ワニワニワーニ!!
「・・・うん?ここは・・・?」
「あ?気がついたのね。治泉よ。腹に穴が空いた貴方を他の子達が連れていたのよ。覚えてない?」
「ドクター・・・私、確か、ノーアイさんに連れられてこの群れのトップに会いに行ったはず・・・」
「そのトップに味見されたのよ。」
アーゲが目覚めるとそこは温かく身体の隅々から癒される液体に使ってました。
そんな意識がまだ完全に覚醒していないアーゲの疑問に答えたのは白く小さい魚でした。
ドクターと呼ばれたその魚は此処が治泉だと答えた。
治泉とは地上に沸いた暖かい地下水にチアイ達が見つけた薬草とかをふんだんに混ぜ込むことで浸かった者の自然治癒力を上げてくれる代物へと進化した泉、つまり、温泉でした。
そこに棲むドクターと呼ばれる魚はノーアイ達、古参の一匹であり、メナシウナギが持っていた粘液が進化し続けた種である。
その能力は自身の粘液を相手に塗ることによって相手の傷や病を癒す効果を持っている。
その事から昔から群れの治療はドクターが中心となって発展させてきた。
今はこの治泉を活動場所として生活していました。
「あぁ!思い出した!!・・・クソッ!今度は油断しねぇ。」
「思い出したようね。でも、リベンジなんてバカなことは考えないことね。今度は味見じゃすまないわよ。・・・アーゲのそういう負けず嫌いな所、私は好きだけど、勝負を売る相手は見極めることね。・・・うん?」
オーリスへのリベンジを燃やすアーゲを見たドクターはため息混じりに忠告した。
今回は味見だから一命を失わずにすんだが、今度は死を自覚することもなく喰われるのは明白だったからである。
そうしていると海の方から走って来ているものが見えて来ました。
「アーゲ!!目が覚めたのね!!」
「心配したんだぞ!!」
「もう・・・いいの?」
この三匹はアーゲと一緒にオーリスへ紹介するはずだった。新参者達だった。
皆、アーゲを凄く心配していたのか、海から目覚めた気配を感じて治泉がある陸へ上がって来たのであった。
この千年で続々と南から陸上に適応した種が進出して来ました。その南の生物に対抗するように北の海からも陸への適応を開始し、縄張り争いが過熱したのである。
そんな群雄割拠な状況であった北の大陸の争いを喰らいつくしたのが、オーリスが眠っていた群れだった。
アーゲ達群れの新参者は南からやって来た種の子孫がオーリスの群れの軍門に下った者達だった。
その中でも若く将来有望な者達を早めにオーリスに紹介しようとしたのが先の食事だった。
「心配かけたな。サラ、スーオブ、シャーク。」
「そんな事ないわよ・・・それにしてもアーゲをいきなり攻撃するなんて・・・」
「あぁ、ノーアイさん達が慕う方だから、優しいのかと思っていたが、そんなことなかったな。」
「・・・・・・・・それは・・・違う。あの方は・・・アーゲを殺す気は・・・・・なかった。」
ドクターは新参者達の話を泉の中に沈んでいる他の患者の世話をしながら聞いていたが、やっぱりオーリスへの印象は最悪かと思ったが、シャークと呼ばれたこの中で一番体躯があるが、一番臆病そうな魚が否定した。
シャークはオーリスから自分と同じ欲望を感じていた。
自分は産まれながら抑え続けてないと溺れて取り返しがつかないそれをオーリスは思うがままに操り己がものにしている事に気がつきました。
だから、アーゲを喰らいつくさなかったのはあの方なりの優しさだと思ったのでした。
「・・・そうね、私があった当時のオーリス様ならアーゲだけじゃなく、その場にいた者達、全員命が危なかったわよ。」
「・・・・・・そんな魚がトップで良いんですか?!」
昔を思い浮かべて懐かしさと圧倒的な恐怖を思い出したドクターの身体は震えていました。
そんな恐怖に震えるドクターを見てオーリスがトップで良いのか、スーオブは疑った。
「良いのよ、オーリス様はあれで。そんなお方だから私達は此処まで付いてきたのだから。」
ドクターの顔には通常の忠誠心より深く暗い気味が悪い忠誠心が溢れ出していました。
そんな今まで見たことのないドクターを見た患者も含めた皆んなは形容しようがない感情に狂いそうになって苦しみ出しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます