第22話 クソゲーみたいな旅

 ひきこもりから脱出した藤堂は秋葉原から夜行バスに乗り神戸に行った。WEBサイトで事前に知ったことだが、コロナ蔓延防止の為に車内の食事は禁止、さらにトイレはついていなかった。クソゲーみたいだと藤堂は思った。


 藤堂は、夜行バスの窓から外を眺めながらため息をついた。秋葉原の喧騒から離れ、神戸への旅は始まったばかりだが、既にこの旅が思った以上に厳しいものになると感じていた。窓の外には、都会の明かりが徐々に遠ざかり、暗闇が広がっていた。


バスの座席は狭く、リクライニングも十分ではないため、藤堂は快適な姿勢を見つけるのに苦労していた。さらに、食事が禁止されているため、持参したスナックも食べることができず、空腹感がじわじわと彼を苛んでいた。おまけにトイレがないことも、大きな不安材料だった。


「クソゲーみたいだ」と藤堂は再び思い、苦笑いを浮かべた。だが、彼は自分の決断を後悔していなかった。引きこもりから抜け出し、新しい生活を始めるための第一歩を踏み出したのだ。


 藤堂はイヤホンを取り出し、スマートフォンでお気に入りの音楽を再生した。少しでも気を紛らわせるためだ。音楽に耳を傾けながら、彼は神戸での新しい生活に思いを馳せた。


 神戸には、彼が長年連絡を取っていなかった幼馴染の翔太が住んでいる。翔太は藤堂に、引きこもり生活から抜け出すきっかけを与えてくれた人物だ。藤堂は翔太との再会を楽しみにしていた。彼の存在が、新しい生活をスタートさせる支えになると信じていた。


 途中でバスがサービスエリアに停車し、藤堂はトイレ休憩のチャンスを逃さなかった。バスの外に出ると、夜風が心地よく、気分が少しリフレッシュされた。藤堂は深呼吸をし、再びバスに乗り込んだ。


 神戸に到着するまでの長い夜、藤堂は自分の決意を再確認し、新しい人生を迎える覚悟を固めた。どんな困難が待ち受けていようとも、彼は前に進むことを決めていた。夜明けとともに、藤堂の新しい冒険が始まるのだ。

 

 藤堂はサービスエリアでの休憩を終え、再びバスに乗り込んだ後、スマートフォンを取り出した。彼は位置情報ゲーム「バクテリアハザード」に夢中だった。車内での食事が禁止されているため、暇を持て余していた藤堂にとって、このゲームは絶好の気晴らしだった。


「バクテリアハザード」は、現実世界の地図を使ってプレイヤーがバクテリアを集め、育成し、戦わせるゲームだ。モロッコに行ったときもやったが、あのときはまだ育成メニューはなかった。


 藤堂はゲームの画面を見ながら、次のサービスエリアに到着するのを楽しみにしていた。


### 八王子サービスエリア

 最初にバスが停まったのは八王子サービスエリアだった。藤堂はバスを降りると、ゲームのアプリを起動し、周辺のバクテリアを探し始めた。八王子サービスエリアには、珍しいバクテリアがいるとの噂を聞いていたため、期待に胸を膨らませながら探索を開始。見事にレアなバクテリアを捕まえ、育成リストに追加することができた。


### 海老名サービスエリア

 次に立ち寄ったのは海老名サービスエリア。ここはゲーム内でも人気のスポットで、多くのプレイヤーが集まる場所だ。藤堂も他のプレイヤーと出会い、情報交換をしながら共闘することにした。彼は新しい友人たちと協力して、強力なバクテリアボスを倒すことに成功し、貴重なアイテムを手に入れた。


### 土山サービスエリア

 土山サービスエリアに到着すると、藤堂は再びゲームに没頭した。ここではバクテリアの生息エリアが広がっており、彼は多くの種類のバクテリアを捕獲することができた。また、サービスエリア内にある特定のポイントで、特殊なイベントが発生することを知り、藤堂はそれに参加してさらなる報酬を得た。


### 天王寺駅

 最終目的地の三宮(神戸)に到着する前に、バスは天王寺駅に停車した。藤堂はここでも「バクテリアハザード」をプレイし、都市ならではのバクテリアを捕まえることに成功。天王寺駅はバクテリアトレーナーたちの聖地でもあり、多くの強敵が集まっていたが、藤堂は持ち前の技術で次々と打ち勝ち、ゲーム内のランクを大幅に上げることができた。


### 神戸到着

 長いバスの旅を経て、藤堂はようやく三宮に到着した。バスを降りた彼は、達成感に満ちた表情を浮かべていた。ゲームを通じて新たな友人や貴重な経験を得たことが、彼の自信をさらに高めた。これからの新しい生活が楽しみで仕方なかった。


 藤堂はスマートフォンをポケットにしまい、神戸の街に一歩踏み出した。彼の新たな冒険は、ここから始まるのだ。

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バクテリア・ハザード!!このゲームめちゃくちゃ大変そうだ、実はクソゲー!? 8月27 カドカワBOOKSファンタジー長編コンテスト    応募受付期間終了時点までに本文が10万字 鷹山トシキ @1982

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