5.素質というもの
「お初にお目にかかります、カナカリス様、わたくしはローラ・バント。ローラとお呼びください」
「初めまして、カナカリス・トロンです」
強制連行されパーティーを実施した次の日、家にある人が来ていた。
名をローラ・バント。以前、父から聞かされていた離島の別荘を管理している使用人で、金色の髪を後ろにまとめ、眼鏡をかけた女性である。
どうやら、カンダリスとカノエッタに呼ばれ急いで来たらしい。
「突然呼び出して、すまなかったな。それにしても、一日足らずで来るとは思っていなかったよ」
「いえいえ、主であるカンダリス様のお願いとあれば、転移魔方陣を使ってでも馳せ参じるのが使用人としての役目、当然でございます。それで、わたくしを呼んだのは……」
「ああ、察しがついていると思うのだが、私の息子カナカリスを"視て"ほしくてな」
「お安い御用です」
"視る"というのはおそらく、俺の持っている称号【
昨日、リビングへ連行されたあと、再度鑑定を使い称号について調べたのだが、【
「早速ではあるのですが、カナカリス様、わたくしの<
ローラはそう言ってしゃがみ込み、俺と目線を合わせた。
父カンダリスがお願いしたのだ、断る理由もない。
「大丈夫です」
「ありがとうございます。では、いきますよ?」
そう言うと、ローラの青い瞳が緑色に光り出した。
「なるほど、どうやら【
「やはりそうだったか、それにしても2つ持ちとは……」
おそらく<
「父さん、その
「ああ、そうだな。カナカリスには言ってなかったな」
カンダリスはそう言うと、説明を始めた。
「
「じゃあ、僕の持つ
「2つだ。言っておくが、凄いことだぞ。
「そうだったんですね」
2つ持ちというのはかなり珍しい存在のようだ。まあ、冷静に考えてみればそうか。
3歳で魔法をこんなに扱える子供がポンポン湧いていたら、カンダリスとカノエッタも、あそこまで俺をもてはやすことが無かっただろうし。となれば、俺を殺した
「カナカリス様、あなたは神に愛されし者です。その才能をどうかお忘れなく、ですがどうか慢心せず、その力を正しいことにお使いください」
考え込んでいた俺の目を見てローラはそう告げた。
「分かりました、肝に銘じておきます」
ローラは笑顔でうなずくと立ち上がり、玄関の方へと歩みを進めた。
「それでは、わたくしはここで失礼させていただきます」
そう言うと彼女は魔方陣の中へと消えていった。
*
ローラが帰った後、俺は自室のベッドで横になった。
「力を正しいことにお使いください、か」
俺がこの力をどう使うことになるのか。
唯一決めているのは、みんなで生きるため、幸せに過ごすため。
それも結局は俺の勝手な都合で、願いだ。
「少し独善的すぎるかな」
自嘲気味に笑うと、俺は眠りについた。
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