7.神託殿
カルディア魔道王国では、
そして、それと同時に能力の優劣もまた決まると言っても過言ではない。酷い話だが、
ちなみに俺も"能力が低い"と判断される存在である。神託については分からないが、魔法属性が無能と呼ばれる無属性だからだ。
だが、あまり無能の実感はない。無属性ではあるが、【
それに、俺にはスキルによるアドバンテージがある。それがどいうことか説明しよう。
<鑑定Lv.20>(今は<鑑定Lv.30>)になったことで、ステータスの詳細の多くが分かるようになった。それによると"スキル"や"所有得点"というものを認識するためには、神器を使ったり<鑑定>を使ったりしてステータスを見るしかないらしい。
それに、ステータスを見るだけでは持っているスキルが分かるだけ。俺のように所有得点を用いてスキルを取得することが出来ないのだ。
スキルをするためには、【取得権限】【検索権限】という称号が必要になる。今思うとあのときの俺は、都合よく【賢者の子】【
そのあとは、それが本当なのか親含め都市の住人を鑑定して確かめた。結果、所有得点を使った痕跡のある人は誰も居なかった。
少なくとも、俺の見た限りでは。
そんなわけで、俺は無属性でありながら、スキルのおかげでかなり楽観視してきた。
ただそれでも、いざ
「カナカリス、緊張しているの?」
そんな不安を表に出していたのだろう。隣に座る母カノエッタが声をかけてきた。
「少しだけ」
「心配しないで。誰が何と言おうと私たちはあなたの味方よ」
カノエッタはそういうと俺の手を握る。
「はい、ありがとうございます。母さん」
俺が返事をすると、部屋がノックされる。
「入るぞ」
カンダリスだ。
「明日はいよいよ
「うん、いってらっしゃい父さん」
*
翌日、一年に一度行われる一大イベント
今思えば、この世界に来てから5年、長いようで短かいものだった。
この5年で俺には守りたいものができた。抗うべき運命を知った。
こんなところで立ち止まることは許されない。
*
神殿と言われるだけのことはある。
「カナカリス、私たちはこっちよ」
「はい、母さん」
どうやら、俺は
賢者の子だからだろうか。
会場に入ってから鑑定で中にいる人物を見てみると、確かに称号に書いてある肩書が特別な子が多くいた。
その中でも、【聖女の子】光属性の少女は別物だ。
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個体名 :アルマーニ・エリア
種族名 :人間
生命値 :87/87
魔力値 :241/241
神託 :バルドル「万物を愛し万物に愛される」
称号 :【聖女の子】【
魔法適正:光属性
魔法 :
スキル :<自然治癒Lv.2>
所有得点:400
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ただ、彼女含めここにいる親も子も
これだけ優秀な人達であっても使えないのなら、スキルによるアドバンテージは確実に俺が持っている。
まあ、たった1人、巫女である彼女を除いての話だが。
*
「カナカリス、あなたの番よ」
「はい、では行ってきます」
鑑定を繰り返していたら、どうやら俺の番が来たらしい。
恐る恐る巫女の前へと向かう。
「カナカリス・トロンです。よろしくお願いいたします」
「私はクリス・クリエよ。よろしくね、カナカリスくん」
丁寧にお辞儀をすると、巫女もお辞儀で返してくれた。
「では、始めましょうか」
そう言うと、巫女クリスは目を瞑る。
「主よ、我らに御心を教えたまえ、"
"
「この者カナカリス・トロンの神託、属性をお伝えします」
巫女クリスの言葉、大丈夫だ――覚悟は出来ている。
「神託”タナトス”、魔法適正”無属性”、以上です」
俺以外の人達はそうも行かないらしい。
「無能か」「賢者の子息です、才能はあるはずですが」「タナトス?聞いたことがないな」「引き抜きは保留でしょうか」
とまあ、色々だ。
それでも、予想に反して反応自体はそこまで攻撃的ではない。もっと陰口でも言われるかと思ったが、賢者の子ということもあるのかかなり好意的な意見が多い。
そんなことを思いながら、母カノエッタの元へと戻る。
「母さん、無事終わりました」
「よかったわ」
カノエッタに終了を伝える。だが、なんだこの違和感。
いつも優しい笑顔な母が焦っているように思えたのだ。
「母さん、何かありましたか?」
なぜ返事をくれない。なぜ目を合わせてくれない。
「カナカリス、ごめん」
カノエッタは俺を今まで感じたことが無いほど強く優しく抱きしめた。
「ローラを呼んだわ、もうすぐここに来ると思う」
意味が分からない。話についていけない。何を言っているんだ。
「ま、待ってください!意味が分かりません」
俺は母さんの抱擁を強引に振りほどくと、問いただした。
「ローラを呼んだわ、もうすぐここに来ると思う」
「なぜローラが出てくるのですか?いったい何を言って」
「ごめんねカナカリス。でも大丈夫、絶対守るから」
俺の瞳からは自然と涙が溢れ出る。なんで今なんだ。
これじゃまるで、別れの言葉みたいじゃないか。
「だからどういうことなんですか!まさか何かあったんですか?」
涙を滲ませながらカノエッタを問い詰めたときだった。
「カナカリス様、カノエッタ様!」
ローラが走って来た。そしてその様子は真剣そのもの、どこか焦燥感も感じさせる。――嫌な予感がする。
「ローラこの子を頼んだわ」
「はい、カノエッタ様」
何を言っている。
なんの話をしているんだ。
「カナカリス様、少し我慢してください」
「なにいって——」
その瞬間、首に衝撃が響いたかと思うと、俺の視界は暗転した。
まずい気絶する——。
そうして俺は、気を失った。
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