仮拠点

 ・・・ローシュ、周辺に敵対生物は近づいているか?・・・・・・そうか、引き続き索敵してくれ。僅かな事でも気がついたら報告しろ。


 潜り始めてから1日、慎重に潜り始めた為、およそ400メートル地点に到達して、貴方達は移動している。

 既に光はなく、闇が周辺を包んでいるが、何匹か群れから外れた個体を狩ったくらいで戦闘らしい戦闘はありませんでした。

 貴方が考える最終地点は暖かい深海である。

 暗く寒い深海にも比較的過ごしやすい場所がある事を貴方は前世の知識から検討がついていました。

 それは熱水噴出孔である。

 熱い海水が吹き出しているあの場所周辺なら寒冷化が進んでも生き延びれると考えました。


 ・・・・・・ふむ、取り敢えず、此処に仮拠点を作る。デンは背中のユリを地面に植えて安全地帯を建設、ローシュは暇な者を連れて周辺捜索、危険な者がいた場合、深追いや迎撃をせず戻ってこい。俺がやる。他のものは荷下ろしをしながら上から何ものかが降りて来ないか注意してくれ。


 底にたどり着いた貴方はそこからさらに下に潜っていく前に常に泳ぎぱなしでは疲れて休憩ができない為、この底に仮拠点を作って皆の体力を全開、新たな環境で進化するものがいるかもしれない。

 そんな状況で移動はできないため、深海慣れさせる事も含めて此処で休息にする事にしました。

 貴方は的確に指示を出すと自分の荷物を運搬担当のコシコから受け取って荷物を開け始めた。

 仮拠点には一番長い付き合いのユリの花を使う事にしていた。あんな浅瀬でいたら結局、寒冷で絶滅する為、深海に適応してもらおうと前々から暗闇でも生きられるように品種改良をしていた。

 デンは貴方の縄張りには生息していない触手が沢山ある貝みたいな生物だった。自分達より触手で器用に作業ができる為、食べずに部下に迎え入れたのです。

 せっせと植えるデンは初めて会った時は思えないほど大きくなり、群れの中でコシコの次にデカくなっていました。


 ・・・あぁ、分かった。・・・・・・いや、こっちに来ないんなら無視でいい。まだ、目的地じゃないんだ。争って損害を出すには早い。


 荷下ろしが終わり、各々が研鑽と食事、休憩をしているとローシュ達が索敵から戻って来ました。

 どうやら、デカい兜魚みたいなのが此処らへんで休んでいるという情報を持ち帰ってきました。

 大きさはコシコ並、10メートルくらいだと索敵して分かりました。

 ただ、頭が覆われた硬い兜は貴方が縄張りに生息していた兜魚とは比にならない程の強度と鋭さがあるのが遠くから見ただけでも分かりました。

 そんな危険生物に先制攻撃を仕掛けて仕留めておいた方が良いのではという意見が出ましたが、貴方はまだ敵対して来た訳ではない為、こちらから怒らせる必要がないとしました。


 もしも、こちらに食欲を持って近づいて来た場合は、・・・俺が食べる。良いな、誰も手を出すなよ。


 また、始まったと貴方の部下は思いました。

 こんな感じに未知な生物がいると、自分達には危険だと言っておきながら誰よりもその生物が食べたいと思っている事をこの数年間で貴方の部下は貴方の事を理解してました。

 今回の兜魚も自分が殺して食べたいんだなと呆れてました。

 デンは貴方の食欲に当てられて、群れをはぐれ貴方のナワバリに迷い込んだ当時の恐怖が蘇りブルブルと巨大を揺らして怯え始めてました。

 涎を隠す気のない貴方を見て、本当にこの魚について来て良かったと皆が安堵して、この1日は終わりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る