第3話 言い過ぎたかな

「生ハム以外の好物は?」

「サーモンも好きだし、生クリームをかけたこのジャガイモも好きな味」

「そうか。君の口に合って良かったよ」

「そういえば、なんで日本語話せるんだよ」


 根本的な疑問への質問を怠っていたことに気がついた。思わず大きな声になる。


「結界を超えて入ってきた人間の言葉は私達の脳内で翻訳される」

「便利だな」

「どこの国の人間が結界を超えてくるかはわからない。そのために必要な脳の進化だ」

「ここにいれば、俺もそうなれる?」


 言葉の壁を越えることができるなら、世界中の写真を撮ることができるだろう。


「いや、これは全国民と皇族のみの能力だ。ただし、妃になってくれたなら、同じ能力が君にも備わる」

「妃になったら外の世界にでられないんだろ? だったら意味ないじゃん」

「君はここを出ることを考えてるのか?」

「いや、出ることしか考えていないけど?」


 ミートボールの生クリームソースは白ワインにも良く合った。

 グラスを傾けた蓮は、ガラスの向こうでしょんぼりしている皇帝にチクリと小さく胸を痛めた。

 ついいつもの調子で思ったことをそのまま口にする癖は、写真の依頼主でもある中田優斗なかたゆうとにも、再三に渡りたしなめられてきた悪癖だ。

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