも気まずい


 話すことといえば


「よく寝れた?」


 これしかなかった。



「なら良かったわ」


「…………」


 たったそれだけの会話なのに、安心してしまう。


 これから、真意を確かめなければならないのだが

『いける?』心のなかで叫んだ

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