熱水・・・・・・いや、マグマだろ、これ?

 あれから20年、様々な生物が生存する為に争いが絶えない深海は深くならばなるほど、より強く、賢く、厄介な奴ばかりいるせいで、最下層に行くのに時間がかかりまくっていた。

 貴方達は深海の生存競争と今までに感じたことのない水圧と寒さに耐えて進化を繰り返しながら一漕ぎ、一漕ぎ、進んで行きました。

 それでも他にはない多種多様な生物で構成された貴方の群れはどの群れより早く最下層に辿り着いく偉業を達成しました。

 そんな最下層には驚愕のものが存在していました。


 そこは深海であるのに酷い暑さと眩い光を放っていました。

 貴方の予想通り、深海の海底には熱水噴出孔があり、極度に温められた地下水が小さい穴から100度を超えるのは触らなくても分かりきっていました。

 熱水噴出孔から溢れ出している熱水と一緒に出ている煙はこの深海とは違う独特な黒色をしていました。明らかに生物に良くない煙のそばには全身を殻に包んだ小さい生物が噴出孔付近に陣取りながら生きていました。

 そんな熱水噴出孔がこの海底には10や20を優に超える数が存在してました。

 でも、貴方達が驚いているのはそんな事ではありませんでした。


 おいおいおいおい!ウソだろ!何でこんなもんがっ!あるんだよ!!


 貴方の目の前には超巨大な火山が大量のマグマを垂れ流しながら鎮座していました。

 そのマグマ付近の海水は熱水噴出孔以上の温度へと高まっており、誰も近づかない絶対領域と化しています。

 海底に沈んでいった大量の死体が山にならず、炭となり黒い塊がそこら中に転がっている様を見た貴方の群れはビビりながら貴方の指示を待っていました。

 熱水噴出孔のようなぬるい場所とは違い、そこは何ものも存在出来ない死の海が広がっていました。

 もし、他の群れが降りてきても、一瞬で引き返して行っただろう。

 態々、此処にいなくてもその熱気は此処より数百メールは暖かくしている為、こんな所でなくても生きていけるのです。

 皆が目指していたのは最下層到達という新たな目標であり、寒冷からの安全地帯というのは既に達成されているのです。

 でも、貴方は違う。

 覚悟を決め、の為、弱気な心と魂に喝を入れ、火山に負けないくらい欲望を爆発させた。


 ・・・すぅぅぅぅ。良いじゃねぇか。此処で生きていられるなら、間違えなく俺達が最強だ。

 それに・・・・・・感じるんだよ。俺の食欲が言っている。あの火山の中に美味いもんが待っている!!!

 テメェら!何年、何十年、何百年、何千年、何万年!掛かっても俺は此処を支配する!俺が此処を変える!!

 ・・・・・・・俺と一緒に住むか?


 返事など決まっている。

 自分達のボスが他にいる訳がない。

 誰よりも冷酷で、暴食で、そして誰よりも部下に優しい。

 死んだら残さず食べてくださいよ。


 誰一人として逃げずに貴方に寄り添って着いていく意思表明をした群れの部下達にいつも通り頼もしくもあり、嬉しかった貴方は涙も全て灼熱へと変えて深海最下層10500メートルに挑みに行くのでした。

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