4.<鑑定>を手に入れた
"
魔法訓練の一環として、新たに空気中にある魔力を感知・操作する練習をしていたときだった。
魔法訓練のために結界などが貼られているこの部屋の真上、屋根裏から異質な魔力を感じ取った。
「このあたりか?」
風属性初級魔法"
「暗いな、"
早速覚えた無詠唱魔法で、光属性初級魔法"
これが、魔力の
「よいしょっと」
屋根裏からその箱を運び出すと、慎重に床に置く。
見た目は木製の箱で、かなり埃が被っている。
「さて、開けてみるか」
この箱から感じる不思議な魔力の正体を見ようと俺は箱に手を伸ばし、ゆっくりとその蓋を開けた。
すると、中には水晶が入っていた。
「これは一体……」
恐る恐るその水晶を手に取ると、頭の中に声が響いた。
『未確認個体からの要請を確認。ステータス作成中、個体名:カナカリス・トロン検索中、ステータスの開示を許可します。ステータスの開示を開始します』
その瞬間だった。まさにゲームでよく見た画面が現れた。
紛れもないステータス画面だ。
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個体名 :カナカリス・トロン
種族名 :人間
生命値 :60/60
魔力値 :1402/1450
神託 :タナトス「-表示不可-」
称号 :【賢者の子】【
魔法適正:無属性
魔法 :
スキル :なし
所有得点:1300
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馬鹿げている。これが、俺のステータスだと?
初めに感じたのは、怒りだった。これではまるで、俺がゲーム中にいるプレイヤー、NPC、誰かに管理されている存在みたいじゃないか、と。
だが、憤りを感じたところで変わるわけじゃない。今は、このステータスを有効活用することを考えよう。
そのためには、まずこれを理解しなければ。
俺は、ゲームの知識を生かし、このステータスについて調べることにした。
ステータス表示をよく見てみると、(詳細表示)というのを見つけた。
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所有得点(詳細表示)
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詳細表示?
疑問に思いながらも手掛かりになるかもしれないと、この中で一番検討の付かない所有得点について「詳細表示」と声に出し唱えてみる。
『個体名:カナカリス・トロンの現在の権限で確認可能な範囲で詳細を表示します』
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所有得点(詳細)
消費することで、スキルを取得できる得点です。消費することで、スキルLv.を上昇させる得点です。称号を獲得した際に所有得点を獲得できます。
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「他に得点の獲得方法はあるのか?」
『個体名:カナカリス・トロンの現在の権限で確認可能な範囲は以上です』
返ってきたのは、それだけだった。仕方ない気になることはまだある。
「スキルの詳細も表示してくれ」
『個体名:カナカリス・トロンの現在の権限で確認可能な範囲で詳細を表示します』
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スキル(詳細)
魔力値を使用せずに使用できる特殊技能です。スキルの使用法はスキル毎に異なり、多岐にわたります。
取得方法:所有得点を消費して取得する得点使用法、技能を鍛え技を身に着けることで取得する修練法です。
Lv.上昇方法:一部のスキルには、Lv.があります。Lv.を上昇させるには、所有得点を消費するかスキルを積極的に使用する必要があります。
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ふむ、今ある得点は1300だけ。多いのか少ないのか分からないが、この"得点使用法"を試してみるか。
「得点使用法を実行したい」
『個体名:カナカリス・トロンの現在の所有得点は1300です。どのようなスキルをお探しですか?』
ほう、検索というやつか。
てっきり、候補が勝手に上がってくるのかと思っていたが、これなら好都合だ。
「ステータスをいつでも見れるスキルが欲しい。できれば、その権限を上げることができるスキル」
『要請を確認。受諾します。検索中。現在の権限で確認可能な範囲で、ステータス表示と-表示不可-権限を持つスキル一覧を開示します』
数秒後、俺の脳内に『スキル一覧』なるものが浮かび上がった。
俺としては条件を大きく絞ったとは考えていなかったのだが、出てきた候補はたったの3つだった。
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<鑑定> :必要所有得点1000
<-表示不可->:-表示不可- -選択不可-
<-表示不可->:-表示不可- -選択不可-
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そして、なにより、表示不可となっているスキルは選べない。つまり選択肢は1つだけ。
「所有得点1000を消費して<鑑定>を取得する」
『要請を確認。受諾します。個体名:カナカリス・トロンに<鑑定Lv.1>が付与されます』
次の瞬間、俺の視界は以前よりも鮮明になった気がする。それに、詳細を見ずとも、なんとなくだが使い方が分かる。
どうやら、<鑑定Lv.1>は、自分のステータスを表示すること、触れたモノを鑑定しLvに応じた情報を確認できるようになるらしい。
さて、そうと決まれば、やることは1つ。
「"鑑定"」
自分を鑑定することだ。
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神託 :タナトス「-表示不可-」
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スキル :<鑑定Lv.1>
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まず、スキル欄に<鑑定Lv.1>が追加された。
ここまでは問題ない。称号の【
タナトスと言えば、現世で聞いたことのある神だ。別名はたしか——
「カナカリスなにしてるんだ?」
夢中になっていて、この部屋にカンダリスが入ってきたことに気が付かなかった。
「父さん、実は屋根裏にあったこの水晶を——」
そう言って俺は手に持っている水晶を見せる。
「神託水晶か」
「知っているんですか?」
「当たり前だろ? 父さんを何だと思ってるんだ」
たしかに、この家にあったのだから知らないほうがおかしいか。
「この水晶は、神からの神託を見ることができるものなんだが、まさか……カナカリス、この水晶を使ったみたいだが、何か見えたのか?」
「はい」
ステータスのことだろうと思い、軽く返事をした瞬間カンダリスは目を見開いた。
「自慢の息子だとは思っていたが、まさか神器の才能もあったとは……早くカノエッタに知らせよう、今日はパーティーだ」
そう言ってカンダリスは俺を抱き上げる。
「ちょっと父さん落ち着いて」
「大丈夫だ落ち着いている」
いや、全然落ち着いてない!と心の中で呟くが、この体ではどうしようもできない。
俺はそのままリビングへと連行されたのだった。
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