第9話 雨宿り

 主人は二人を家の中に通し、落ち着いた表情で自己紹介を始めた。「私はアリ。ここで家族と一緒に暮らしている。地元の食材や文化を大切にしながら、商売をしているんだ」


 葛城と明日香はアリに感謝しつつ、外の状況を気にしていた。雨が激しく降り続ける中、明日香がふと気づいた。「あれ?私のスマートフォンが充電切れになってる…」


「この状況では、連絡が取れないのは不安だね」葛城も同意した。


 アリは彼らの様子を見て、提案した。「充電は無理だけど、ここで何か楽しいことをしよう。格闘技を学ぶのはどうだい?私も若い頃、武道を習っていたから教えることができるよ」


 明日香は目を輝かせ、「それは面白そう!」と言い、葛城も興味を示した。


 アリは二人に基本的な構えや動きを教え始めた。彼は自信を持って、格闘技の基本や心構えを伝え、葛城と明日香はその教えを真剣に受け止めた。


 雨音が響く中、二人は新たなスキルを身につけるために、アリと共に充実した時間を過ごすこととなった。


 葛城と明日香が格闘技の練習をしながら、ゲームの話を始めると、アリの表情が変わった。


「最近のゲームは、敵を倒すのが簡単すぎると思わない?」葛城が言うと、明日香も同意した。


 しかし、アリはすぐに口を挟んだ。「待って。ゲームの中での戦いと、実際の戦いは全く異なる。命を懸けることの重みを忘れてはいけない」


 二人はアリの厳しい言葉に驚いた。「すみません、つい軽い気持ちで…」明日香が言い訳しようとするが、アリは続けた。


「遊びは大切だが、現実での戦いには責任が伴う。武道を学ぶ際は、その意義をしっかり理解しなければいけない」彼の言葉には重みがあった。


 葛城と明日香はしばらく黙って考え込み、アリの教えを受け止めた。彼の叱責を通じて、ゲームとは異なる現実の厳しさを改めて認識し、真剣に格闘技の練習に取り組むことにした。


 2人はアリからモロッコの経済について教わった。

 カサブランカはモロッコ最大の経済都市であり、アフリカ有数の世界都市である。


 IMFの統計によると、2015年のモロッコの国内総生産(GDP)は、約1031億ドルである。国民1人当たりのGDPは3079ドルと、アフリカ諸国では比較的高い水準にあり、アジアなどの新興国に匹敵するレベルである。アフリカでは経済基盤も発達している方だとされる。


 モロッコの主要な貿易相手国としては、地理的に近い先進国のフランスとスペインが挙げられる。モロッコ自身は先進工業国とは呼べないが、衣料品などの軽工業のほか、石油精製や肥料などの基礎的な諸工業が発達している(以下、統計資料はFAO Production Yearbook 2002、United Nations Industrial Commodity Statistical Yearbook 2001年を用いた)。かつて宗主国だったフランスだけでなく、欧米諸国の企業が、自動車や鉄道・航空機部品などの工場を増やしている。これはモロッコがアフリカでは政情・治安が安定していると判断され、インフラストラクチャーが整備されており、50以上の国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結していて輸出がし易いという背景がある。その他ヨーロッパ連合諸国に出稼ぎ、移住したモロッコ人による送金も外貨収入源となっている。


 なお、カサブランカやタンジールやケニトラには、加工貿易用のフリーゾーンが設けられている。カサブランカには金融フリーゾーン(カサブランカ・ファイナンス・シティ)もある。モロッコ以外のアフリカ諸国へ進出する外国企業への税制面の優遇措置も導入し、アフリカ・ビジネスの拠点(ハブ)になりつつある。


 また、モロッコは羊毛の生産や、同じく繊維材料のサイザルアサの栽培でも知られ、繊維製品や衣料製品といった軽工業などの工業生産も見られる。また、皮革製品の製造も行われている。


 さらに、生産量世界第6位のオリーブ栽培などの農業が経済に貢献している。


 これらに加えて、大西洋岸は漁場として優れており、魚介類の輸出もモロッコにとっては主要な産業である。


 観光資源も豊かで、観光収入は22億ドルに達する。


 葛城はアリの厳しい言葉を胸に、格闘技の練習を続けながら、ふと過去のことを思い出した。群馬のスバルで派遣として働いていた日々が、頭の中に浮かんできた。


 その頃、彼は自動車の生産ラインで働き、技術やチームワークの重要性を学んでいた。特に、仲間と共に目標に向かって努力することの大切さを実感した。


「あの時の経験が今の自分に活きているな」

 葛城は心の中でつぶやいた。アリの言葉も、仲間との絆を大切にするという点で共通していると感じた。


 明日香が葛城の様子に気づき、「何か考え事?」と尋ねる。「うん、昔、群馬のスバルで働いていた頃のことを思い出してさ。あの時の経験が、今の冒険にも活かせる気がするんだ。工場の近くは金属臭くて、温泉にも行った。図書館に『DJみそしるとMCごはん』ってミュージシャンが来ていた」

 明日香は首を傾げた。


 明日香は葛城の言葉に首を傾げた。「DJみそしるとMCごはん?それ、どんな人なの?」


 葛城は少し考え込みながら、「彼らは独特のスタイルで、食べ物に関する楽曲を作っているんだ。実際に彼らのライブを見たことがあって、とても楽しかったよ」と説明した。


「そうなんだ。食べ物のことをラップにするなんて、面白いね!」明日香が興味を示した。


「うん、群馬の温泉にも行ったりして、リフレッシュできたんだ。そのおかげで、仕事も頑張れた」葛城は思い出に浸りながら続けた。

「それさっきも聞いた」

 明日香が苦笑した。


 アリが二人の会話に耳を傾けていたが、笑みを浮かべて言った。「過去の経験は、今の冒険にも大いに役立つものだ。どんな経験でも、意味があると思うよ」


 葛城はその言葉にうなずき、明日香も心から賛同した。彼らはアリの教えを受けながら、過去の経験を大切にし、これからの冒険に活かしていくことを決意した。

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