第11話 日本に帰りたい

 夕食を楽しんでいるうちに、葛城はふと日本の味を思い出した。「タジンは美味しいけれど、やっぱり納豆が恋しいな…」とつぶやいた。


 明日香は笑いながら、「私も、たまには味噌汁が飲みたいな。日本の家庭料理が恋しくなるよね」と言った。


 アリは二人の言葉を聞き、少し考えてから「文化が異なれば、食の好みも違うね。でも、食事は心を満たすだけでなく、思い出を呼び起こすものだ」と優しく答えた。


「そうだね。特に日本の味は、心が落ち着くよ」

 葛城は頷きながら言った。


 二人は、モロッコ料理を楽しみつつも、日本の家庭の温かさを感じる味を懐かしみ、いつかまた日本に帰る日を思い描いていた。食事を通じて、異文化の魅力と共に、自分たちのルーツを大切にする気持ちが芽生えた。

 

 夕食を終えた後、葛城と明日香は外に出て、満天の星空を眺めた。星々が煌めく夜空は、モロッコの静けさを一層引き立てていた。


「こんなに星が見えるなんて、本当に美しいね」明日香が感嘆の声を上げる。


 葛城も空を見上げながら、「故郷の星空も思い出すな。家族や友人たちと一緒に見上げた夜空のことが、懐かしく感じる」とつぶやいた。


「そうだね。星を見ると、遠くにいる人たちのことを考えるよね」明日香は同意し、心が温かくなるのを感じた。


 アリも彼らの様子を見て、微笑んだ。「星は、どの文化でも人々をつなげるものだね。遠く離れた場所にいる人々とも、同じ星を見上げていると思うと、少し安心するよ」


 葛城はその言葉に共感し、故郷の人たちと再会する日を心待ちにしながら、星空の美しさに心を癒されていた。


 葛城と明日香は、アリの家でのくつろいだ時間を過ごしていると、明日香のスマートフォンが充電を終えたことに気づいた。「充電が完了したよ!」明日香が嬉しそうに言った。


 葛城は、「これで連絡が取れるね。友達や家族に無事を伝えられる」と安心した。


 明日香はスマートフォンを手に取り、メッセージを送る準備をしながら、「これで少しは心配を減らせるね」と微笑んだ。


 アリはその様子を見て、「テクノロジーがあれば、遠く離れた人ともつながれる。素晴らしいことだね」と感心した。


 三人は再び外に出て、星空を見上げながら、充電が完了したことを祝福し、次の冒険に向けて気持ちを高めることにした。


 明日香はお風呂に入りながら、日本の歌を口ずさんでいた。「最近、思い出すのは昔の歌だな。心が落ち着く」とつぶやく。『北風小僧の寒太郎』『さんぽ』『春の小川』などを歌った。


 葛城は廊下からその声を聞き、思わず微笑んだ。「何を歌ってるの?」と尋ねると、明日香は明るい声で答えた。「お風呂で歌うと、リラックスできるんだ」


 歌声が響く中、彼女は日本の民謡や流行の曲を織り交ぜ、アリもその様子を楽しんでいた。「日本の音楽はいいね。文化が感じられる」とアリが言うと、明日香は嬉しそうに頷いた。


 歌が続く中、明日香は故郷を思い出し、心が温かくなった。お風呂の中で、歌を通じて思い出と感情を分かち合う、特別な時間となった。


 葛城はお風呂に入ってリラックスしていると、突然お腹の中で音が鳴った。思わず顔が赤くなり、苦笑いしながら「ごめん、ちょっと…」と呟いた。


 明日香はその音に気づいて笑い、「お風呂だし、仕方ないよね!」と軽やかに返した。


 アリも笑いを堪えながら、「お風呂ではリラックスすることが大事だから、気にしなくていいよ」と優しく言った。


 葛城は恥ずかしさと共に、友人たちとの楽しい時間が心地よいものだと感じた。みんなで笑い合いながら、和やかな雰囲気の中、リラックスしたひとときを過ごした。


 街の中でストライキが発生し、交通機関が混乱をきたした。飛行機は運航停止となり、葛城と明日香はホテルでの滞在を余儀なくされた。


「どうする?いつ飛べるか分からないね」葛城は不安そうに言った。


 明日香は、状況を冷静に分析しながら、「しばらくここにいるしかないかな。情報を集める必要があるね」と答えた。


 アリも彼らを見て、「私たちもこの問題を乗り越えるために協力しよう。地域の人たちと連絡を取り、状況を把握する必要がある」と提案した。


 三人は情報を集めるため、近くのカフェや市場を訪れ、ストライキの影響を受けた人々の話を聞くことにした。新しい計画を立てるための準備を進めながら、彼らは前向きに状況に対処しようとしていた。

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