第34話媚薬煙

 ――そして時間だけが過ぎていき… 愛さんはどうしたんだろうと思っていると、何やら優花の様子がおかしい事に気付く…。


 頬を寄せ合わせたまま、未だに抱き合っているためにソレに気付いた。耳元で優花の息遣いがなんだか段々と荒々しくなっている事に…。 


「…ねぇ」

   

「んっ?」   

 

「…しよ?」    

 

「……えっ?」  


「はぁはぁ…豊和君が…私ぃ…欲しいの…豊和君と…エッチ…したいよぅ♡」


「はぁっ!?優花…何言っ―むぐっ…!?」


“ちゅう♡んちゅっ♡ちゅっ♡ちゅぐっ♡”


 真っ暗闇で視界がままならない中でも何をされたのか分かった。キスされたんだ。俺は慌てて逃れようとするとガッチリと顔を掴まれ逃がすまいとしてくる優花…。


 唇と唇を何度も何度も重ね合わせてくる。そのうち柔らかいなんともいえないその唇の感触に頭がボッーとなっていき、何も考えられなくなってしまう――


「んっ!?」


 唇を割るかの様に優花の舌が侵入してきた…。それはまるで口内を蹂躙されてるかのような動き。そのうち舌と舌が絡み合い水音を奏でだした…。




 ―どれくらいそうされていたかは分からない…。水音が止みようやく優花の唇が俺の唇から離れていく。


「ぷはっ…はぁはぁ…豊和君…欲しい…」  


「はぁはぁ…優花…」


 優花が立ち上がり布が擦れるような音…。


「豊和君も…脱いでっ…」



 俺は優花のその言葉でようやく我に返った。このままでは優花とシてしまう事になる。そもそもどうしてこうなった。考えろ!早く考えろ!思考をフルに加速させろ!!


 暗闇だから?…違う!抱きついてたから?それも違うと思う…。いや…抱きついたのは何でだ…?


 そうだよ!虫が出たからだ。虫は優花が子瓶?を拾ったからで…子瓶…?そういえば子瓶が割れた音が…


「子瓶だっ!?」


 何で忘れていた?この世界はゲームの中でもあるんだ。ゲームの中にはそんな物は実際にはないだろうにと思う様な物がいくつか存在していた…。コレも間違いなくその一つだ。  


「媚薬煙…なのか?」


 媚薬煙。その名の通り…媚薬効果がある薬品だ。子瓶の中に液体が入っていて…その液体が空気に触れると、化学反応が起こり空気自体が媚薬へと変わる。唯一救いなのはそれが女性にしか効果がない事。男性にも効果があったら…今頃すでに優花と行為に走ってしまった後だろう…。


 しかしながら…問題がある。非常にやっかいな問題が…。その一番の問題とは男性によって女性が達しないと媚薬効果が切れないという事だ…。ホント…開発者は余計なモノをゲーム内にいれたもんだと悲観する…。今はここが現実なのだが…。


「はぁはぁ…豊和君…早くぅ〜…」


 俺は気絶しないように気をしっかりと持ち直す。俺が気絶したら…気絶しているうちに優花と深い関係になっているのは目に見えて分かっているからだ。


 俺は近付いてきた優花を引き寄せ、強く抱きしめ頬を寄せる…。


「あっ♡」


「優花…」


「早くっ早くっ!豊和君!」


「今からする事はさぁ…悪い夢だと思ってくれるか?」


「焦らさない…でっ…お願…いっ」



 俺は優花の下腹部へと手を伸ばし――


「んあっ♡」









「んんっ〜〜〜〜〜〜〜〜っ〜〜♡♡♡」






 それから暫くして…



「お待たせしました!豊和様の頼れる愛ちゃんが参りましたよっ☆」


「遅いです…遅いですよ、愛さん?」


 部屋の外から愛さんの声がする。


「ありゃっ!?ドアノブが壊れてますねぇ〜。こじ開けますのでドアからは離れていて下さいましっ☆」


「…お願いします」


“ガチャッ!ギッギッギッ――ギシッ!ギシッ!ギシッ!バキィィン!”



 数十分後―――ようやくドアが開いた。開いたというよりは無理矢理壊した様なもんなんだけどな。


「ふぃ〜〜〜。か弱い女性のわたくしからするとかなりの力仕事でしたよ、豊和様?」


 外もすでに真っ暗な様だ。愛さんはライトを持っている。


「ああ…確かにそうですね…助けてもらったこの埋め合わせは致しますよ」


「ホントですかっ♪それは楽しみですね♪約束ですよ?」


 愛さんがそう言って笑う。


「それにしても…お嬢様はどうなされました?先程から一言もお喋りになりませんけど?」


「ふびゃっ!?にゃんでもにゃいわよ!?愛が助けに来るにょが遅いからだにゃ!?」


「もしかして…ヤっちゃいました?」


「んにゃぁ!?しゅる訳ないでしゅっ!?」


「ふむ…おや…」


「にゃ…にょによ?」


 愛さんがライトである物を照らす…。照らされた物は純白の光沢を放ち…それはまるでスポットライトが当たった主役の様にも見えた。そういえばショーツが無いとか言って仕方なくズボンをそのまま着てたんだっけ…。


「…お、お嬢様のショーツ………」


「うにゃぁぁぁ―」


 愛さんはフッ―っと笑みを浮かべると優花に一礼…。優花は違う違うからと言って、下半身を庇う様にして愛さんの元へ…。それが愛さんにとっては確信出来る行動と思ったのであろう…。


「お嬢様…処女喪失…おめでとうございます…わたくし…感無量で…」




「これは違うにょぉぉお――――」




 涙を流しながら優花を祝う愛さんとそれは誤解だからとあたふたしている優花を傍目に俺はアイテムの存在を忘れない様にしようと心新たに決意を固めるのであった…。







***

あとがき


凛「あっ…あっ…」


日和「こ…これは…」


天音「っ………」


芽依「うぉぉぉーわん…ま〜〜〜〜!?アホだなた派ならあたはかニャロメ」


優花「め、芽依ちゃんはちゃんと日本語で話しなさいよっ!?」


凛「どどどどど、どういう事!?」


日和「ゲロッちまえよ?」


天音「な…何があったかは…言うべきだと私も思いますよ?」


優花「んにゃあっ!?にゃにもにゃいわよっ!?」


芽依「はい、減点です!」


優花「減点って何っ!?何の点数なのっ!?」


凛「こ…こうなったら…夜這いして…」


芽依「凛ちゃん!?それ私の台詞!」


優花「二人とも何言ってんのっ!?私達やってないからね!?」


日和「アタシも…ヤるか」


優花「初夏さんはまだ出会ってもいないでしょっ!?」


日和「ううっ…くそっ…おい、筆者?どうなってんだ、コラッ!ああん!」


天音「初夏さん!?抑えて抑えてっ…」


芽依「ぐすっ…じゃあ…優花さんはお兄ちゃんと何したんですか?」


凛「泣〜かした泣かした、優花ちゃんが泣かした!」


優花「くっ…分かったわよ…言うから…」


凛「で?」


優花「―で…されただけだもん」


芽依「聞こえなかったんですけど?」


優花「泣いてないじゃない!?」


凛「それより…聞こえなかったからそこを言って!」


優花「手で…触れられただけっ…」


一同「アウト―――――――ッ!!!!!」







 

 

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