進化促進

「・・・・・・シャークは、」


「死んではおらん。イタズラに若者を殺す趣味は持っておらん。腹も減っておらんしな。・・・何より貴様らハイシャークは美味くない。」


「そうか・・・なら、娘の敵討ちといこうか!!」


 周辺の敵影を全て喰らいつくしたプリコペ率いるハイシャークの群れは警戒を解かず、此方に近づいてきている大ボスの気配を感じ取っていた。

 そこに現れたのは瀕死のシャークを触手で絡ませて連れてきたオックートだった。

 肌がボロボロになり、縦鋸はへし折れ、ヒレも溶けたようにドロドロになっているシャークを見て、頭に血が登りそうになるのを快楽物質を出す事で心を落ち着かせたプリコペは冷静に話をした。

 オックートの言うとおり、まだ息があるシャークを見て、少し安堵したが、既に群れ全員がオックートの間合いに入っている状態である為、安堵に浸るなんて出来るはずがなかった。

 最初からタテノコモードに切り替わったプリコペは臨戦態勢を維持した。

 他の者たちはシャークを救出して、離脱を優先する為、プリコペの直線上に入らないようにしながら、オックートを囲んだ。


「はぁ・・・此奴にも言ったが、ワシの用はお主らのボスじゃ。さっさとそこをどいて、奥に通させてくれんか?」


「バカか、それで、はいそうですか。と通す奴なんてこの群れには存在しねぇよ!!」


「そうじゃろうな。なら・・・お主らもこの若者同様に無理矢理通らせてもらうとするかの。」


 一触即発の状態になったオックートとプリコぺだったが、プリコペがタテノコを振り切ろうとした瞬間、それはぬるりとやって来た。


 いいよ。俺が話すから。お前達は他の場所の手助けに行っておけ。


「!・・・オーリス様!?何故、この場に?」


 なんか、厄介そうな気配がしたから。先にこっちに来た。過去を清算するのに横槍を入れられたくないからね。


 プリコペの後ろにいつの間にかオーリスがいた。

 周囲の警戒をこの場にいる誰もが怠っていなかったのに、この場にいる誰一匹としていなかった。

 それくらい自然と溶け合っていたオーリスは認識した今でも意識を少しでも晒したオーリスの事を認識出来ないと思える程の気配隠蔽を行っていた。


「・・・お主がボスか。想像以上に異次元じゃのう。」


 そんな事はどうでも良い。お前も充分化け物だろう。そこら辺からお前の気配がしまくるぞ。


「ほぅ、一発でワシの触手に気がついたのはお主が初めてじゃ。」


 オックートは触手を限りなく0にまで細くする事が可能でした。

 その細い触手一本、一本に脳に変わる偽脳と言われる本体から離れた触手を操り、そこで感覚を記憶する機能のある小さい臓器があった。

 偽脳の記憶は離れた触手が本体に再び接続する事で本体がその記憶を読み込む事が出来るのであった。

 それを使って周辺の情報収集をしていたが、あくまでそれは触覚の情報だけであり、他の感覚情報は得られないのです。

 だから、態々、オックート自らここまで出てきたのであった。


 それで何の用かな?お前は俺を殺す為ではないだろう。


「あぁ、生物の栄枯盛衰など幾らでも見てきた。今回の原因がお主というだけじゃ。それを態々咎めるつもりはないのう。・・・ただ、一つ問題があってのう。お主にもその問題解決のために一つ力を貸してほしいのじゃ。」


 ・・・・・・あぁ、そう言う事ね。その問題の解決方法とやらを聞こうじゃないか。


 オックートはオーリスを含めたボス達に自分が考えた解決策を手伝ってもらおうと前々から思っていた所に、この戦争である。

 丁度良いと思い、世界の大半のボス級の生物が集まるこの戦争を利用しようと思いついたのである。

 その事を何となく読み取ったオーリスは話だけでも聞いてみようと思ったのである。


「他のボス達と一緒にワシと一億年くらい寝ないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る