13.最強
「妹には、手を出さないでくれると嬉しいんだけど」
「クリファナ姉様」
一瞬だった。そこには、先ほどまで気配すらも感じなかった、美しい女性がいた。
「アハハ!姉妹愛ってやつかしら?ほんとムカつくわ」
2人の会話を遮るように、クライスは叫ぶ。
「クリス、その2人をお願いね。こいつはわたしが相手をするわ」
「はい、姉様」
そう言うとクリスは倒れているローラを魔法で回復させる。
「ローラ大丈夫か?」
「すみません、わたくしがついていながら」
「いや、俺の責任だ」
クリスやクリファナが来てくれなかったら、俺たちは死んでいただろう。
俺が弱いから。
「2人とも動ける?」
「はい、動けます」
「だったら、クリファナ姉様が戦っている間に街に戻りましょう」
クリスの提案に俺とローラは頷き、俺たちはそのまま元来た道を戻り、街へと走った。
*
「ハハ、最強の巫女と戦えるなんて、光栄ね"
クライスが手を掲げると、禍々しい気を纏った黒き剣が生成されていく。
「さあ!最高のショータイムの始まりよ!」
クライスはそう言うと、クリスに向けて剣を振るった。
「なかなかやるわね」
クリファナはクライスの魔法を全て捌きながら、笑顔でそう言う。
「"
クリファナから放たれる魔法の1つがクリスの四肢を縛る。さらに、別の魔法をクライスに向けて放つ。
クライスは、それをかろうじて防御したが、その衝撃で吹き飛ばされ、木の幹に打ち付けられる。
「あら?まだ生きてるなんて、しぶといわね」
「あなたこそ」
クリファナは先ほどの攻撃で仕留められなかったことに、少し驚く。今まで対峙してきた敵の中でもこのクライスという女は強かった。
あくまで、敵の中ではだが。
クリファナの放つ魔法が徐々にクライスを押していくが、クライスはそれをギリギリで耐え凌ぐ。
「分身体だからかしら、決め手に欠けるようね」
「あら、バレちゃった?」
「本体じゃないならその中途半端な強さも納得だわ」
「どちらにしても、あなた1人じゃ私には勝てないわよ?」
「ええ、勝てないかもしれないわね、でも——」
クライスは不敵に笑いそう言い放つ。
「あとは、俺がやる」
クライスがそう言うと同時に、クライスの背後に1人の男が現れる。
「あら、やっときたのね。待ちくたびれたわ、団長」
「文句を言う暇があるなら、さっさと逃げろ」
「それじゃ、時間稼ぎ頼んだわよ」
そう言うとクライスは姿を消した。
団長と呼ばれた男はクリファナの方に向き直り、剣を構える。
クリファナはその男の動きに反応してすぐに防御魔法を展開するが、遅かった。
「——っ!」
防御姿勢を取ったクリファナの両腕は、その剣によって両断された。
男はさらに追い打ちをかけるように魔法を放つ。
「仕方ないわね」
クリファナはそう言うと、各地に存在する分身体の数を減らし、自身を強化する。
「分身体を10体にまで絞ったのは久しぶりね」
「その強さで10分の1か、面白い」
男は再び剣を構え、クリファナに攻撃を仕掛ける。
「八連撃」
首、両肩、両手首、心臓、両足首、人の弱点、八か所を八連撃で襲う。
一つ一つの斬撃に少しの遅れもない、完全なる連撃である。
「凄いけど、私にはその刃は届かないわ」
平然と攻撃をかわす。だが、
「なんで、斬撃が当たってるの?」
確かにかわしたはずの攻撃が頬を掠る。
「中途半端な避け方では確実に首をはねるんだがな。貴様の結界はどれほどの強度を持っているんだ」
「教えるわけないでしょ」
男は連続で攻撃を繰り出す。その剣技は見事なものだったが、クリファナはそれ以上だった。
「もう、終わりにしましょう?」
クリファナがそう言うと、その体に魔力が集まり始める。
「十分稼いだか、ここらで引かせてもらおう"
男はすぐに撤退を始める。クリファナが魔法を発動させようとするのを見て、転移魔法を使ったて逃げたのだった。
「逃げるわよね」
クリファナは当然ねと納得し、その場を後にした。
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