第35話一難去ってまた…

「おはよ〜豊ちゃん、優花ちゃん」


「おい〜す!」


「おはよう、凛ちゃん」


 いつもの様に朝の挨拶を交わす俺達。


「うん?」


「どうかしたのか、凛?何か悩みか?もしそういうのがあるのなら早めに教えてくれ。力になるからさ」


「えっ…うん…ありがとうね?でも…違うよ?」


「そうか?ならどうしたんだ?」


「あっ…うん…なんかね、豊ちゃんと優花ちゃん…何だか様子がおかしくない?」


「い、いや…そんな事は…なぁ、優花?」


「そそそ、そうにぇ…いちゅもと変わらにゃいわよ!?」


 テンパリ過ぎじゃないか!?いや、確かにあんな事があったわけだけども!?


「…あったんだね?」


「いや…特には…」


「あうあう…」


「そこであうあう言ってる優花ちゃんは後で話しようね?」


「…ひゃい」


 どうやら優花は逃げられないようだ。まあ、凛が察しの通りお互い昨日の事もあっていつもよりもお互いの距離が離れてるし、いつもみたいに話せないから付き合いが長い凛には分かるか…。手だけとはいえ、大事なところに触れたわけだし…変態の汚名を被らなければいいんだけどな…。





〜???〜


「今日もあのクソ野郎は優花さんと一緒にいるのかよ」


 入学式で彼女を見掛けた時…天使がこの世に居るのかと驚愕したもんだ…。彼女が発する声、類まれない容姿…。そしてなによりも人を…いや、俺を惹きつけるあの笑顔…。


 一目惚れだった。俺はすぐに彼女にラブレターを書いてそっと彼女の靴箱に忍ばせた。まあ、当然の事ながら彼女はモテる。俺がラブレターを入れる前にも先客がいた。10人は居たと思う。まあ、全部ゴミ箱に捨てて俺のだけ忍ばせたわけなんだが…。


 俺の想いは全て手紙に書いた。後は彼女がそれに応えてくれるだろうと思っていた…。


 なのに…


「ごめんなさい…」


 ごめんなさいって何だっけ?言われた時は全く分からなかった。ごめんなさいという言葉が俺の頭にリフレイン…。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…よ。

んっ?ラーメンか?ラーメンのコマーシャルでそんなのあったなと思考がどっかにいってしまう…。そんな俺に追撃をかけるかの様に衝撃的な言葉が優花ちゃんから聞かされた…。



「私…好きな人がいるの…ずっと…ずっと…その人だけを見てるのよ…だから…あなたとは付き合えません」


 

 嘘だろ…!?嘘だと言ってくれよ…。好きな人って俺じゃないのかよ…。その日は流石に泣いた…泣いて泣いて泣きまくった…。


 泣きまくった後に思った。誰なんだ…優花ちゃんにそんなに思われる幸せな男は…?


 俺は彼女を観察する事に…。すると…すぐに分かった…。アイツと話す時だけ明らかに表情も仕草も全てが違う…。何て羨ましい男なんだ…城咲しろさきの奴〜!しかも城咲の奴…隣の感動さんからもアプローチを受けているみたいじゃないか!?ふざけんなよ!?おかしいだろ!?そして普通それに気付くだろ!?しかも何やら転校生のアイドルもアイツを見ている感を最近は感じている。


 どんだけ前世で徳を積んだんだよ!?そう叫びたくなる!一人…というか、優花ちゃんは俺にくれてもいいだろうよ!?


 こうなったら――



 俺はある日の朝早く…犯罪と知りつつも女子トイレに侵入…。なけなしの小遣いで買った小型のビデオを仕掛けた。購入したのは2つ。女子トイレの便器は3つ。一つ足りないのでトイレ使用禁止の貼り紙を貼って対処する事にした。


 ビデオは映像が俺の自宅のパソコンへ届く様にして改造してある。そういうのは得意なんだ。後は…優花ちゃんがトイレに入ってくれれば…それをネタにして…。



 そしてその時は訪れた…。優花ちゃんがトイレへと向かったのだ。俺はこれで優花ちゃんが手に入る喜びに震えていた。脅すのはしたくなかったがこれは優花ちゃんの為でもあるんだ!



 俺はすぐに彼女を呼び出す事にした。放課後体育館の裏で待ってる旨を伝える手紙を机に入れた。なにしろ盗撮したデータは自宅にあるんだ。消して欲しければ一緒に来てとか言えば来てくれるだろう。




 ドキドキしながら優花ちゃんが来てくれるのを待つ…。今度こそ…俺は…







「優花なら来ないぞ?」


 一番聞きたくない声…。見たくない顔…。


「っ…何で…何で城咲がここにっ!?」


「お前さぁ…盗撮したデータで優花を脅そうとしてたろ?」


「んなっ…そ、そんな事は…とにかく俺の優花ちゃんはっ!?」


「だから…来ないって言ってるだろ?」


「お前ぇ…俺の質問に─」


「あっ…それと伝えておくけど…お前が盗撮したのは俺がしっこしているところだから」


「……はっ? しっこ?」


「しっこじゃ分からないか?小便だよ、小便。お前が撮ったのは俺の恥ずかしいところな?」 


「そ、それくらいは分かるわ!何で…どうして…いや…そんな嘘は…」


 “ガシャン─”と、こちらに何かを投げた城咲。それは壊れている機械みたいなもので…


「ああーっ!?俺のなけなしの小遣いで買ったビデオカメラがっ!?」


「ちなみにだけど、お前が仕掛けてるところの映像もあるからな?」


「ぬなっ!?何…でっ…」


「優花にちゃんと告白するなら分かるぞ?告白されて振られたのも知ってるけど…でも…そこで脅迫は駄目だろうが?本当に好きなら振り向いてくれるまで何度でもアタックするとか…優花が振ったのを後悔する位カッコいい男になるとか…最悪…新しい恋を探すとか…色々あっただろうに…」


「うるさいっ!?お前なんかに俺の気持ちが分かってたまるかぁぁー!」



 俺は拳を強く握りしめ振りかぶりながら城咲の元へ…。



 そこで何やら強い衝撃を受けて…


「悪いな…そういうのから俺が守るって自分にも優花にも誓ってるんだ…」



 そんな言葉が聞こえ…俺の意識は途絶えてしまった――――。





「愛さん…そこに居ますよね?」


「はい、勿論居ますよ☆」


「後はお願い出来ますか?」


「はい、お任せをっ☆それにしても悪い事をしたとはいえ男の盗撮で捕まる事になるとは…」


「…自業自得…でしょう…」


「あっ…」


「どうかされました?」


「今回のもツケて置きますね♪」


「…無茶振りはしないでくださいよ?」


「お任せをっ☆」









「どこ行ってたのよ?」


「ああ…お腹が痛くてトイレにな?」


「……嘘つき♪」


「いや…トイレだって…」


「また…私を守ってくれたんでしょっ♪」


「いや…知らんけど…」


「愛から…聞いたもん…♡」


「…さてね」


「一生守ってくれるんだって?」


「言ってないがっ!?とにかく帰るぞ?凛が待ちくたびれてるだろうし」


「あっ…ちょっと…!?」






「くふっ♡コレはいいものですね♪」


「愛はイヤホンして何見て……きゃぁぁあぁあ!?」


「!? お嬢様!?」


「あああああ、あなたコレっ!?」


「お嬢様にもコレをダビングしますので…どうか何卒…」


「ふぁっ!?だ、駄目よ…ここここ、こんな…ハッキリとっ!?あわわっ…」


「回数が増えたお嬢様のナニも更に捗るのでは?」


「……ごくっ…こっ、今回だけ…だからね?」







***

あとがき


日和「お前等が犯罪じゃねぇーかぁ!?」


天音「ほほほ、ホントだよ!ねぇ、凛ちゃん?」


凛「ふぇっ!?そ、そうだね…」


芽依「そんな事ないよ、これは素晴らしいモノなの」


日和「凛…芽依…お前等、まさか…」


天音「すでに買収済み!?」


愛「勿論ですとも☆」


凛「だ、だって…興味あるし…」


愛「お二人にもダビングしましょうか?」


日和「あ、アタシは…」


天音「べ、勉強に…」


日和「歌羽っち!?」

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