第4話 サプライズ

「乗馬はいかがでしたか?」

「楽しかったよ。最初はかなりビビッてたけど、イグジストが上手く先導してくれた」

「それはようございました」

「イグジストが白馬を俺にくれたんだ。いつでも練習できるようにって」

「さようでございますか」 


 蓮は高貴な御方としてアマカに食堂室まで通される。

 その途中、ん?と思うような匂いがして、蓮は首をかたむける。


「蓮様をお連れ致しました」

「中へ入れ」

「畏まりました」


 アマカが両開け扉を開けて中へ漣を通した。「どうぞごゆっくり」とだけ言い残し、退室する。

 蓮は食卓を一目見るなり言葉を失い、棒立ちになる。


「これって……」

「お前の国の夕飯だ。日本はアメリカや東南アジア、イタリア、フランス、様々な国の食事が食卓に上がるから、どれにしようか迷ったよ」

「イグジスト……」


 自分の席の前には箸置きに置かれたヒノキの箸。食卓に向かって左側には伏せた茶碗とまだ空の塗りの椀。主菜はカジュアルな唐揚げで、大皿に山のように積まれている。

 副菜にはがんもどきの煮物、ほうれん草の胡麻和えと、湯気のあがった茶わん蒸し。

 蓮が席に着くと、腰高のテーブルに置かれたヒノキの御ひつから使用人に白飯が盛られ、椀には温かいアサリの味噌汁が注がれた。白飯の側には大根やきゅうりの浅漬けや梅干しなども添えてある。


「パン食ばかりじゃ、お前が飽きると思って作らせた。嫌いなものはなかったか?」

「全部大好き!」


 蓮は喜々としてナフキンを広げ、好物ばかりの日本食を見回した。

 そうなのだ。

 皇帝の食卓は豪勢で美味なのだけれど、そろそろ白飯とみそ汁が恋しくなっていた。しかも主菜は唐揚げ。完璧なまでの献立だ。

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