第18話 距離



 高校時代を振り返る。


 守のことは大好きだった。連絡がつかなくなり、振られたのだと自覚した時はショックだった。

 きっと、男同士だったのがダメな理由だったのだろう。それか、しつこくし過ぎたのかもしれない。気持ち悪いと思われていたのかもしれない。

 いろいろ考えて、落ち込んだ時期もあった。

 春臣が優しい目で見つめている。


「僕は迷っている。本当は会いたくないのかもしれない」

「どうして?」

「怖いから。真実を知るのが怖い。もう、過去の事だから触れないで欲しいけど、向こうは謝りたいって」

「そっか……」


 春臣はぽつりと言って、さらに考える顔になった。


「俺も一緒に行こうか?」

「え?」


 暁生がびっくりして春臣を見た。


「一緒に?」

「だって、怖いんでしょ」


 そうだけど。恋人も連れていくのは勇気がいるし、なんとなくそれは違うような気がした。


「ありがとう。でも、それはやめた方がいい気がする。僕、一人で会いに行くよ」

「寄りを戻したりしないよね」


 春臣が真剣に聞く。暁生は頷いた。


「それは絶対にない」

「分かった。なら、許す」


 へへ、と春臣が照れたように言った。そして、暁生の手を握った。


 あの日以来、手を握るのも久しぶりだ。

 温かい手のひらで、暁生はドキドキした。

 目を合わせると、春臣がそっと体を寄せて抱きしめてくれた。

 春臣もドキドキしているのが分かる。少しずつ、距離が縮まるのがうれしかった。


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