第37話主人公

 主人公…それは、フィクション作品(小説・映画・ドラマ・漫画・アニメ・ゲームなど)のとなり、の事であるとネットで調べて出てくる。


 勿論、このゲームにも主人公は存在している。まずプレイヤー(主人公)は攻略するヒロインを一人選ぶ事になる。高校に入って一目惚れ…。そこからゲームが始まる訳だが当然の事だが主人公の恋が実る事はない。ヒロイン達がどのように酷い目に遭ったのかをいわば追憶していくようなゲームだからだ。


 告白した時にはすでに快楽堕ちしているか、廃人になっている等…とにかく悲惨な結末を迎える…。



 を選んだ場合は…幼馴染が堕ちていく様を見る事になる。言いかたを変えると脳汁プシャーか脳破壊っていう言葉が当て嵌まるだろう。そういうのが好きなモノからしたら堪らない展開なんだろうけどな…。



 まあ、何が言いたいのかと言うと隣のクラスにこのゲームの主人公様が居るというわけだ。







こう。そろそろ起きないと学校に遅れちゃうわよ?」


「んあっ!? …ああ…もう朝なのか…?」


「いつまでもゲームしてるからだよ?」


「…何で分かる?」


「幸とウチが何年幼馴染やってると思ってんのっ?」


「…左様で」


「とにかく早く準備しないと置いて行くからね?」


「…はいはい…」



 ああ…眠いしダルい…。遅くまでゲームの素材周回してたせいだな…。でも…楽しくて止めらんねぇ〜んだよなぁ〜。


 ―って…やべぇ!?…早く準備しねぇと水樹を怒らせてしまうな…。








「おっは〜 水樹みずきっ!ついでに幸も」


「おはよう、風花ふうか


「俺はついでかよ」


「あら?挨拶したのに挨拶を返さないんだ、幸は?」


「…おっす」


「…まあ、いいわ。それにしてもまた幸のせいで電車の時間ギリギリだったんじゃない?」


「あっ、分かる?」


「うぬぬっ…何にも言えねぇ…」


「相変わらず思うんだけど…ホント、水樹も面倒見がいいわよね?幸なんて放って置けばいいのに」


「ついでだし、おばさんにも頼まれてるからね」


「別に俺は頼んでねぇからな?母さんが言った事なんて真に受けなくていいし、なんなら毎回言ってるけど起こしに来なくても別にいいんだぞ?」


「…はぁ〜 水樹に感謝もしないで…。幸はあんな事言ってるし、放って置けば?そしたら水樹のありがたさが身に染みると思うわよ?」


「いやいや…ありがた迷惑だからっ!俺は別に遅刻しても気にしないしな」


「もう、絶対に放って置きなさい。それに幼馴染だからってそんな風に毎日一緒に登校して下校してるもんだから噂になってるわよ?二人が付き合ってるって」


「…そうなの?」


「うげっ…水樹とっ!?ないない…絶対にないな…。えっ?まじで噂になってんの!?」


「『絶対にない』は、水樹の台詞だからね、幸?」


「はぁ〜っ!?それは俺の台詞だって…」


「こんな事言ってるわよ!?水樹も幸に何にか言ってあげなさいよ!こんなふざけた事を言ってるのよっ!?」


「えっ…ああ…うん…ウチは別に気にしないから…」


「まあ、とにかく風花の馬鹿がっ…」


「誰が馬鹿よ、誰がっ!馬鹿はアンタでしょうに…」


「ちょっ、ちょっと言い間違えただけだろ!?」


「何が言い間違いなのよ!」


「まあまあ、二人とも…落ち着いてよ?ねっ?みんな見てるしさっ」


「とにかくだ!水樹明日から来なくて良いからな?変な噂が立ってるなら俺が困るし」


「あんたが困るんじゃなくて水樹の威厳や尊厳に関わるってぇ〜の」


「うっせぇー!」



 何かにかこつけて風花の馬鹿は俺に突っかかってきやがるんだよなぁ…。水樹の奴も俺は頼んでねぇんだからいくら母さんに頼まれたからって、俺の事なんて放っておけばいいのによ…。そしたら風花に何かイチャモンつけられる事もなくなるだろうしな。


 まさか…水樹の奴…俺の事を好きだったりするのか?まさかな…ないない…。水樹とは隣同士っていつだけだしな。ただの世話好きなだけだろ。



 それになにより…俺は…好きな人が居るしな。水樹と噂になってること…彼女の耳に入らなければいいけど…。 



 



 その日の帰り道…。



「なあ、お前が俺にぶつかってきたんだろ?」


 前方からそんな言葉が聞こえてきた。なんかガラが悪い感じだ…。


「だ…だから…謝ってるじゃないっ!」


 男性の声に聞き覚えはないんだけど…女性の声には聞き覚えがあった。


「いやいや…見ろよ、コレ?ブランドの服に染みがついてんの…分かるよな?お前がぶつかってきたから俺が持っていたコーヒーがかかったんだぞ?」


「す、少し位なら…クリーニング代を…」


 別の女性の声が聞こえた。凄く聞き覚えのある声…。


「いくらもってんのっ?コレ一点物よ?こっちとしてはちょっと位もらっても足りねぇわけだわ」


「だから…謝って…」


「謝って済むわけないだろーがっ!?」


「そうだぜ?兄貴にこんな事しでかしたんだっ!謝ってすむわけないだろっ!来いっ!」


「「ひっ…」」



 ガラの悪い男性達のそんな声が辺りに響き渡る。そのまま歩を進めていると、俺の視界に入ってきたのはガラの悪い5人に囲まれている、水樹と風花の姿だった…。



「「幸っ!?」」


 それと同時に二人が俺に気付いた…。馬鹿野郎っ!?何で俺の名前を出したんだ!?今警察を呼んでやろうとしてたのにっ!?


「あん?知り合いか?ちょうど良かった。この二人が兄貴にぶつかってよぅ」


 ほら、見ろっ!男の一人がこちらへと向かって来たじゃないか!?




 俺は…






 その場から慌てて駆け出して離れる事にした…。今、来た道を全力で引き返して行く…。



「「「「「…あん?」」」」」


「「…えっ」」




 そんな間の抜けた声が聞こえた気がした…。でも、そんなの当たり前だよな?相手は5人もいるんだぜ?俺が行って何が出来る?だから途中で携帯を取り出し、警察へと連絡したんだ。









***

あとがき


優花「えっ?」


日和「はっ?」


凛「嘘だよね?」


天音「に、逃げ…た?」


愛「ど、どう…なんでしょう…か…」


芽依「愛さんが言葉を失ってるの初めてかも…」


優花「それはそうでしょう」


凛「お、幼馴染を置いて逃げるのっ!?」


日和「か、考え方…なのか?」


天音「難しいね」


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