空腹は万能スパイスではなかった。

 沖に出て正解だった。


 貴方は浅瀬ではなく、本能に従い沖に流されて行きました。

 沖で気配を消し、海底を見てみると鎧や兜のような装甲を見に纏う魚が複数体発見する事が出来ました。

 それを見た貴方はある仮説を立て、水面付近で待機しながら何か来ないか待ってみました。

 これは一歩間違えたら即死ゲームオーバーの賭けでもありました。

 そんなこんなで日が沈むまで待っても何も来ない、通らない事を確認した貴方は仮説が正しい可能性が高くなったことを感じ取っていました。


 あれから排泄した。捕食者は匂いに敏感だ。下にあのサソリモドキがいる事も確認している。

 姿もチラッと見せた。

 ずっと此処に俺がいるのを奴らは気がついているのに奴らは襲って来ない。

 つまり、此処には来れないんだ。


 貴方が気がついたのは魚や捕食者達の海底との泳いでいる位置が短いという事だった。

 まるですぐ休めれるようなそんな海底スレスレを泳ぐ魚もいた。

 サソリモドキから逃げているのに立体的に動かず、平面的な移動しかしない魚もいた。

 つまり、あの魚達はスタミナがない、もしくは身体が重すぎる割に泳ぐ能力が乏しいのだ。

 まるで人間が鎧を着て泳ごうとしても沈んでいく様に、あの魚達は防御の代わりにスピードを落としている。

 それを捕食しているサソリモドキ系も待ち伏せからの奇襲が多かった。

 最初に襲って来たあのサソリモドキが特殊か、そういう種だっただけで、待ち伏せによる奇襲が失敗しても、獲物を深追いしない狩猟が少なくとも此処ではメジャーである事を貴方は理解しました。


 後、このナレーション語りの思考回路も癖だな。前世からのやり方か?冷静に物事を俯瞰して考えられる。


 貴方は現状を整理しながら、比較的安全な寝床を探しています。

 スピードを活かした調査を続ける貴方はふと目に止まるものが水中に浮かんでいる事に気がついた。


 これはプランクトンか?・・・よく見たらそれなりにいるな。・・・・・・・・・あむ!


 あなたが見つけたのは植物性のプランクトンでした。

 今まで気がつきませんでしたが、目を凝らしてみると意外と多くここら辺を漂っているのに貴方は気がつきました。

 その時、意識が目覚めてから何も食べていなかった貴方のお腹が鳴りました。

 逡巡したのち、恐る恐る食べた貴方は口の中に広がる青臭さを空腹というスパイスで誤魔化して口の奥に飲み込んだ。


 ・・・うん、不味い。この身体が植物系プランクトンを食べない食性なのか、ただ単に嫌いな食い物なのか、知らないが不味いな。・・・こっちならいけるか?


 次に貴方が見つけたのは動物性のプランクトンでした。

 エビに似たフォルムのそれはサソリモドキの幼体だと予想した貴方は食われそうになった想いを込めてプランクトンを食べた。

 口に広がったのは正に甲殻類の風味と良い塩味と言った美味さにこの世界で初めて舌鼓を打った。


 ・・・うめぇ。・・・・・・いつか成体も食いたいな。


 貴方は死骸でも良いからと、成体の屍骸がそこら辺に落ちてないか、しばらく熱心に探した後、本来の目的は住処である事を思い出した貴方は色んなプランクトンを味見しながら空腹を満たしていきました。

 


 

 

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