ASMR #2 放課後、幼馴染と添い寝する?

「遅かったじゃん」


 部屋に着いてから意外と待った。

 私が急ぎすぎただけかもしれない。

 いつもそんな感じな気もするが


 幼馴染は私がベッドに座っているのが気になるようで……



「うん、そうだね。ベッドの上だね」

「だけど何よ今更。添い寝もする仲じゃない」

「今日も添い寝かな? したいなら良いよ」


「まあまあ、良いではないか」


『誰だよ』って内心思われた気がしなくもないが、まあいい。これがここでの、平常運転。

 学校では絶対に使わないだろうけど


「とりあえず座ろうか。隣、空いてるよ」


 彼は隣に座る。

 少し離れて座るので、私から距離をつめる。いつものことだ。


「で、添い寝の話だよね」

「ぶっちゃけしたいでしょ。したいなら、するけど?」

「もちろん、ただで、とは言わないけどね」


「うーん、今日は何してもらおうかな」


 彼の非難めいた弁明(?)を遮って言う。

 もちろんわざと。


「ごめんごめん、一人で話進めちゃった」

「にしても、頑なに認めないんだね。添い寝したいなら『添い寝したい!』と言えば良いものを……。正直になりなよ」



「チキン」


 彼に聞こえるくらいの小声で言う。


「うん。聞こえるように言ってるからね」

「だって否定できる材料ないでしょ?」


「それに、あんたの欲望なんてお見通しだから」


「そう、お見通し。だから、必死に否定しなくて良いんだよ? 認めちゃえば楽になるよ」


「他にはどんな欲望をお持ちですか?」


「ごめんごめん。でも、欲望は言って欲しいかも」

「そうは言っても、“何でもしてあげる”ってことじゃないから。勘違いしないように」



「何よ……結局しないんだ」

「残念だなぁ……」


「素直になればいいものを……」

「逃がした私は大きいぞ」



「わたしっ!? いや……私はね……」


「って、そんなジト目向けないの! 私が言葉に詰まると、自分のこと棚に上げてさぁ」



「実際って言われても……知らないよ…………」

ここベッドは快適。でも、添い寝したいかって言われると、ねぇ」

「分かるでしょ?」


「分からないかぁ」

「試しにしてみる……? そしたら分かるかもよ……」



「そう、だよね……」

「いや だよね。汗臭いしだろうし」



「ごめんね。こんな汗っかきで」


 彼をからかうチャンスとみた私は、わざとらしく言う。



「睨んでないよ。ジト目だよ。さっきのお返し。あんたに待たされたのは事実なんだし」


「汗かいたし、、アイス、食べたいなぁー」


 棒読み。


「夏は涼しい部屋でアイスだよねー」


 もう一度。

 別にアイスが食べたいわけではないのだが。


「チラッ、チラッ」


「種類? そんなの聞く必要ある? いつものやつ。一緒に食べよっ! だから一緒にリビン……」


「こぼさないもん!」

「あんたこそ、持ってこれるのかしら?」


「そうよ、あんたが持ってくるのよ。そういう話だったでしょ」

「くれぐれも、落とさないようにね」


「言い訳しない! はい、いってらっしゃい!」



 ◇



「戻ってきたわけだけど……、なんで手ぶらなのかな? もしかして、途中で落としちゃったの? しょうがない人ねぇ」


「切らしてた? やっぱり?」


「あったりまえでしょ。把握してるよ」

この家ここで快適に過ごすために、だからね」


「あと、かぁ……。なんだろ」


「あっ、2階のトイレットペー……そうそう、思い出した?」


「ほらねっ!」

「色々と把握しているのです」

のことも」



「おお、あんたから提案してくれるとは。誘導はしたけど」

「あんたにしては、気が利いてるわね。あんたにしては」


「そんなのどうでも良くて、提案ありがと。でも、今から買いに行くのはやめておかない?」


「疑問に思ってるみたいだけど、暑いし、それに、もともとアイスはおまけみたいな感じだったからね」

「あんたが思ってるほど食いしん坊じゃないんだよ、私は」


「心外だなぁ。ま、冷蔵庫まで行ってくれてありがとね。もう少し私を『知る』べきだと思うけれど」


「やっぱり察し悪いわね。、私、食いしん坊じゃないの」


「何で納得しないのよ……。まあいいわ」

「それと、もう一つお礼。待ってる時間にいたずらを思いついたのです。何か分かる?」


「ブッブー、不正解。当てる気ある?」


「ひどいなぁ。まあいいや、じゃあ答え合わせ。正解はね……」

「明日」


「細かいことは気にしないの! ちょっと間違えただけじゃん……」



「じゃあまた!」



 『そうだな』という返事を聞いて、私は、彼の部屋を後にする。


 現在、午後六時過ぎ。夏だからか、辺りはまだ明るい。

 日が沈んできているものの、外は相変わらず暑かった。


 早く家に帰って涼みたい。少し小走りで家に向かった。

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