第32話定番の…

「お〜い、神楽坂ぁ〜」


「はい、何でしょうか?」


「コレも一緒に片付けといてもらえるか?」


「分かりました、先生」


 それは今日の最後の授業を終えた時の事だ。最後の授業は体育の陸上競技だったんだが、その片付けをしている最中に優花が何やら先生に頼まれているのを見掛けたんだ。


「優花、何か頼まれていたみたいだから俺も手伝うよ」


 勿論ソレを知ったからには手伝うつもりだったし、離れている時に何かあったら困るからそう声を掛けた。まあ、愛さんが優花の事は見守っているとは思うんだけど、念の為だ。


「あ、ありがとう…豊和君」


「気にしないでいいよ。それで何を頼まれたんだ?」


「うん、コレを旧体育館の倉庫になおしておいて欲しいんだって…壊れてるけど…」


 それは今日の授業で使ったハードルの一つ。ただし壊れて折れているんだけどな…。コレは捨てて良いのではと思うのだが、もしかして修理して使うのだろうか?


「1個だけだし…俺が持って行くから、優花は先に戻っていてもいいぞ?」


「…ううん…一緒に行くわ。わ、私が頼まれたんだし…」


「じゃあ…一緒に行こうか」  


「うん」


 俺と優花は旧体育館の倉庫へと向かった。定番中の定番…体育倉庫に閉じ込められる事態になるとはこの時は思ってもいなかった。






「う〜んと…ここでいいのか?」


「ええ…良いと思うわよ。本当にありがとうね?私が頼まれたのに…」


 水筒を片手に持った優花が少し申し訳なさそうにそう口を開いた。


「気にすんなって…別にコレくらいはいつでも代わるからさ。何より人気が無いじゃん、ここ」


 旧体育館という事もあり、今はほぼ使われていない。ゲームでもイベントが発生する場所だったし…まあ、それもあったから念の為に優花に付いて来たんだけど…どうやら嬉しい事にそれは杞憂に終わる様だ。


「そ、そんなに…私が心配なの?」


「そりゃあそうだろ」


「っ!?ホントそういうところだからね?」


「何がっ!?」


「…鈍感な人には言っても分からないわよ」


「俺は鈍感じゃないが?」


「鈍感よ」


 ぐぬぬっ!?鈍感認定されるとは…


「まあ、そんな鈍感な豊和君は置いておくとして…あそこは何かしら?」


 置いておかないでもらいたいが…。とにかく優花が言った方向に視線を向ける。


「ただの物置じゃないか?」


「倉庫の中にまた倉庫?」


 そう言われると気になるな。体育館の壇上脇のドアから入った所に倉庫があるんだけど…その倉庫の中にもう一つ鉄製のドアがあるんだ。何で鉄製なのかも謎なんだが…。エロゲでは倉庫の中にドアがあるなんて情報一言も言ってなかったしな…。とりあえず様子も兼ねて見ておいた方がいいか?


 そう結論づけた。そして鉄製のドアノブに手を掛け回す。カチャッっと音がしたので手前に引くとギィギィギィっと嫌な音とともに扉が開く。中に入り念の為に注意深く部屋の中を観察する。大体広さは3畳くらい。窓はなく…体育マットが穏坐に置かれているのみ…。マットはところどころ破けている。


「…ただの倉庫みたいだな」


「うん…そうみたい。なんだか…カビ臭いしね?でも…何でわざわざ倉庫の中に倉庫があるんだろ?」


「たまたまじゃないか?」


 長年使われていない…そんな匂いがする。念の為にこの倉庫の存在も覚えておこうと思いながら部屋を出ようとすると―


“ギィギィ…ガチャン!”


「「…えっ?」」


 何故かドアが閉まる。まあ、こういう事もあるかと思いながらドアノブを回すと…回すと…………落ち着け…落ち着くんだ、俺。なんだかドアノブを回している感触が軽すぎる。やけにスカスカしていやがる!?も、もう一回回して…スポン!?いや、スポン!じゃないんだがっ!?


 そしてネジか何か分からないがカランカラン音を立てて床の上を転がっていく音…。ドアを押したり引いたりしてみるが…ビクともしない。



「…今の何の音?」

 

「…何の音だと思う?」

 

「えっ?急に何?えっ…と…う〜ん…何かが壊れた音かな?」


「…流石優花…よく分かったな…」


「こんな所に閉じ込められたらアレだし、早く出ましょ…ま、待って…その手に持っているの何?」


「えっ…と…ドアノブ?」


「何で疑問系かは分からないけど…私もドアノブに見えるわよ?」


「…悪い…閉じ込められた」


「ふふっ…そうなのね………………………

って…ええ――――――っ!?ちょっ、ちょっと!?ホントにっ!?」


「うん、マジ…」



 こんなの起こるなんて聞いてないんだがっ!?コレも色々とズレた結果なのかも…。そんな風に思ってしまった。







***

あとがき


日和「アタシの出番はマジでいつなんだ!?」


天音「私もここ以外出てないよ!?」


凛「また、優花ちゃん!?もしかして優花ちゃんはこの展開を読んでいた!?」


優花「読めるわけないでしょう!?ホント偶然なのよ!?」


芽依「何やら不正のニオイが…」


優花「不正って何っ!?」


日和「とにかく、ここはアタシでも良かったのではっ!?」


天音「私でもいいよねっ!?」


芽依「あれっ…」


凛「どうかしたの、芽依ちゃん?」


芽依「そ、そんなっ…嘘っ…」


優花「ど、どうしたのよ、芽依ちゃん?」


芽依「私も長い事出ていない事に気付きましたぁー!!」


「「「「あっ、ホントだっ!?」」」」


芽依「しくしくしく…私の出番が早く来る様に…しくしくしく…応援や評価宜しくね?」








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