第14話 食後のバトル

 明日香はふと黒髪を撫でながら、思索にふけった。彼女の手のひらが髪を滑り、穏やかな感触が心を落ち着ける。周囲の喧騒が遠く感じられ、葛城とのケンカのことや、これからの冒険について考えを巡らせていた。何気ない仕草の中に、彼女の強さと柔らかさが同居しているようだった。少しずつ心を整え、次の一歩を踏み出す準備をしている。


 葛城と明日香は、高槻テクノロジーでの派遣仲間だった。大阪での日々を思い出し、懐かしさが胸に広がる。忙しいプロジェクトの合間にランチを共にしたり、仕事の後に街をぶらついたりしたことが、今でも鮮明に思い出される。


「当時は本当に楽しかったよね」と葛城が言うと、明日香は微笑んで頷いた。「あの頃のチームワークが、今の私たちを支えているのかも」


 大阪の賑やかな雰囲気の中で育まれた絆は、彼らの冒険にも大きな影響を与えていた。思い出話をしながら、再び力を合わせることを誓った。


 葛城と明日香は、コクった日のことを思い出していた。あの日、高槻テクノロジーの帰り道、夕暮れに染まる街を歩きながら、葛城は緊張した面持ちで明日香に気持ちを伝えた。


「実は、ずっと君が好きだったんだ」彼の言葉に、明日香は驚きつつも、心が高鳴ったのを覚えている。


 彼女は少し考えた後、微笑みながら「私も、あなたに特別な感情を抱いていた」と返した。互いの気持ちが通じ合った瞬間、二人は自然と手を繋ぎ、これからの関係に希望を抱いた。


 その思い出は、今も二人の心を温かくしていた。


 チンピラたちが、明日香と葛城の親密さに嫉妬して襲いかかってきた。彼らは不敵な笑みを浮かべながら近づき、周囲の雰囲気が一変する。


「おい、そんなに仲良しなら、少しお話しようぜ」 リーダー格の男が言い放ち、威圧感を漂わせる。


 葛城は一歩前に出て、「俺たちには関係ないことだ。さっさと消えろ」と反抗的に応じた。


 明日香は葛城の背後で冷静に状況を見守りながら、何とかこの場を収めようと考えていた。しかし、チンピラたちの態度は悪化し、緊迫した空気が二人を包む。どんな手段でこの危機を乗り越えるか、心の中で決断を迫られていた。


 チンピラたちは周囲を取り囲み、威圧感を放ちながら、葛城と明日香に迫った。


「おい、てめぇら! そんなにイチャイチャしてる暇あんのか?」リーダー格の男が声を荒げる。「仲良しごっこはここまでだ!」


 他のチンピラも続いて、「そんなに楽しんでるなら、ちょっと痛い目にあわせてやるぜ!」と冷笑を浮かべていた。


 葛城は心を落ち着け、相手の動きを見極める。明日香の存在が、彼に冷静さを与えていた。周囲の喧騒が耳に入らなくなり、葛城は自らの身を守るために立ち上がった。

 

 チンピラが激しくまくしたてる中、葛城はアリから教わった格闘技のことを思い出した。アリが伝授してくれた基本的な技や身のこなしが脳裏に浮かぶ。


「冷静に、動きに合わせて…」葛城は自分を奮い立たせ、呼吸を整える。相手の動きを見極め、どのタイミングで反撃するかを考えた。


 一瞬の隙を狙い、葛城は前に出て相手の攻撃をかわすと、素早く反撃の体勢に入る。明日香も葛城の行動を見守り、彼の力強さに少し安心する。二人の絆が、この危機を乗り越える力になると信じていた。


 葛城はチンピラたちに囲まれながら、心の中で北斗の拳やストリートファイターの名シーンを思い出していた。強者たちの戦い方や、逆境を乗り越える姿が、自分を奮い立たせる。


「お前ら、そんなに強がるなら、かかってこい!」と心の中で叫び、葛城はアリから教わった技を織り交ぜながら身構えた。素早い動きで相手の攻撃をかわし、隙を突いて反撃する。


「これが、俺の流派だ!」と叫びながら、まるでゲームのキャラクターになったかのように、華麗なコンボを決めていく。明日香も彼を支えながら、二人で連携を取り、逆境を打破していく。


 店内での激しいバトルが展開される中、葛城は明日香と息を合わせて敵に立ち向かった。


「行くぞ、明日香! 『連撃旋風斬』!」葛城が叫びながら、素早く敵に向かって連続攻撃を繰り出す。


 明日香も負けじと、「今度は『光の軌跡』!」と宣言し、葛城の動きに合わせて回転しながら華麗な一撃を決めた。


 二人は見事なコンボを披露し、チンピラたちを次々と倒していく。技の名前が響き渡るたびに、店内の緊張感が和らいでいくのを感じながら、彼らの連携はますます強固になっていった。


 しかし、戦いの興奮とともに、食後の重さが彼らの胃にのしかかる。


「うっ…なんだか吐きそうだ」葛城が苦しそうに呟いた。


明日香も同じように顔をしかめながら、「食べたばかりなのに…これじゃ動きづらいわね」


 急いで戦いを終わらせ、周囲の視線を気にしながら二人は店の外へと退避した。爽やかな空気を吸い込むことで、少しずつ気持ちを落ち着けていく。


 その時、地元の警官が駆けつけてきた。彼の体格はがっしりとしていて、どこかガッツ石松に似た風貌だった。


「何が起こったんだ?」警官が鋭い目で状況を把握しようとする。


 葛城と明日香は、さっきの騒動を簡潔に説明した。警官は頷きながら、チンピラたちを取り囲み、状況を整理していく。「大事には至らなかったようだが、注意が必要だな」


 葛城は安堵し、明日香も少し緊張がほぐれた。彼らは警官に感謝し、無事にこの騒動を乗り越えたことにホッと胸を撫で下ろした。

 

 葛城は不意にもし、自分たちの旅が映画になったときのことを想像した。

1. **葛城**: 山田孝之 - 熱血でアクションが得意な俳優。

2. **明日香**: 吉岡里帆 - 知的で冷静な演技ができる女優。

 が、藤堂だけが思いつかないので、明日香に聞いたら「松坂桃李がいい」と答えた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る