第17話 キャンプでの夕食
焚火の近くで適当な岩に腰を掛け、香ばしく焼けた岩魚にかぶりつく。
日はすっかり落ちていて、夜行性の動物が枯れ葉を踏む足音やいななきが時折聞こえた。
「美味い。ただの塩焼きなのに、これまで食べたどんな魚料理よりも上手い」
はふはふと口を開閉しながらイグジストが絶賛する。
「外で食うっていいだろう? しかも自分で釣った魚だぞ?」
「外の空気が澄んでいるから上手いのか」
「あんま、そんなこと考えなくてもいいんじゃね? 美味いもんは美味いで十分だ」
蓮は炊き上がった
「そんな鉄の箱で焚けたのか」
「鉄の箱か。ははっ、確かにそうだな。真っ黒い鉄の箱だ」
「この焦げたところは食えるのか?」
「白米は、ちょっと焦がした方が上手いんだ」
「そうか。それなら頂こう」
早速『お焦げ』に箸をつけ、頬張った。
イグジストは口に入れるものに関しては慎重だ。毒殺の可能性が彼には生涯つきまとう。
「どう?」
「香ばしくて甘みが増した気がするな。噛み応えがあって上手い」
「だろ?」
自分の分も皿によそい、片手で岩魚を食いちぎる。
焚火に角型のプライパンを乗せ、バターを溶かしてアマゴの切り身や野菜も焼く。
イグジストはアルミの鍋に桜のチップを敷いて網を乗せ、その網の上に乗せたアマゴの切り身を並べて
こんなに好奇心旺盛でチャレンジ精神にあふれた皇帝が統治する国だ。
栄えていないはずがない。
蓮は自治国の街に興味がわいた。
「時間があれば、街にも出てみたい」
「そうか。私も君に私の国を見せたいよ。ただ警備の関係で打ち合わせが必要になるな。悪いがすぐにいつとは言えない」
「あっ、そうか。あんた、皇帝殿下だったっけ」
バターでソテーしたアマゴに箸を伸ばしつつ、思い出す。
イグジストは途端に笑い出す。
「私が皇帝であることを忘れる人間は初めてだ」
そして、目を伏せ、閉じた唇を横に引くようにして苦笑した。
「君のそういうところが私を解放する」
「えっ?」
野菜にも火が通った鉄板を、焚火から下ろしていた蓮は聞きとれず、問い返す。
「手伝おうかと言っただけだ」
「いや、皇帝殿下に火傷を負わせたら一大事だ。後片付けは俺がやる」
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