閑話 4歳の息子にサプライズされて父さん泣きそうです

 私はカンダリス・トロン、カルディア魔道王国の海岸都市カールに、妻カノエッタと息子カナカリスと住んでいる。

 そして今日は、5月10日、私の誕生日なのだが。


「父さん、おめでとうございます!」


 帰宅し扉を開けた途端、可愛い我が子が満面の笑みで飛び着いてきた。


「ありがとな、カナカリス」


 去年も同じことをされたので、既に対策済みだ。

 すかさず私も手を広げて抱き着く。


「父さん、実は僕からプレゼントがありまして」

 

「なんだと!」


 衝撃が走る。

 いま、カナカリスは何と言った。プレゼントだと、息子が私に、誕生日プレゼントを?


「これ!僕からのサプライズです」


 そう言うと小さな箱を渡してきた。これは完全に予想外だ。


「ほほう、どれどれ」


 手のひらサイズほどの小さな木箱を明けてみると、中には2つの指輪が入っていた。


「これは、魔法の指輪の類か?」

 

「はい、紅珠こうじゅの指輪と蒼珠そうじゅの指輪です、その父さんは火と水魔法が得意と聞いたので……」


 私の目頭は自然と熱くなり、鼻の奥が痛くなる。

 まだ4歳の息子が、私のちょっとした言葉を覚えて、プレゼントを買ってきてくれた。それだけで、私の涙腺は緩む。

 しかし、私は大人。ここで泣くわけにはいかないのだ。


「カナカリス」


 私は息子を抱き上げると、目の高さまで持ち上げた。


「ありがとうな」


 そう言うと、カナカリスは恥ずかしそうに目を細めた。


「あなた、ご飯できてるわよ」

 

「ああ、カナカリスと今行くよ」


 リビングの方から聞こえるカノエッタの声に返事をすると、カナカリスを抱えながら部屋へと向かった。

 賢者として、この子の親として、この幸せな日々を守り続けよう。


 私はそう心に誓った。

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