魚雷

「くっ!はぇぇぇ!!」


「おや、もう終わりですか?お嬢ちゃん。」


 アーケロン対ライの戦いは終始ライ優勢で進んでいました。ライの速さは鍛えに鍛えられ既に雷と同等になっていました。

 アーケロンは来ると思った瞬間には既に吹き飛ばされている状態が続き、圧倒的な硬さを誇る甲羅もヒビが入りボロボロになっていました。

 ライは攻撃も、速さも圧倒的に優っているので、アーケロンの攻撃を余裕で対処する事ができていました。

 負けている防御力でも僅差で負けているだけで、手数で対処できるものでした。


「それにしても、本当に硬くなりましたね。私の予想ではすでに粉々になっている筈だったのに・・・」


「うるせぇよ。この俺が進化してない訳ねぇだろう!テメェを超えるために俺は誰よりも努力して来たんだよ!!だぁぁぁぁ!!亀雷きらい!!」


「相変わらず貴方達は体外に邪力を留めるのも得意ですね。・・・ほぅ、中々の威力ですね。」


 アーケロンは自身の周辺に邪力を加工、変化させた爆弾をばら撒きました。

 これが長年、考えたライの速度に対する対策でした。

 巻き添えで死んでいった魚の骨を亀雷に投げつけると掠っただけで反応して大爆発を起こしました。凄まじい威力でしたが、こうやってアーケロンの攻撃を避けながら除去も可能だと思ったライは邪力の無駄遣いだなと思いました。


「ごはっ!・・・・・・分かっているさ、この技の欠点も、そして、それを超えるメリットをなぁ!」


「?・・・なにをっ!?・・・・・・そういう事ですか。自滅覚悟という訳ですね。」


「我慢比べだぁ!さぁ、まだまだあるぞ!!この数!お前は耐え切れるか?!!」


「まず!」


 ライは器用に亀雷を避けながらアーケロンに突撃を加えました。

 でも、アーケロンはそんな事は分かっていました。

 亀雷の誘爆を避ける為の最低空間を開けるとその間をライが速度を落とさずに突撃してくる事も、直撃しても然程のダメージを与える事は出来ない事も分かった上でアーケロンは亀雷を使いました。

 それはこれの開発した時に気がついた副産物が目的だったからです。


 ライはアーケロンが何を言っているのか?一瞬、分かりませんでしたが、その瞬間に襲って来た衝撃からアーケロンが何を狙っているのか理解しました。

 アーケロンが狙っていたのは直撃による火力による外部的傷害ではなく、爆発の衝撃による内部破壊でした。

 外部から壊すのが難しいなら、内部から無差別に壊すのが最適だと判断したのでした。

 だから、己の身すら顧みない自爆攻撃でした。


 アーケロンは更に亀雷を吐き出して、次々に誘爆すら考えず、全ての亀雷を爆発させました。


 その衝撃は満腹に眠っていた化け物すら起きるきっかけになるほどの衝撃が離れたこの海にも届いていました。


「ライ・・・まぁ、アイツが死ぬわけないか。死にそうになってもアレを使えば良いか・・・・・・」


「いや!寝ないでください!!ちょっと!オーリス様!オーーリス様ーー!!!」

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