奴が来た!

 ・・・何か群がっているな。


 貴方が魚群に花畑を踏み荒らされて10日が経った頃、ユリの花は元気な姿を完全に取り戻すどころか大量の肥料と幾度も踏み潰された経験、そして、絶滅するのではないかという恐怖がユリの花を高みへと進化させた。

 それは毒性の強化ではなく、生命力の強化でした。

 どれだけ踏まれても、どれだけ食い散らかされても、どんな環境になろうとも生存する為の生命力と繁殖力をユリの花は獲得に成功しました。

 一日、一日毎に花畑の範囲が拡張していくに伴って貴方の安全な寝床が増えていきました。

 そんなこんなで食っては運動、食っては運動の筋トレ生活を送っている貴方が食糧を食べていると小さく自分と似た長細くはあるが、全体的に円柱の様に丸い魚が自分とユリの食糧に群がっているのに気がつきました。

 それ前世の知識にあるウナギに似ていましたが、目が退化しているのが、閉ざれた目を見てとれました。

 身体に似て食べ跡も丸っこいこの魚達を今まで見た事がなかった貴方はこのメナシウナギが元々、視力の必要性が低い深海に生息しているのではないのか?と予想できました。

 このサソリモドキや兜魚がこの近辺から消えたことで一時的に上層に昇ってきたと考えた貴方は他にもいるのではないのかとメナシウナギを味見しながら考えていました。

 仲間が喰われているのに気にしていない事から仲間意識は低く、自分が害されない限り何もしてこない事が分かった。


 ・・・・・・・・・可もなく不可もなくって感じの味だなぁ。不味くはないが、淡白で生じゃない感が凄い。煮付けとかにしたいが、・・・まぁ、ないものねだりしても仕方ないか。


 貴方は心から残念そうにしながら、ふとある疑問が浮かび上がって来ました。

 なんでこのメナシウナギはユリの毒が効かないのか、たまたま、ユリの毒の耐性を持っていたのか、それか、深海にはもっとやばい毒をもつ生物がいるかである。

 直感的に後者だと貴方は感じる事ができました。


 まぁ、どちらでも深海には一回行ってみたさはあるな。問題は視力の代わりになる能力を獲得しないと危険すぎるという点だが、な。


 進化で獲得するわけじゃない。己の身体にはまだまだ活用できない能力があるという確信が貴方にはありましたが、それが何なのか、分かりませんでした。

 

 より強くなるには危険や冒険は必要不可避!安全な寝床だと思っていたのも侵略される可能性が出たからには安全策ばかり取っていたらいざと言う時に対応が遅れるっ!


 貴方がハイリスクを覚悟した瞬間、貴方の直感が作動しました。

 急いでその場から離れてユリがより生い茂っている方に逃げ身を隠すことに成功しました。


 あれはサソリモドキ・・・だよな?


 見た目はサソリモドキだが、数多のサソリモドキを食べてきた貴方にはそれがただのサソリモドキではない事を理解する事が出来ました。

 サソリモドキは貴方の姿を見逃したのか、目をギョロギョロしながらその場から離れようとしません。


 アイツっ!毒に耐性を持っているのか?!やっぱりただのサソリモドキじゃないな・・・このまま身を潜めてチャンスを伺うか・・・・・・なっ!どこにっ?!チッ!


 目線を外さず、サソリモドキに集中していたのにサソリモドキの姿が蜃気楼の様に消えて見失ってしまいました。

 それに驚いた貴方はすぐさま一点から周囲へ集中する対象を変えた瞬間、背後からユリの花とは違う気配を僅かに感じた貴方は急いで避けたがハサミによって尾鰭を怪我してしまいました。

 

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