カディーラ島
16.カディーラ島
カディーラ島の海岸沿いにある巨大な豪邸。貴族の屋敷みたいなところ、それが俺たちが転移してきた場所だった。
俺たちはその屋敷に入り、荷物を置いて一息ついたところでこれからのことを話し合うことにした。
「まずはこの島を知るところから始めましょう」
ローラがそう提案してくる。
「そうだな、まずはこの島のことを知りたいし」
「では散策しながら私が教えますね」
「ああ、頼むよ」
俺とローラは屋敷から出ると、島を歩きながら案内を始めた。
*
「わたくしたちのいるこの海岸は、レイユ海岸と言ってカディーラ島の西側の海岸です。そしてこの海岸から内陸に行くと、魔物が生息する魔の森と呼ばれる場所があります」
「魔の森?」
「はい、カディーラ島にはいくつかの魔境と呼ばれる地域があり、その1つにレイユ森の深層にある魔の森があるんです」
ローラはそう言って島の地図を見せる。
魔の森、魔の山脈……、地図を見て気づく。
この島大きい。
「ですが安心してください。この島の西側に居れば魔物が来ることはありません」
<鑑定>で結界が張ってあるのが見えるが、魔物が来ないというのはおそらくこれのおかげだろう。
「結界があるから?」
「はい、ですが良くお分かりになりましたね」
「それほどでもないよ」
俺はローラにそう話すと、地図を見ながら話を続ける。
「この島は、東側に行くほど高ランクの魔物が生息しています。とくに東の果ての魔の山脈には、ドラゴンが居ます」
この世界には冒険者とそれに仕事を斡旋するギルドというものがある。ギルドや冒険者というのは、国の枠組みを超えて存在しているもので、それら仕事を斡旋するうえで基準となるランク制度がある。
例えば、Fランク冒険者は、簡単な依頼を斡旋される見習い。というように、F、E、E+……と続いていき最高ランクとなるのが、Aランクの魔物をソロで討伐できるSランク冒険者だ。
また、Bランクの魔物を討伐するには、Bランクの冒険者が4人必要というように、同ランクであっても魔物と冒険者で基準が異なっていたりする。
そして、ローラの言うドラゴンは、Aランク相当の魔物だ。
「ですが、あまり気にすることはありません。ドラゴンは縄張り意識の強い魔物です、こちらから侵入しなければ襲ってくることもないでしょう」
ローラはそう俺に言うと、島でのこれからを話し始める。
「ではこの島でわたくし達がすることを説明しますね。まず、わたくしはBランク、カナカリス様はC+ランクと考えましょう。そして魔の森にはC+ランクの魔物が生息しています。なのでカナカリス様には、C+ランクの魔物を倒せるようになることが当面の目標とさせていただきます」
「なるほど、でもすぐには始められないよな?」
「そうです」
ローラは頷いて続けた。
「C+ランクの魔物を倒すためには、魔物を知ること、戦いの訓練も必要です。魔の森に行くのはまだ先になると思います」
ローラは笑みを浮かべて答えると、次の場所に案内を始めた。
「今向かっているのは泉です」
「泉?」
「はい、ダレス泉。願いの泉とも呼ばれているところです」
俺はローラの案内でレイユ森の中を歩いていると、目の前には透き通った水が流れている大きな泉があった。
「すごいな」
ダレス泉に着いた俺は、思わず感嘆の声を上げた。
結界によって守られているレイユ森の中にあるダレス泉は神秘的な雰囲気を醸し出している。
「この泉に願い事をすると、叶うと言われているんです」
ローラはそう言うと、俺の方を向いて微笑む。
「カナカリス様、泉に入ってください。お祈りです」
「わかった」
俺は言われるがままに泉に足を浸ける。
「願い事はありますか?」
ローラがそう聞いてくる。
強くなりたい、頭に浮かんだのはそれだった。けど、それはあくまで過程、本当に俺のしたいことは、自分の命を、大切な人を、"俺が守れるようになる"ことだ。
「もう願ったよ」
俺はそう言うと、泉から出る。
「それは良かったです」
ローラは嬉しそうにそう言った。
この島には、200年前まで小さな村があった。
神託殿がなく巫女の来られないこの村では、代々賢者がダレス泉で神託を受け取っていたという。ダレス泉が願いの泉と呼ばれているのは、その名残だとも。
ただ70年前、代々跡を継いでいた賢者が病に伏し亡くなった。
島の結界を張っていた賢者が居なくなると、結界の強度は不安定になった。そして村から人々は去った。
そんな島を、カンダリスとカノエッタは、結界を張り直しまた住める環境へと戻した。
屋敷に戻る道中、ローラからそんなことを聞いた。
「では、明日から修行を始めましょう」
そうして、カディーラ島での修行が始まろうとしていた。
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