ASMR #7 放課後寝てたら、幼馴染は仕掛けてきた!

 インターホンを押した私は、少し驚いていた。


「全然反応ないわね。珍しい」


 本人曰く、最近、よく寝れているらしい。

 だから、寝てるってことはないと思うのだが


「鍵開いてたり……?」


 ドアノブを引いてみると、開いた


「開いちゃった……。入って良いのかな?」

「ま、ちょっと前まで、開けっ放しだったし」


「(おじゃましまーす)」



 ◇



 一人さみ……じゃなくて、静かな階段を上っていき、幼馴染の部屋の前。


「…………」


 ドアを開けた瞬間、呆れた。

 寝ていたのだ。正確には寝たふり


「(どうして狸寝入り?)」


 顔を合わせづらいのは分かる。

 とはいえ、手段が姑息すぎる。

 バレることなんて、想像に容易いのに……


「(私も人のこと言えないけどさ)」


 私だって、インターホンを押すのを躊躇って、玄関前を行ったり来たりしていた。

 にしても、である。


「(この幼馴染は分かりやすいなぁ)」


 こんな感じで、小声だけど呟けるのはドアを閉めたから。

 理由もなくドアを閉めたのが良い方に働くとは


 ドアの開閉を繰り返していると不審なので、覚悟を決め(?)、再度開ける




「あーあ、『良いこと』してあげようかと思ったのになぁ。寝てたらできないなぁ」


(わざとらしすぎるっ……)

 自分でもわかる。


(これじゃあ、どっちもどっちじゃない)

 心の中で呟いたがもう、後戻りはできない。


「残念だなぁ。でも、それじゃあ、可哀想にだから、頬に…………」


 そう言って、どんどん近づけていく。


 あと15センチ……

 10センチ……

 5センチ……


(どうするの? どっちかがやめないと、ほんとうに……しちゃうわ…………)


 唇が触れそうになったが、直前で進路変更。

 ここまで近づいたら、次に行くべきは……


 耳元まで持っていき――

「ふー」


『何すんだよ!』と飛び起きる幼馴染。

 昔と変わらず、耳は弱いようだ。


「何って、決まってるじゃない。昨夜、私と寝た……にも関わらず、残念ながら、昼寝をしていたあんたにお仕置きしたのよ」


「その前? ちょっと独り言を言っただけで、それ以外何もしていないわ」


「嘘ついてないわよ。というか、どうしてあんたは私が嘘つきって断言できるのかしら?」



「言えないようなこと? もしかして、私と顔を合わせるのが恥ずかしくて――」


「自白ありがと。素直ね」


「『チューしようかな』って言ったのは事実。ただ、言っただけ。本当にしようとは思ってなかった」

「チューしようとしたら、あんたが起きると思ったから。でも、実際は……」


「別に? 言いたいことは、ひとつしかないわ」



「あなた、あわよくばチューしてもらえるって思ってたでしょ!」


 唇を顔の方に持っていき――

 耳元で「えっち」と呟く


 幼馴染の顔が赤くなる。

 そりゃそうだ。自分だって赤いもの。

 私だけなんて、ズルい。



「否定しなくて良いわ。あなたはチューされたかった」

「それも、誰彼構わず」


「じゃあ、教えてくれるかしら。何が違うのか」


「っ……」


「いや、『やっと言ってくれた』って思っただけ。そうなんだぁ、私以外のチューは要らないんだ」

「じゃ、目を瞑って……」

「…………」

「告白のお礼に――――」




「期待してたのとは違った?」


「はっきり言わせてもらうわ。ここはキスよ!」


「恋人同士になったんだもの」

「キスがOKになったんだから!! そりゃ、するでしょ!」

「(幼馴染同士はが限界……)」


「そうよ。不満かしら?」

「あんたから告白したのに、返事は『喜んで』じゃ、だめ?」


「じゃあ、今日から恋人。でも――」


「恋人らしいことは明日からねっ」




「あと、エアコンの修理、終わったみたいだけど」


 またもや耳元で「明日からは、一緒に寝て良いわ」

 次いでに(?)誘っておいた。


「じゃ!」


 顔が熱くなるのを感じながら、小走りで家へと戻った。

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