第44話日和の家で…

「ぐおぅ〜 んが〜 すぴ〜 すぴ〜…」


「本当にすいません、社長。うちの人ったら…」


「いえいえ…気にしないで下さい。それに敬語も結構ですし、社長はちょっと…城咲で大丈夫ですよ」


 源氏さんに連れられて源氏さんの家に来たまでは良かったんだけど…話すだけ話して、挙げ句の果てに、源氏さんは酒を飲みに飲んで飲み潰れて眠ってしまった。


 色々任せてみたいな事言ってなかったか?もの凄くカッコイイ事を聞いた気がするんだけどな…。


「じゃあ…城咲君って普段は呼ばせてもらうわね?」


「はい」



「それで…ホントなのかよ?」


「日和…口が悪いわよ?私とパパの上司でもあるのよ?」


「く、口調は…仕方ないというか…たまにこうなるというか…」


「日和さんとは同級生ですし、気にしませんから」


「ホントごめんなさいね」


「いえいえ…」


「んで…城咲…どうなんだ?」


「ああ…さっき源氏さんが言ったのと大差ないよ」


「じゃ、じゃあ…あ、アタシを助けて…くれる手配もしたのも…パパとママとの仲を取り持ってくれたのも?」


「…結果論だよ」


「感謝しなさい、日和?私も凄く城咲君には感謝しているんだから…。日和も助けてくれたのは勿論だとして、日和との事もそうだし、仕事だってそう…。旅行も城咲君が手配してくれたのよ?」


「城咲がっ!?」


「ちょっ!?ルリさんっ!?何も全部言わなくても…」


「あら…いいじゃない?本当の事なんだから…」


「いえ…なんか…こう…恩をきせてる感じがして…」


 なんだか居心地が悪いな…。くっ…これも源氏さんのせいだ…。


「そ、そうなのかよ…いや…そうなんだ」


「普通に話してくれていいからね、日和さん?」


「…日和でいい」


「えっ?」


「っ!?だから…呼び方は日和でいいって」


「あ、ああ…」

 

「もう…日和ったら…あっ!そうそう、城咲君に聞きたい事あるのよ」


「はい、何でしょうか?」


「彼女っているの?」


「…へっ?」


「居ないなら日和なんかどうかなって?」


「ちょっ!?ママっ!?」


「いえ、彼女はいませんけど…」



「なら、日和をお願いしますね?その方が日和を守りやすいでしょうし、守ってくれるんでしょ?」


 いや…ウインクされても…。


「だから…ママっ!?アタシの意思は!?」


「えっ…と…付き合ううんぬんは日和さんの意思もありますし、置いておくとして…日和さんの事は守りたいと思っています」


「……………ほへっ!?ななな、なっ!?」


「…ありがとうね、城咲君。親としてはそれだけ聞けたら十分過ぎる答えだわ…」


「出来ればでいいんですけど…高校に通ってる間は特に一人になったり…俺から離れないようにするとか…心掛けてもらえたらと思います。窮屈でしょうけど…」


「窮屈には感じないわよね、日和?」


「ふぁつ!?えっ…と…ああ…別に…アタシは…城咲がどうしてもって言うなら…考えんでもないけども…」


「馬鹿ね、日和は…そういう時はその大きな胸を押し付けながら上目遣いで言うの」


「ママっ!?何言ってんわけっ!?」


 ゆ、優花の母親もそうなんだけど日和の母親もアレだな…。よく似てるというか…。


「と、とりあえず…遅くなりましたので俺はこの辺で…」


「あら、それは許可出来ないわね?」


「「…えっ?」」


 俺と日和さんの声が重なった…。


「一応…城咲君は未成年だし、今日は遅いから泊まっていきなさい?」


「いえ、そういうわけには…タクシーでも呼んで…」


「駄目よ♡」


「ちょっ!?ママ!?アタシ年頃の娘なんだけどっ!?」


「とにかく…風呂沸いてるから先に入ってきてくれる?着替えは主人のを用意しておくから」


 有無を言わせない目…。こういうのは流石に分かる…。まあ、そんな目をする人に対して出来る事といえば…


「…はい」


 これ一択だな…。何やら母娘で話をしだしたのを尻目に俺はお風呂を借りる事になったのだった…。







「ちょっと、ママ?どういう事!?城咲を泊めるなんて!?」


「助けてもらったのが城咲君って知って、話をしているうちにいいと思ったでしょ?」


「んなっ!?そんなっ!?ちょ、チョロくないわよっ!?」


「熱っぽい視線とドキドキしてる癖に?」


「はっ、はぁっ!?してませんけどっ!?」


「素直にならないと後悔しても知らないわよ?城咲君が助けようとしている女の子はあなただけじゃないみたいだしね」


「なっ!?それ、ホントっ!?」


「そうそう、ライバルは多いぞ?」


「パパっ!?いつから起きてっ!?」


「パパは最初から起きてたわよ?寝たフリしてただけよ?」


「そうだぞ?その方が城咲君も話しやすいかと思ってな」


「そ、そうなのっ!?」


「城咲君から聞いたんだが、神楽坂さんっていう女の子と感動さんっていう女の子、それから…」


「まだ居るわけっ!?」


「歌羽さんだったかな」


「歌羽っちも!?」


「ああ…助けたらしいね」


「女の勘だけど…たぶんみんな惚れてる筈よ?」


「はぁーっ!?いや…でも…確かに…言われてみると…神楽坂と感動って子は同じクラスだし、席も隣だし、よく話していた気がする…」


「でしょっ?」


「ん〜っと…?勝てなくない?」


「ほらっ?そう思う時点で好意はあるんでしょっ?」


「ち、違わ〜いっ!?今のは…その…」


「今は城咲君フリーみたいだし…協力してあげるわよ?日和がその勝負に勝ちたいならね?」


「……一応…聞く」


「うちの娘は素直じゃないな」







***

あとがき


優花「今すぐ気付いて、豊和君!?これは罠よーっ!?」


凛「何を風呂に入りに行ってんの!?」


芽依「そうだよ、お兄ちゃん!!」


天音「日和ちゃんが本格参戦?わ、私も…」


優花「歌羽さんはまだまだ控えていて!?」


天音「控えていたら終わっちゃうよ!?」


優花「終わっていいのっ!」


天音「良くないよっ!?」 


愛「私ならお風呂に突入しますね」


一同「「「「……えっ?まさか…」」」」

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