第4話 キャンプでの朝食

 二人で薪を拾い集め、テントの出入り口で焚き木にする。

 食材は差し入れのパンや千切りキャベツの酢漬けのザワークラフト、ニシンの酢漬け、オイルサーディン、生ハムの具材のほかに、バターやジャム、クリームチーズをそれぞれオープンサンドにして食べた。


「今日は朝から公務がある。私の夢のような時間は終わってしまう」

 

 蓮とイグジストは少しテントの少し窮屈な出入口に並んで座り、飯盒で入れた湯を使い、インスタントのコーヒーを飲む。イグジストは何度もこの世の終わりでもあるかのように肩で重い息を吐く。


「キャンプなんて思いついたその日にいつでもできる。したくなったらそう言えよ」

「キャンプといえばだが、ハイキングという遊びもある」

「ああ、ハイキングならもっと手軽だ。昼食の食べ物をバスケットに入れて川辺や湖畔で食べながら釣りをしたり、泳いだり」

「私は釣りが気に入った。今度はぜひハイキングに行こう」

「わかったよ」

「いつにする?」

「それは、あんたの公務次第だな」

「わかった。今日は精力的に済ませてくる。そうすれば明日はハイキングだ」


 それで気が済んだようにイグジストが立ち上がる。

 

「本当に私は何も知らないな」

「どこの国の王室も、皇太子なんて似たり寄ったりなんじゃねえの? 神として崇め奉られて、自由を奪われる」

「だが、君は私をそんな風には扱わない」

「そうだな。それが俺の自由なのかもな」


 コーヒーを入れたアルミのカップをふたりで川辺で洗い、朝食を済ませると、見計らったかのようにアマカが迎えに来た。


「荷物は馬で運びましょう」


 鉄板や飯盒、テントやビニールシートなど、重い荷は麻袋に詰めて馬の背に乗せて荒縄でくくりつける。


「では、帰るとするか」


 重い尻を上げたイグジストがジーンズの尻についた砂や小石を手で払う。

 アマカが連れて来た側近が二頭の馬の手綱を引いている。


「さて。乗馬練習の成果を見せてもらおう」


 唇の片端を引き上げたイグジストにニヒルに告げられ、言葉に詰まる。

 イグジストの遊びに付き合わされて、練習なんてできていない。

 しかも側近が引いてきたのは白馬の暴れ馬、ルーシーだ。

 やっぱり彼は底意地が悪い。


 

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