第19話 待ち合わせ
守ともう一度会う。
緊張であまり眠れなかった。でも、自分には支えてくれる人がいる。
守は、ただ謝りたいと言っていた。二人とも高校時代から卒業できていないのかも知れない。ここで会って話をすれば、前に進めるかもしれない。
待ち合わせは駅前のカフェにした。
約束した時間より少し前に店に着いた。大きく深呼吸する。
店内に入ると、客も多くがやがやしていたが、誰もいないような静かな場所よりも、緊張しない気がした。
守は先に入って座っていた。顔つきは前と違ってこわばっている気がした。
彼はすぐに気がついた。ホッとした様子で手を振った。
「来ないかと思った」
テーブルに着くなりそう言われた時、守も同じ気持ちだったのだと思った。
――怖いのだ。
高校生の頃は何も考えなくてよかった。けれど、今は違う。
「来てくれてありがとう」
守は笑ったが、無理しているように見えた。
「大丈夫?」
思わず心配すると、
「え?」
と言って、暁生を見ると苦笑した。
「何か食べる?」
守に聞かれたが暁生は首を振った。長く話をするつもりはなかった。
「僕はコーヒーにするよ」
「分かった……」
守は立ち上がると、無言でレジの方へ行ってしまった。
暁生は、席について窓の外を眺めた。
前に、桜子と待ち合わせした時も、たくさんの人が歩いて行くのが見えた。みんな、忙しそうに歩いて行く。
春臣は今頃何をしているだろう。
ふと思って携帯電話を見たが、連絡はない。今の時間ならアパートに来ているかもしれないし、今日は来ないかもしれない。
時刻は、午後の七時を過ぎたばかりだ。
守は、営業の仕事をしていると言っていた。今日は早く上がらせてもらったのかもしれない。
いろんな事を考えていると、二人分のコーヒーを乗せたトレーを持って守が戻って来た。
「お金払うよ」
「いいよ、今日は俺が誘ったし、おごるよ」
払う払わないの問答するのも嫌だったので、心遣いに甘えることにした。
「ありがとう。頂きます」
「うん」
守がにこっと笑う。少し、顔に赤みが差して先ほどより元気に見えた。
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