第38話俺は間違っていない
水樹達がガラの悪い連中に絡まれていた場所から全速力で走って逃げた後、俺は物陰に隠れて様子を見守る事に…どうやら俺の事を追っては来ていないみたいだ。
「はぁはぁ…久し振りに全力で走ると…はぁはぁ…息が切れてしまうな…」
逃げる道すがら警察にもちゃんと連絡して事の次第を伝えている。ガラの悪い連中に女子校生が襲われているから助けてくれと…。
俺がその場に残っても何も出来やしない。ただ…理不尽に殴られて終わるだけだろう。
それよりもその場を離れて警察に任せた方がいいに決まってる。
よ〜く考えてみろよ?絡まれた女性を見つけたとして何人が助けると思うよ?そりゃあ、物語みたいにカッコよく助ける者もなかには居るとは思うよ?でも…殆どは見てみぬフリするのが世の中だ…。現実はそんなに甘くないぜ?下手な正義感をかざせば最悪死んでしまうんだぞ?俺はまだ恋を成就させてもいないのに死にたくはない。俺は何も間違った事はしていない。
“ファンファンファン──”
ほら、見ろ!俺の行動を肯定するかの様にパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。俺が通報したお陰だ。アイツ等も今頃慌てて逃げようとしているだろうしな。
これなら水樹達が絡まれた場所に戻っても大丈夫だよな?そう思った俺は物影から出て水樹達の元へゆっくりと向かう事にした。二人とも大丈夫だと思うけど…やっぱり心配だしな。
♢
水樹達が絡まれていた場所はちょっとした騒ぎになっていた。パトカーが何台か止まっていて、辺りには何があったんだと野次馬が集まっている。俺は野次馬の中をかき分ける様に進む事に…。
すると警察の人と話をしている二人の姿が見えた。二人とも怪我はしてないみたいだ。
「…やっぱりあの時、逃げて通報したのが良かったんだな」
俺は野次馬を整理している警官の男性に話し掛ける事にした。
「すいません。俺はあそこにいる二人の知り合いで、ガラの悪い連中に二人が絡まれているのを助けて欲しいと通報した者です」
俺は胸を張ってそう答えた。少し困惑そうな表情を浮かべる警官の男性。何でそんな表情をしているんだ?まさかあのガラの悪い奴らを取り逃がしたんだじゃないだろな?
「まさか…取り逃がしたとか?えっ?犯人は全員捕まってる?なら…いいけど…」
なにやら歯切れが悪いというか、気が利かないというか…とにかく…暫くしてから二人の元へと行ける事になったんだ。
「おう!二人とも、無事で良かったな?」
「「っ!?」」
「うん?風花は睨むのはいつもの事だから分かるけど…水樹迄どうした?」
風花は風花でいつも以上にキレてる感じがするし、水樹迄何やら怒っているような…。
「はぁ?アンタはふざけてんのっ!」
「…はぁ?はこっちの台詞だろうが!何言ってんだ?ああ…警察の人達から聞いてないわけ?俺が通報して風花と水樹を助けてやったんだがっ!?」
「違うっ…」
「何が違うんだよっ!?それが事実なんだよっ!」
「違う、違うよ…幸…。幸が逃げた後…私と風花ちゃんは…連れ去られる所だったんだよっ!?く、口を塞がれて…」
「だから…だから何だよ!?そりゃあ…怖かったのは認めるさ!誰だってあんな輩にそんな事されたら怖いさっ!だけど…俺の機転のお陰で助かっただろっ!?警察を呼んだのは俺なんだっ!それに…それに元はと言えば風花がぶつかったからじゃないのかよっ!!俺は間違った事は何一つしてないのに何で俺が責められてるんだよっ!?おかしいだろ!?そんな事言われて、感謝もされないなんて…警察に電話もしなかったら良かったよっ!」
“パシィィィ――──ン!”
頬に強い痛みを感じた。そんな事するのは…ビンタをかますのは風花だと思っていた。でも…涙を瞳いっぱいに溜め込んだ目で睨みながら俺を引っ叩いたのは…幼馴染の水樹だった…。
「……なんなんだよ…?こんな事されるくらいなら…お前等なんて…助けなければ…」
「な、何が助けなければよっ!アンタが逃げて…どんだけ私達が心細かったと思ってるのよっ!!水樹の言う通り連れ去られる手前だったんだからぁぁーっ!」
「だ、だから言ってんだろっ!?俺の…」
お陰だろうがっ!そう言葉を継ぐむ前に…風花が俺の声に被せる様に言った。
「アンタに助けてもらったんじゃないっ!私達は彼に助けてもらったのっ!」
「…彼?」
「彼が居なかったら…私達…ここに…居なかった…ふぇーん…」
なんだよ…助けたのは俺だろうに…。何が彼だよ?彼って誰なんだよ…。水樹も風花も泣くばかりで話にならない…。
俺はその場を離れ…イライラするのを必死に抑えながら自宅への帰路へと着いた…。
***
あとがき
優花「…怖かったと思う…だから…二人の気持ちがちょっと分かるな…」
凛「…うん。これは…なんとも言えないよね…」
日和「幸が…全部わりぃわけでもないしな」
天音「二人とも…やるせない気持ちを…どこかにぶつけたかったん…だと思う…」
愛「難しいですね…」
芽依「知ってるから…尚更だよね…」
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