6.<鑑定Lv.10>
朝は魔法訓練、昼は休憩を挟みながら<鑑定>を使いLv.を上げる、夜は勉強。
そうして忙しい1年を過ごし、春——王国歴428年4月23日、俺は4回目の誕生日を迎えた。
前世であった誕生日パーティーのような華やかな行事こそないが、誕生日というのは俺が遠慮なく両親にお願いをできる日でもある。
1歳では勉強を、2歳では自室を、3歳では本を、そして今回お願いしたのはズバリ——外出だ。
家のものは一通り<鑑定>したので、家にはもうほとんど鑑定する対象が残っていない。それの影響で、<鑑定Lv.5>からLv.を上げることができなくなったのだ。
とくに、<鑑定Lv.10>になれば、今までは"触れたもの"の情報を視るだけだったのが、生命・非生命を問わず"視界"に入ったもの"の情報を見ることが出来るようになると言うのだ。レベル上げの意欲も上がるのは当然だ。
それと、<鑑定>で得られる情報を覚え有効活用するために、瞬時に見たものを記憶できるスキル<完全記憶>を残りの所有得点300を使って取得した。控えめに言って、このスキルはコスパ最強だ。
完全記憶といっても<完全記憶Lv.1>では、多少記憶力が良くなったくらいだ。それでも"思い出す"という作業が簡単になったし、このスキルは常に使っているようなものでLv.の上昇も4カ月ほどしか経っていないがら、大台の10に乗る勢いだ。
もし外出することができれば、単純に情報量が増える。それによって<鑑定>や<完全記憶>のLv.上昇がさらに加速するのは間違いない。
そんなわけで、俺は親同伴という条件で無事外出が許された。
*
「母さん、あのお店に寄ってもいい?」
「もう、カナカリスったら、走ったら危ないわよ」
外出を許されてから約2週間。
俺は毎日のように、ある店に寄っては鑑定を繰り返している。
「おじさん、また来たよ!」
「いらっしゃい、今日は親はいないのか?」
声をかけてきたのは、魔道具店の店主の男バイス。俺は毎日お世話になっている感謝を込めて"おじさん"と呼んでいる。最初はただの客と店主の関係だった俺達だが、2週間ほど店に通い続けた結果、今では立派な常連さんとなった。
「僕が走ってきたから、置いてきちゃったかも。そんなことより、おじさん昨日頼んだもの見せてよ!」
「ほらこれだ」
「ありがとうございます!」
そう言って彼は2つの指輪を見せた。金のリングに、それぞれ青い色と赤い色の宝石がはめられている。
俺はその指輪を受け取ると、鑑定を発動する。
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物体名:
詳細 :
効果 :火属性魔法の威力を上昇させます。
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物体名:
詳細 :
効果 :水属性魔法の威力を上昇させます。
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「おじさん、着けてみてもいい?」
「壊すんじゃないぞ?」
「大丈夫だよ」
軽口をたたきながら、指輪をはめてみる。うむ、悪くない。これなら、カンダリスも喜ぶに違いない。
カンダリスが喜ぶって一体どういうこと?と思っただろう。
実はスキルの訓練のためだけに、ここに通っていたわけではない。5月10日の今日は、父カンダリスの誕生日なのだ。
つまり、俺のしようしているのはサプライズ、そしてこの指輪は父さんへのプレゼントなのだ。
「あら、カナカリスそれにするの?」
声をかけてきたのは、ちょうど店に入ってきた母さんだった。
「うん、そのつもり。父さんは火と水魔法をよく使うでしょ?だから、この2つがピッタリだと思って」
もちろん、4歳児の俺に金はないので、母カノエッタが買うことになっている。
「ふふ、それはいい考えね。バイスさんこれいくらですか?」
母は財布から金貨を数枚取り出しバイスに見せる。
「その指輪2つで金貨4枚だ」
「はいどうぞ」
「毎度あり!」
カノエッタは料金を払うと俺の方を向いた。
「もう家に帰る?それともどこか行く?」
<鑑定>のLv.がもう少しで10になる。ここは別の店に行ってみるか。
「それなら、少し行ってみたいところがあります」
「ならそこに行きましょう」
*
そのあと行ったのは、図書館だ。
理由は、本を片っ端から鑑定するためだ。前々から試してみたいと思っていたのだが、鑑定しても本の内容までは分からなかったり、記憶しきれなかったり、罪悪感があったりして今までやってこなかった。
しかし、<鑑定Lv.9><完全記憶Lv.13>になった今、本はの内容も鑑定するだけで初めの20ページほど読めるようになったし、その内容を見るだけ見て記憶するという動きができるようになった。数冊それを繰り返していると、<鑑定>はLv.10になった。<鑑定Lv.10>になったことで、1つ1つ本を触る必要も無くなり、本の内容も全て読めるようになった。
最終的に効率も上がったスキルのレベル上げは、<鑑定Lv.13><完全記憶Lv.19>という結果になった。
一応言っておくと、本の内容を覚えたからと言っても、それを活用できるかは疑問が残る。教科書を丸暗記すれば試験に合格できるが、社会で通用するかは別というように全く使えない可能性もある。
ただ、何はともあれ目標のLv.10を超えた。
「楽しかったです、母さん」
「ならよかったわ」
楽しかった、満足した。それがすべてである。
さて、あとは家に帰って父さんにサプライズをすることとしよう。
ちなみに、家に帰るまでの道のりでも鑑定はめちゃくちゃ使った。
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