第12話 前回のつづき

 なんだろうか。

 朝から引き続き、常にアリスの視線が優しい気がする。


 というより、哀れな感じに見られているというか。

 捨てられた犬を見るような……なんかそんなイメージだ。


「ふふふ」


 なぜか隣で微笑むアリス。

 まあいい。放っておこう――と思っていたら、昼休みに、廊下で声をかけられた。


「わたしに任せなさい、ヤスト」


 ぐっ、と親ゆびを立てられる。


「なにがだよ」


 何の話だ、いきなり。


「そうね……たとえば」


 アリスはきょろきょろと周囲を見る。ちょうど、廊下に誰もいなくなったところで――。


 あろうことか、スカートの端をもって、すっと持ち上げた。

 ほんの数センチだが、もともと足が長いせいで、アリスのスカートはずいぶん短く見える。

 たったそれだけしかあげていないのに、なんだかやけにイケナイこと見せられている気になった。


 いや、『なった』――じゃないぞ。

 これはそもそもなんなんだ。


 俺はアリスに問う。


「……どういうことだ」

「どういうことって――こういうことだけど」


 ちらちら、とスカートの端があがってはさがる。

 いきなりだったので驚きはしたが、延々と見せられていると、意味不明度合いがあがって、むしろ恥ずかしくなってくる。


「わかったから、やめたほうがいい……」

「……つまり、治った?」

「なにが」

「いえ……いいの。わたしに任せるといいわ。そしてきっと、本心を吐かせてあげるんだから」


 アリスはそういうと、一人、満足して教室に戻る。

 何の話をしているんだ、あいつは。


 ……なんていいつつ、白く健康的な太ももがしばらく頭から離れなかったのだけども。

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