決戦!因縁の先へ

「ようやく、来たか・・・遅かったな。」


 ・・・今後の話をしていたんだ。安心しろ。この戦場には俺とお前の二人だけだ。存分に戦闘食事を楽しもうじゃないか。


 此処は東部の海サーマル海。

 アーゲが属するサーマルクスの群れが防衛に当たっていたが、ノーアイ自らがいち早く伝来して防衛ラインを引き下げたのである。

 それはこの海に攻めてくるのは老王スコーピオン。

 奴とオーリスとの浅くも深い因縁をノーアイは知っている為、オーリス自ら出向く事が分かっていた。

 味方を巻き添えにして無駄に殺す訳にもいかないので、防衛ラインを引き下げる決断をした。

 巻き添え死が嫌なのは向こうも同じらしくスコーピオンの子供たちが他の戦場で目撃されていたが、この海域でスコーピオン一匹しか発見されていなかった。

 スコーピオンもオーリスと戦えばその周辺にいる生物は生きてられない事を分かっていたのだ。

 だから、開けた場所でずっと待っていた。


「あの爺さんの話だな。・・・もし、僕が負けた時、子供達のことを宜しく頼む。」


 ・・・嫌に弱気だなぁ。戦う前から負けた時の事なんて、母性にでも目覚めたか?


「そうかもしれないな・・・」


 ・・・・・・まぁ、良い。お前以上の甲殻類の肉なんてないだろうからな。約束してやる。俺が面倒見ておいてやるよ。・・・だから、悔いなく死んでおけ!!


「僕も負けるつもりはない!」


 貴方は尾をスコーピオンの方へ一瞬にして伸ばして串刺しにしようとしたが、それをスコーピオンも尾の針で対抗した。


 世界でも一二を争う刺突がぶつかった事で周辺の地形は崩壊した。一撃ぶつかっただけでこの威力である。

 いかにこの二匹が規格外だと理解させられるものだった。


「くっ!やっぱり、あの時とは次元が違う力を手にしているね。僕もかなり強くなったと思ってたんだけどなぁ。」


 ・・・それはこっちも同じだ。さっきの刺突で肉をえぐろうと思っていたが、まさか互角だとはな。


「今度はこっちの番!シザーハンズ!!」


 ・・・尾太刀居合おたちあい


 邪力で固めたハサミの形をした不可視の一撃を貴方は何となく違和感のある空間へ、尾に邪力を纏わせて鋭さを上げた神速の斬撃をぶちかました。

 真剣白刃取りのように両ハサミで掴んだ筈なのに、圧倒的な鋭さを持つ斬撃はハサミに亀裂が生まれ始めていました。

 それにびっくりしたスコーピオンはさらにハサミを追加して無理矢理壊した。


「まさか、シザーハンズの力でも止められないなんてね。凄い鋭さと強度だね。」


 ・・・そっちのハサミは意外と脆いな。そんなのではもう使い物にはならないだろう。


「アハハハ!!安心してよ。・・・もう治った。」


 シザーハンズを重ねても完全には壊す事が出来なかったスコーピオンはハサミを犠牲にする事で肉体を守る事は出来た。

 貴方はそんなボロボロになったハサミを見て、相手の限界が見えたようでガッカリしたが、そんな貴方を一笑して瞬間脱皮したスコーピオンのハサミは元通りになっていた。

 それどころかより硬く鋭くなったようにすら見えた。


 ・・・なるほど、一撃で殺さないとお前はより固く、より強くなって事か。


「ふふふ、脱皮した瞬間を狙おうとしても無駄だよ。そんな弱点、速攻で克服したからね。」


 最初からそんな事は狙ってねぇよ。ただ、歴戦で鍛えられたその肉体の強度を試したくなっただけだ!!大尾太刀おおたち


「・・・・・・これは凄いね。」


 天から海まで割ってみせる程巨大な斬撃がスコーピオンを襲う。

 あまりの大きさにドン引きしたスコーピオンだったが、この大きさの斬撃を打ち消す事は出来ないとすぐに判断した。

 邪力で最大硬度まで強化した殻で受ける事にしたが、じわじわと削れては亀裂が生まれるたびに脱皮を繰り返す事で強度を更に上げていった。


「はぁはぁはぁ、死ぬかと思った。」


 ・・・耐えれたんだ。流石に殺せたと思ったんだけどな。


「僕もボスとして意地があるからね!まだまだ死なないよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る