14.叫喚冥府
ここは、カルディア魔道王国とナイサリス連邦王国の山脈を挟んだ国境部分にある洞窟である。
「クライス、居るか?」
痕跡を残さない"
「ここにいます」
「カルディア魔道王国から出るぞ」
「賢者の子は諦めるの?本国からの任務は賢者の血筋を全て消すことよ?」
ヴァラは残る団員と共に撤退を提案したが、クライスはその言葉が気に食わなかったようで、反論する。
「だが、16か所のうち、成功したのはたった7か所だ」
「それも、クリファナの仕業?」
「そうなる。やつの並列存在、分身体の仕業だ」
「失敗した地域での生き残りは?」
「連絡がない、おそらくいないだろうな、クリファナに狙われて戻ってこれたのは俺らだけだ」
「だからって諦めるの?」
「ああ、クリファナは予想以上だ。今は無理だ」
「それじゃ、報酬はどうするのよ!本国に良いように使われて、団員の減少とクリファナの妨害を理由にしたところで、数年もしないうちにまた行かされるわ」
「だろうな」
「これが終われば自由になれるのよ……団長は、それでいいの?」
「俺は道具だ、その考えも変える気はない」
「昔からそこは変わらないのね」
「変えようと思うことが出来ない身体だからな」
「でも、時間が経てば賢者の血筋の生き残りは力をつけることになるわ。それに警戒も強くなるはずよ」
「そうだな、試しに
「リア=サラシア王国の秘密結社ね」
「ああ、あそこにはカルディアに恨みを持つ亜人が多い。
「でも本国は許可を出すかしら」
「本国の連中も言っていただろう。裏の存在さえバレなければ何をしても構わないと。俺らは"建前上"独立した組織だからな。
ヴァラはニヤリと笑いながらそう言い切った。
「助かるわ」
「ならばすぐに撤収だ。各地の街から団員、魔物を戻せ」
そうして、海岸都市カールから暗殺者の脅威は去ったのだった。
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