第2話(メイド編)そういうところも大好きですよ?

「ご主人様、今日もお仕事、お疲れ様です」


 普段とは全く違う、激アマな声。


「部屋のお掃除も、夕飯の支度もできていますよ」

「どっちにしますか?」

「え? ……私? ご主人様ったら、相変わらずですね」


 くすっと笑う亜矢奈。そして、近寄ってきて耳元で囁く。


「私もちゃーんと、準備してますから」

「今日の夜、ご主人様の部屋にお邪魔しますね?」


「では、食事をお持ちします」

「ご主人様はそこで待っていてくださいね」


 部室にあった小道具のお盆を持ってきて、机の上に置く。


「お持ちいたしました」

「今日のご飯は、ご主人様の大好きなオムライスです」

「本当ご主人様って、子供の時からご飯の好みが変わってないんですから」


 ふふ、と少しおとなびた笑みを浮かべる。


「それに今日のご飯、私のお手製なんです」

「ご主人様が前に、私の料理を褒めてくれましたから」


「そんなにびっくりした顔して……もしかして、シェフに作ってもらった方がよかったですか?」


 拗ねたような声。


「そんなことない? ご主人様、そんな言い方じゃだめです」

「女の子にはちゃんと、はっきり言ってあげないと」

「そうです、はっきりです」


「私の手料理がよかった? ふふ、ご主人様、素直になりましたね」

「偉いです」

「私が褒めてあげます」


 いきなり頭を撫でられる。

 驚くと、からかうような笑みを向けられる。

 そして、耳元で囁く。


「だめですよ、そんな反応しちゃ」

「私とご主人様が付き合ってるってこと、みんなにバレちゃうじゃないですか」


 亜矢奈が離れる。


「冷めないうちに、食べちゃってください」

「それとも子供の時みたいに、あーん、ってしてあげましょうか?」

「大丈夫? 本当、素直じゃないんですから」

「まあでも、ご主人様のそういうところも、私は大好きですよ」


 亜矢奈はくすっと笑い、いきなりパン! と両手を叩く。





「以上」

「先輩、喋らな過ぎじゃないですか?」

「それに、おどおどし過ぎで、ご主人様感がゼロです」


「ごめん? 謝罪は別にいいので、今後改善してください」

「今後もあるのか? 当たり前じゃないですか。先輩の演技力が壊滅的なので、私が特訓に付き合ってあげてるんですよ?」

「明日のテーマを伝えておくので、今日は家でイメトレでもしておいてください」


「明日のテーマは……幼馴染の同級生カップル、です」

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