東西分割

「では、東の海、ツララ洋及び周辺海域はライに任せる。そして、西の海、サラバ洋及び周辺海域はアーケロンに任せる。・・・これはオーリス様直々の決定だ。・・・良いな。」


「オーリス様が決定したならわたくしが断る訳ないでしょう。」


「・・・・・・命を勝手に助けられたアタシが断れる訳ないでしょう。」


 この二匹は一億年前殺し合った仲だが、今は親友として知られる程の仲になっていた。

 あの戦争後にオーリスのある術によって蘇生並の治癒をされた二匹はそのまま二匹まとめて凍らされた。

 まじでまとめられて凍らされたせいで、凍っているのに意思の交換ができた。

 つまり、メールみたいな話し合いが一億年続いていたのである。

 そりゃあ、仲良くもなるというものである。


 この二匹が任されたのは北半球を東西に割って出来る海域である。

 ボスの座に座っていた者の大半が群れとオーリスの腹に収まったので、誰も統治するものがいない空白地帯がたくさん出来ていた。

 オーリスはオックートに自分達が治めるにしては大きすぎて大変だと言われたので、そこで北も南も東西でさらに二つに割って統治させようというものである。そんな訳でオーリスに絶対忠誠かつ力を持っているものという事でこの二匹が決定された。

 一億年のライの熱弁と布教により、ライ並の忠誠と信仰をオーリスに向けるようになったアーケロンを群れの皆んなは哀れに思って、一億年で考えた意味のあるのか分からない儀式をする二匹を遠巻きに見ていた。

 ノーアイはこの二匹に任せて大丈夫なのか、不安だった。

 海域全域がオーリス教に染まるのではないのかと不安な声はノーアイ以外に上がっていたが、今、空いている者で任せられるのはこの二匹しかいないのである。


「他に連れて行く人選はお前達に任せると言う事だ。ヤヨイとか動かせない者もいるからな。」


「大丈夫よ。・・・既に何匹か、決めているわ。それでオーリス様はどちらに住まわられるの?」


 北半球を二つに分けると言う事は東西どちらかにオーリスに住むというものである。

 オーリスを信仰対象とする二匹にとってそれは何よりも重大な事柄だった。


「ボスならどちらにも住まない。お前達が任せる海に、極北大陸の周辺は任せていない。本当なら真っ二つか、どちらかに任せる予定だったが、絶対ボスがどちらに住むかでモメると言う事で南半球の緩衝地帯みたいに空白地帯にすることになった。」


「そうなのですね。・・・まぁ、妥当ですわね。では、あの場所は聖域という事にしましょう。」


「聖域・・・邪域の間違えじゃ・・・」


「何か言いましたか?アーケ。」


「いえ、何も。」


 海域を任された二匹はハッキリっているが、ノーアイは本当なら自分が治めたかったな。と思っていた。

 一億年経って更なる高みへと登ったオーリスは他者に今まで以上に影響を与える存在へと進化していた。

 そんなオーリスを好き勝手に移動させてしまったら、今度こそこの星の生命は絶滅すると皆が確信していた。

 

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