多色の果物

 うまぁぁぁ!!甘いなっ!!!ユリの花の蜜以上の糖度にシャキシャキとした食感!何よりこの甘い味は海では味わえない!!!陸の!大地の息吹を感じる!!!


「喜んでいただいて何よりです。ボスが終わらせた寒冷期が終わり、暖かくなった事によって陸は緑豊かになりました。それでもまだまだここら辺は寒く、冷たい大地が広がっていますので、この実や他のものも、私達が此処より温暖な地域で見つけたものです。」


 とても美味いよ。・・・・・・この葉も程よい苦味と渋みがより果実の甘さを引き立てて果実の長所を引き出している。


 それは皿代わりの葉っぱです。

 なんて事を美味しそうにモソモソと葉っぱを食べているオーリスの事を誰もツッコむなんて出来ませんでした。


「ノーアイさん、ノーアイさん・・・」


「なんだ?今、ボスの食事中だ。静かにしてろ。」


 ボスへの配膳や話し相手は古参の貴方の見知った者達で固めていましたが、ノーアイの後ろには貴方の見たことのない新参者達がいました。

 新参者達は聞いていた貴方の姿とは違っている事に困惑して従者筆頭(いつの間にかなっていた)のノーアイにコソッと聞こうとしたが、静かにしろといつも冷静なノーアイには見られない少し焦っているノーアイに驚きながらノーアイの指示に従い黙っておく事にしました。

 美味そうだなぁ・・・と果実を食べたからか、肉も食べたくなってきていた貴方の捕食者の視線に新参者達は蛇に睨まれたカエルの様に怯えて固まってしまい、恐怖で過呼吸になっていました。


「ストップです!オーリス様!!・・・あの者たちは新たな仲間でございます!!お肉なら他に用意しております。只今、調理中ですので、少々お待ちください・・・」


 ・・・・・・落ち着きなよ。仲間を食べるほど空腹じゃないよ。・・・ただ、あまり俺の食事中に騒ぐと・・・思わず食べてしまうから気をつけてね。


 オーリスが本気で新参者達を捕食しようとしている事を感じたチアイはノーアイの前に急いで割り込んで緊張しながらオーリスを説得しました。

 くぅくぅと鳴る空腹の音を聞くたびに己が喰われるのではないかもしれないと昔の恐怖が蘇ってきたチアイのは身体の震えを無理矢理抑えながら耐えていました。


 貴方はそんな怯え出しているチアイを落ち着けようと優しい声で宥めますが、自分の食欲を刺激する声を出している新参者達に注意しました。

 貴方は腹の中で叫ぶ獲物の断末魔を聞いてきたので、食事中に聞き慣れない声を聞くと空腹が反射的に刺激されるのである。


「・・・こわっ!え?こわっ!」


「しっ!静かにしろ。アーゲ。空腹のあの方を刺激するなと言われただろう!本当に食われるぞ。」


 こんな状況なのに我関せずな態度でオーリスを見るのは黒く硬い鱗を持ちながら、鋭い牙を口から覗かせている生物でした。

 それは明らかに魚とは掛け離れた生物であり、貴方はそれを今世で見たことはありませんでしたが、前世の知識にあるワニに近いと思いました。

 アーゲと呼ばれているその新参者は他の新参者とは違い、オーリスに怯える事はなく、ジッと見つめていました。

 そんな事をしていると膠着が終わった新参者達に口元を抑えられながら責められていました。


「グフッ!」


「え?・・・アーゲ?どうし・・・?!!」


「なにっ!この傷!!」


「・・・・・・食べてる。」


 新参者達はアーゲを抑えているといきなりアーゲが血を口から吐き出して苦しみ出したことに疑問を感じました。

 アーゲの腹を見てみると四角い穴が空いていました。

 丁寧に致命傷にならないように内臓を傷一つつける事なく切られているその傷を誰かつけたのか振り返ってみるとオーリスが尾に突き刺さっている四角い肉塊を美味しそうに食っている姿でした。

 マジで仲間を食べていることに衝撃を受けましたが、それ以上にそれをなんて事ない日常のように振る舞っているノーアイ達古参の姿にショックを受けていました。

 あんなに必死に止めていたチアイもため息をつきながらアーゲの傷を見て安心していました。


 そんないつもとは違う異様な光景に頭がおかしくなりそうになりながら新参者達はアーゲを連れて治療という名目でこの場を去りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る