陸進出!!!

 貴方は今、新たな感覚を味わっています。

 身体にのしかかる力は貴方を地面へ縛り付けていました。

 呼吸法も従来のものと一新しないといけないものが貴方には

 いつの間にかあった内臓は呼吸するたびに伸縮して貴方の身体中に酸素を配っていました。

 最初は苦しそうになった貴方ですが、数回呼吸するだけで肺呼吸に慣れて自然と呼吸をすることが可能になりました。


 これが・・・陸か。雨を全身に感じるのも新しい感覚だな。海とは違うさっぱり感が味わえるのも陸ならではの快感だな。


 食を食い尽くした貴方は外出して、陸というものを感じようとしました。

 海の中でしか浴びたことのない雨を全身に浴びれるという感覚は初めてだった貴方の脳は新たな刺激に興奮していました。

 身体をくねらせることで陸上での歩行を可能にしている貴方はもう秋刀魚ではなく蛇だなと前世の知識と照らし合わせた姿に苦笑していました。

 北部の極地を拠点にしている貴方の縄張りの陸は一面を一年中雪で覆われている為、銀世界となっている陸は想像以上の綺麗さに感動してました。

 景色に感動するほどの感性が自分にもあったんだなと自分の事ながららしくないと不思議に思った。


「姿を変わらずに陸への適応、流石です、ボス。」


 ・・・・・・お前達がどうやって陸の縄張り争いが出来ているのか、不思議だったが、陸と海で身体を変化させているのか・・・器用だな。


 ノーアイの話しからノーアイ自身も陸での戦闘に参加している事を把握していた貴方でしたが、ノーアイのヒレや呼吸法では陸に進出出来ない、もし、出来たとしても陸での活動可能時間と移動スピードではただの餌でしかないだろうと思っていたのです。

 ノーアイ達は陸に上がると同時に肉体が変化していき、陸に適応した姿へ変化していました。

 アーゲ似の鱗やライ似のヒレなど陸に適応している種と酷似した部位の他、尾ビレなどは縦から横向きになったりと陸の移動の邪魔にならないように変化していました。


 ・・・・・・木に登るのも問題ないな。・・・甘いな。・・・美味いな。やっぱり採れたてが一番美味い!


 木に巻きつく形で登っていく貴方はその間、樹液や果物はやはり採れたてが格別に美味いと堪能していました。


 これも陸に上がっても昔と変わらず美味いな。小さくなった事で身も凝縮してプリっと感が増している。


 貴方が陸を進んでいると昔はよく見たサソリモドキがいました。

 ただその姿は昔に比べて圧倒的に小さくなって一口サイズになっていました。

 それでも味は落ちてないどころか、小さくなると同時に味も食感も凝縮されて旨さが上がってました。


 ・・・・・・・・・そう言えば、アイツは生きているかな?・・・生きていたらどう食べようかな。


 貴方は久しぶりのサソリモドキの味につい暴食してしまい、ここら辺のサソリモドキを食い尽くして満足した。

 そんな時、まだ弱く己の力を制御出来てなかった自分と死闘をしたあのサソリモドキは生きているかな?とふと疑問に思いました。

 明らかな特殊個体だった為、今も生きているならより強く、そして美味しくなっていると良いなと願望と食欲をぶつけてました。


 遥か遠くの甲殻類がそんな気配を察知したのか、異常な寒気を感じて身振りしていたそうな。

 この二匹がかち合うのはまだまだ先のお話である。

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